実施内容[日系人等を活用した日本語教室の設置運営]
別紙
1 事業の趣旨・目的
新宿区では多文化共生を推進しているところであるが,外国人住民が増え続ける地域社会においては,外国にルーツをもつ子どもたちへの日本語教育の必要性が顕在化している。
外国にルーツをもつ子どもたちの中には,親の都合で来日して,母語や母国の文化とは異なる日本での新たな生活環境に適応するのに苦労するケースも多い。学校生活においても,日本語が十分理解できないために,教科学習についていけない,友だちができない,自己表現ができないといった子どももいる。将来的には進学や就職,生活にも大きく影響する。日本の地域社会の一員であるこれらの子どもたちを社会からドロップアウトさせないしくみづくりを急がなければならない。そのための有効な一つの方法として,子どもと母語を同じくする人(外国人)による日本語指導を行う。母語そして子どもの文化的背景を共有できる人が子どもへの日本語指導ならびに日本での学校生活に適応していくためのサポートを行うことで,子ども自身の精神的負担を軽減し,早い段階で新しい環境に適応し,学習にも専念できるようになることをめざす。
具体的には,新宿区の小中学校では,母語による日本語適応指導を実施しているが,指導の時間は限られており,編入学時の学校生活の説明や日本語の導入部分に費やされてしまうなど,教科学習をフォローする時間が足りないのが実状である。
そこで,今回,
・ 外国にルーツをもつ子どもたちを対象とした,日本語能力を有する外国人による日本語教室を開設し,編入学前後に母語による日本語の指導を行う。
・ 母語による日本語指導と並行して,日本の学校に円滑に適応していけるよう支援する。
・ 教室には日本人の日本語ボランティアや日本語教師も参加し,外国人講師と一緒に子どもたちの指導にあたる。
ことを目的とした日本語教室を開設する。
2 企画委員会の開催について
[概要]
(1)第1回企画委員会
開催日時:平成19年10月29日(月)
出席者:野山広,関口明子,小林普子,金守香,木内苗津子,針谷弘治,須磨洋次郎
議題:「日系人等を活用した日本語教室」及び「日本語能力を有する外国人を対象とした日本語指導者養成」の事業内容の検討および決定
(2)第2回企画委員会
開催日時:平成20年3月27日(木)
出席者:野山広,関口明子,小林普子,金守香,木内苗津子
議題:「日系人等を活用した日本語教室」及び「日本語能力を有する外国人を対象とした日本語指導者養成」の実績成果のとりまとめ,および課題・改善点について
3 日本語教室の開催について
(1) 日本語教室参加者名簿と参加状況
国籍 | 母語 | 年齢 | 出席回数 |
---|---|---|---|
韓国 | 韓国語 | 9 | 10 |
中国 | 中国語 | 13 | 15 |
韓国 | 韓国語 | 7 | 10 |
中国 | 中国語 | 14 | 15 |
ミャンマー | ミャンマー語 | 12 | 10 |
韓国 | 韓国語 | 8 | 12 |
韓国 | 韓国語 | 6 | 14 |
中国 | 中国語 | 15 | 15 |
韓国 | 韓国語 | 9 | 13 |
韓国 | 韓国語 | 7 | 6 |
中国 | 中国語 | 13 | 15 |
カメルーン | フランス語 | 14 | 8 |
日本 | 中国語 | 中2 | 15 |
中国 | 中国語 | 14 | 15 |
中国 | 中国語 | 中1 | 14 |
中国 | 中国語 | 小6 | 14 |
中国 | 中国語 | 小5 | 14 |
中国 | 中国語 | 小3 | 14 |
中国 | 中国語 | 15 | 15 |
中国 | 中国語 | 15 | 13 |
ネパール | ネパール語 | 中1 | 5 |
ネパール | ネパール語 | 小4 | 9 |
(2) 指導者,支援者名簿と参加状況
指導者 | 所属 | 出席状況 |
---|---|---|
関口明子 | 社団法人国際日本語普及協会 | |
三田美佐子 | 社団法人国際日本語普及協会 | |
塩田多賀子 | 社団法人国際日本語普及協会 | |
内田雅子 | 社団法人国際日本語普及協会 |
(3) 教室の写真
開催場所
・施設の名称 | 新宿区立しんじゅく多文化共生プラザ |
・所在地 | 新宿区歌舞伎町2-44-1 ハイジア11階 |
(4) 開催日時と開催場所
回数 | 日時 | 開催場所 |
---|---|---|
1 | 3月5日(水)14:00~16:00 | しんじゅく多文化共生プラザ |
2 | 3月6日(木)14:00~16:00 | しんじゅく多文化共生プラザ |
3 | 3月7日(金)14:00~16:00 | しんじゅく多文化共生プラザ |
4 | 3月10日(月)14:00~16:00 | しんじゅく多文化共生プラザ |
5 | 3月11日(火)14:00~16:00 | しんじゅく多文化共生プラザ |
6 | 3月12日(水)14:00~16:00 | しんじゅく多文化共生プラザ |
7 | 3月13日(木)14:00~16:00 | しんじゅく多文化共生プラザ |
8 | 3月14日(金)14:00~16:00 | しんじゅく多文化共生プラザ |
9 | 3月17日(月)14:00~16:00 | しんじゅく多文化共生プラザ |
