財団法人新宿文化・国際交流財団 実施内容

実施内容
[日本語能力を有する外国人を対象とした日本語指導者養成]

別紙

実施主体:財団法人 新宿文化・国際交流財団

1 概要

新宿区では多文化共生社会の実現を推進している中,地域社会においては,外国にルーツをもつ子どもたちへの日本語教育の必要性が顕在化している。
外国にルーツをもつ子どもたちの中には,親の都合で来日して,母語や母国の文化とは異なる日本での新たな生活環境に適応するのに苦労するケースも多い。学校生活においても,日本語が十分理解できないために,教科学習についていけない,友だちができない,自己表現ができないといった子どももいる。将来的には進学や就職,生活にも大きく影響する。日本の地域社会の一員であるこれらの子どもたちを社会からドロップアウトさせないしくみづくりを急がなければならない。そのための有効な一つの方法として考えられることは,母語のわかる人による日本語指導である。母語のわかる人は子どもたちをことばの面,またその国の文化的背景を共有できることによって,精神的に子どもたちをフォローすることができる。日本語能力を有する外国人の中には,「困っている子ども達を助けたい」「自分も日本で生活しながら何か役に立ちたい」と思っている人もいる。多文化共生の社会は日本人,外国人どちらか一方が推進するのではなく,日本人も外国人もお互いにできることを担っていって成り立つものである。そのようなことからも,外国人住民が日本語教育に携わっていくことは,今後も増えるであろう外国にルーツをもつ子ども達の支援のためにも必要なことである。
このような状況から,日本語能力を有する外国人を対象とした日本語指導者養成講座を実施し,その後は子ども達の日本語支援ができるよう,しくみづくりをしていくことを目的とする。

2 講座内容

研修日 講師 時間 学習内容
1月15日
(火)
関口 14:00〜18:00
4時間
オリエンテーション(自己紹介),コースの概要,レベルチェック
「はじめましてシート」
1月22日
(火)
関口 14:00〜18:00
4時間
1回の日本語教室の流れ
合同・個別グループ指導と母語・日本語使用について
50音ノートの使い方,縦書き・横書き
1月29日
(火)
塩田 14:00〜17:00
3時間
日本語の教え方(1)
 日付,数字,名前・文字(1)ひらがな
2月5日
(火)
塩田 14:00〜17:00
3時間
日本語の教え方(2)
自己紹介 朝のあいさつ 国の名前 学校で使うもの
TPR-1 ・文字 (2)ひらがな特別表記
★学校オリエンテーション:DVD「初めての挨拶―教室で」,「学校生活の始まりー準備,登校」
2月12日
(火)
三田 14:00〜17:00
3時間
日本語の教え方(3)
教科の名前 時間割 教室名 基本動詞 時間 遊び
TPR-2 ・文字(3)カタカナ
★学校オリエンテーション:DVD「学校生活の始まりー授業,学校探検,休み時間」,学校の一日
2月19日
(火)
内田 14:00〜17:00
3時間
日本語の教え方(4)
基本形容詞 身体名称 謝るとき,心配するとき,具合が悪いときの表現 ・文字(4)漢字 ・ゲーム
★学校オリエンテーション:DVD「学校生活の始まりー給食」「学校生活と仲間たちー身体測定,けんかと仲直り,保健室」
2月26日
(火)
内田
関口
14:00〜18:00
4時間
★学校オリエンテーション
DVD 「学校生活と仲間たちー遠足,夏休み,運動会,総合学習」,年中行事
模擬授業(1) 母語タイムの記録について
3月4日
(火)
14:00〜16:00
2時間
「子どもたちの将来を考える~進学と就職・自立への道」
三田
関口
16:00〜18:00
2時間
模擬授業(2)

