著作権法の一部を改正する法律の制定について

1. はじめに

 著作権法の一部を改正する法律案が,第165回臨時国会において,平成18年12月15日成立しました。(公布日:平成18年12月22日)
 改正法の内容について,概要をご紹介します。

2. 今回の改正について

 改正法の内容は,以下のとおりです(青字の部分にカーソルを合わせてクリックすると,内容を見ることができます)。

 改正法は,次の3本柱から構成されています。

  1. (1)放送の同時再送信の円滑化

  2. (2)時代の変化に対応した権利制限等

  3. (3)著作権等保護の実効性の確保

※ 概要の全体像については,こちらもご参照下さい。
著作権法の一部を改正する法律の概要

 これらの改正事項は,文化審議会著作権分科会における審議を踏まえた内容となっています。

 ◆ 「[1]放送の同時再送信の円滑化」及び「[3]著作権等保護の実効性の確保」の改正内容は,平成18年8月「文化審議会著作権分科会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書」 を,「[2]時代の変化に対応した権利制限等」の改正内容は,平成18年1月「文化審議会著作権分科会報告書」 を踏まえた内容となっています。

3.改正の概要

  1. (1)放送の同時再送信の円滑化

    • ■ 放送の同時再送信に係る実演家及びレコード製作者の権利の見直し

      1. [1] 「入力型自動公衆送信」による放送の同時再送信を円滑に進めるため,実演家及びレコード製作者の権利を制限し,放送対象地域内における同時再送信に関しては許諾権を要しないこととするとともに,実演家及びレコード製作者への補償金の支払いが義務づけられることになりました。(第102条第3項〜第5項関係)

      2. [2] 「有線放送」による放送の同時再送信については,実演家及びレコード製作者に新たに報酬請求権を付与しました。(第94条の2(新設),第95条第1項,第97条第1項関係)

    • ■ 非営利かつ無料で行われる放送の同時再送信に係る権利の見直し

      1. [3] 「入力型自動公衆送信」による放送の同時再送信に係る著作権,実演家,レコード製作者及び放送事業者の権利について,放送対象地域内における同時再送信に関しては、「有線放送」による放送の同時再送信と同様に権利制限の対象とされました。(第38条第2項関係)

    • ■ その他同時再送信に係る見直し

  2. (2)時代の変化に対応した権利制限等

    • ■ 公衆送信の定義の見直し(同一構内の無線LANによる送信の除外)

    • 同一構内の無線LANによる送信について,有線LAN(有線電気通信設備)による場合と同様に,「公衆送信」の範囲から除外されました。(第2条第1項第7号の2関係)

    • ■ 視覚障害者に対する録音図書の自動公衆送信に係る権利制限

    • 点字図書館などの視覚障害者情報提供施設等が専ら視覚障害者の用に供するために行う録音図書の自動公衆送信について,権利制限が認められました。(第37条第3項関係)

    • ■ 特許審査手続等及び薬事行政手続における複製権の制限

    • 特許審査等の手続及び薬事行政手続における文献の提出等のための複製について,権利制限が認められました。(第42条第2項関係)

    • ■ 機器の保守・修理等における一時的複製に係る権利制限

    • 機器の保守・修理等のための一時的な複製について,保守・修理等の後に当該複製物を破棄することを条件として,権利制限が認められました。(第47条の3関係)

  3. (3)著作権等保護の実効性の確保

    • ■ 輸出行為等の取締り

    • 著作権等を侵害する行為によって作成された物(海賊版)を,情を知って業として「輸出」又は「輸出の目的をもって所持」する行為について,著作権等を侵害する行為とみなすこととされました。(第113条第1項第2号関係)

    • ■ 著作権侵害等に係る罰則の強化

    • 著作権等侵害罪の懲役刑及び罰金刑,並びに秘密保持命令違反罪の法人処罰に係る罰金刑の上限について,特許法等と同様の水準に引き上げられました。(第119条第1項及び第124条関係)
      (懲役刑) 5年以下の懲役 → 10年以下の懲役
      (罰金刑) 個人:500万円以下の罰金 → 1,000万円以下の罰金
      法人:1億5,000万円以下の罰金 → 3億円以下の罰金

  4. (4)施行期日

  5. 原則として,平成19年7月1日に施行されます。ただし,上記【1[1]】(入力型自動公衆送信による放送の同時再送信に係る実演・レコード製作者の権利制限)の改正についての施行日は,公布の日から起算して20日を経過した日(平成19年1月11日)とされています。

4.改正法Q&A

  1. (1)放送の同時再送信の円滑化
    問1 放送の同時再送信関係の見直しの趣旨及び内容について教えてください。
    問2 自動公衆送信(送信可能化)による放送の同時再送信について定めている第102条第3項の読み方を教えてください。
    問3 「放送対象地域」とは何でしょうか(第102条第3項,第38条第2項ほか)
    問4 非営利かつ無料で同時再送信を行う場合には,補償金の支払義務も課せられていませんが(第38条),個人が行うインターネット送信による同時再送信も,権利制限の対象となるのでしょうか。
  2. (2)情報化等に対応した定義の見直し及び権利制限の拡大
    問5 公衆送信の定義の見直し(同一構内の無線LANによる送信の除外)の趣旨を教えてください(第2条第1項第7号の2)
    問6 視覚障害者に対する録音図書のインターネット送信(自動公衆送信)を例外的に,無許諾で行えることとする趣旨を教えてください。(第37条第3項)
    問7 「特許審査」手続等における文献の複製と「薬事行政手続」における文献の複製について,例外的に無許諾で行えることとする趣旨を教えてください。(第42条第2項)
    問8 機器の「保守・修理」等におけるバックアップのための一時的複製について,例外的に無許諾で行えることとする趣旨を教えてください。(第47条の3)
  3. (3)著作権等保護の実効性の確保
    問9 著作権等の侵害物品の「輸出」及び「輸出を目的とする所持」を取締りの対象とする趣旨を教えてください(第113条第1項第2号)。
    問10 著作権侵害等に係る罰則強化の趣旨を教えてください(第119条,第124条)
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