10 | 3月18日(火)14:00~16:00 | しんじゅく多文化共生プラザ |
11 | 3月19日(水)14:00~16:00 | しんじゅく多文化共生プラザ |
12 | 3月21日(金)14:00~16:00 | しんじゅく多文化共生プラザ |
13 | 3月24日(月)14:00~16:00 | しんじゅく多文化共生プラザ |
14 | 3月25日(火)14:00~16:00 | しんじゅく多文化共生プラザ |
15 | 3月26日(水)14:00~16:00 | しんじゅく多文化共生プラザ |
(5) 全体の内容報告
回数 | 開催日 | 内容 |
---|---|---|
1 | 3月5日 |
|
2 | 3月6日 |
|
3 | 3月7日 |
|
4 | 3月10日 |
|
5 | 3月11日 |
|
6 | 3月12日 |
|
7 | 3月13日 |
|
8 | 3月14日 |
|
9 | 3月17日 |
|
10 | 3月18日 |
|
11 | 3月19日 |
|
12 | 3月21日 |
|
13 | 3月24日 |
|
14 | 3月25日 |
|
15 | 3月26日 |
|
4 事業に対する評価について
(1) 本事業の効果,成果
a. 当初の学習目標の達成,学習者の習得状況
当初の学習目標:
- ・ 小中学校への編入学前に必要な日本語や日本の学校文化,編入学後の学校生活,授業等にスムーズに入っていける日本語の底力をつけること。
達成,学習者の習得状況:
- ・ 講座開始直後と講座終了前の日本語レベルチェックシートの結果,出席率の高い子どもの日本語習得が伸びていることがわかった。
- ・ 皆勤の子どもが多いことから,子どもの参加したいと思えるような講座になったのではないか。
b. 日本語教室設置運営の効果,成果
- ・ 子どもの居場所となった。
- ・ 母語を思いっきり話す,そして話せるところを見せることができる,不得意な日本語を通してだけではない自分を回りの人に知ってもらえる機会となった。
- ・ 講座終了後も日本語を勉強することを希望する子どもが多く,日本語をもっと勉強したいと思える環境づくりもできた。
- ・ 楽しく,しかも真剣に勉強にとりくむ姿勢ができた。
- ・ 新宿区立小中学校から講座に参加させたい児童生徒がいる,今後もこのような講座を開催してほしいと直接連絡があるほど,このような講座を希望する子どもが多くいることを再認識することができた。
c. 地域の関係者との連携による効果,成果
- ・ しんじゅく子ども日本語クラス開催前に地域の日本語教室での周知活動も行った結果,[困っている子ども]を知っている人がこの講座を紹介してくれた。
- ・ 新宿区内小中学校向けにも周知活動をしたことで,適応指導後の子ども,編入直後の児童生徒をお願いしたいと学校から直接連絡がくることもあり,学校との連携もはかることができた。同様に,編入・入学の窓口である新宿区役所教育委員会とも連携をとることができた。
- ・ これらの連携を大切にし,今後の子どもの支援にいかしていきたい。
(2) 改善点,今後の課題について
a. 改善点,今後の課題
- ・ 講座開始直後のレベルチェックは,講座開始前に別途日時をとって実施したい。今回は開始直後だったため,教室内がざわついてしまった。
- ・ 参加者が5歳から17歳までと年齢の幅と日本語レベルの差がかなりあった。ボランティアの人数にも限りがあるので,対象年齢の幅をもう少し狭めてもよいのではないか。
- ・ 当初はこれから新宿区立の小中学校へ入学・編入する子どもを対象としていたが,学校からの希望で適応指導後の子どもも参加することになったが,そこで日本語ゼロレベルの子どもとの差があった。レベル差があってもそれぞれが充実した内容になるよう,さらに改善していきたい。
- ・ この講座は[外国人のための日本語の教え方講座]修了者が講師として参加したが,急に参加できなくなった時の連絡が不十分であった。担当者ということの責任について[外国人のための教え方講座]の中でもう少し説明すべきだった。
- ・ 講座で気づいたことに関して,ボランティアも含めノートに記入することにしたが,徹底されていなかった。書きやすい方法も考え,次回も続けていきたい。
- ・ 今回参加した子どもの様子,日本語の習得状況などを在籍校に引き継げるよう,学校と連携していきたい。
b. 今後の活動予定,展望
[しんじゅく子ども日本語クラス]を終え,日本語学習の場を必要としている子どもの多いことを改めて実感し,また子ども達の居場所の必要性,地域社会の一員である外国人,日本人ができることをできる人がする,ということの大切さを実感した。今回,学校に編入して間もない外国人の子どものいる学校,適応指導後でも日本語で困っている子どものいる学校から,[しんじゅく子ども日本語クラス]通わせたい]という希望に,[今はいっぱいで対応できないので・・・]と断ってしまった実態もあり,支援する人を養成すること,そして子ども達が学ぶ場を提供することを今後も引き続き実施していきたい。
新宿区では今後も日本語で困っている子どもたち,学校が増える傾向にあると思われる。新宿区全体の多文化共生,子どもの支援のしくみづくりを考えながら,財団としては支援する外国人,日本人を増やし,子ども達の支援を積極的に行なっていきたい。