3 講座の評価

(1) 受講生に対するアンケート
(2) 実施主体からの研修内容結果評価
  • ・ 新宿区在住区民である外国人が,外国にルーツをもつ子ども達のためにその能力をいかして日本語を教えるための基礎を身につける
  • ・ そのことで現在生活している地域の一員として役にたてることに喜びと自信をもてるようになる
  • ・ 日本人支援者と連携,協働し,お互いの力を生かしあうことで,子ども達へよりよい支援を可能にする
  • ・ 子ども達への支援活動により,外国人自信が社会的な自立や自己実現につながること

を目標を掲げ,「外国人による日本語の教え方講座」を運営した。
わずか8回という限られた講座ではあったが,参加する外国人,日本人は,「困っている子ども達を支援したい」という同じ目的で集まったということもあり,回を重ねるごとに交流が深まっていきき,最終的にも自主グループが結成された。
講座の評価については,1評価できた点,2反省点の2項目に分けて述べる。

1講座への評価できた点

  • ・ 今回,外国からきた子ども達を地域社会が見守っていくための新しいとりくみとして,外国人が日本語を教えるための講座を開催した。このような講座は,初めての試みということで,試行錯誤の部分もあったが,とても意義のある講座であった。
  • ・ 外国人参加者が講座の中でわからないこと,これはこうしたらどうか,など積極的に参加し,前向きな姿勢を見られた。
  • ・ 新宿区立の学校に通う子どもの国籍,母語が多様なため,自分の母語が使えなくても教えることができるように,母語を使用しない日本語の教え方も学び実践することができた。
  • ・ 講座終了翌日からはじまった「しんじゅく子ども日本語クラス」では,外国人参加者,日本人参加者との協力体制が日を追って築かれていき,子どもの学習効果に反映された。
  • ・ 外国人参加者がいたことで,どのような支援が必要なのか,具体的に聞くことができた。また,文化の違いについても知ることができた。
  • ・ 外国人参加者も日本人参加者も楽しく参加していた。
  • ・ 外国人参加者,日本人参加者が子ども達の事を一生懸命考え,教えることができた。またその体験から外国人参加者,日本人参加者自身が多くのことを学べた。
  • ・ 新宿区立小中学校,教育委員会など,さまざまな機関の方にご協力いただき,連携がとれた。

2反省点

  • ・ 1回4時間は参加者にとって長かった。
  • ・ 外国人参加者と日本人参加者が一緒に参加したため,講座開始当初はそれぞれの役割がわからず,参加者はとまどったようだ。わかりにくい内容でもあるため,今後はその都度説明していくようにしたい。
(3) 実施主体からの外国人支援体制等今後の計画(学齢期の子どもたちに対して)

この事業と連携して実施した[しんじゅく子ども日本語クラス]を終え,地域社会の一員である外国人,日本人ができることをできる人がする,ということの大切さを実感した。今回,学校に編入して間もない外国人の子どものいる学校,適応指導後でも日本語で困っている子どものいる学校から,[しんじゅく子ども日本語クラス]通わせたい]という希望に,[今はいっぱいで対応できないので・・・]と断ってしまった実態。このような状況は今後も増える傾向にあると思われる。
財団としても支援する外国人,日本人を増やし,子ども達の支援を積極的にしていきたいと考えるため,今後もこのような講座,日本語教室を実施していきたい。
また,次のようなことも財団の役割として実施していきたい。

【母語話者による日本語の初期指導】

母語を話す人(外国人)による日本語指導を行う。

【親子日本語教室】

親と子がいっしょに参加できる「親子日本語教室」を大久保小学校で実施し,外国人の親子が日本語や学校生活,日本の文化について学ぶ場を提供するとともに,他の参加者やボランティアと交流する「居場所」とする。

【通訳・翻訳サービス】

当財団に登録している通訳・翻訳ボランティアを活用して,学校便りや,学校から保護者への連絡文書などを多言語に翻訳する。

【外国系の子どもたち支援活動に関わるボランティア養成】

外国人ならびに日本人のボランティアを養成し,直接,子どもたち支援のボランティア活動に関わる人を増やしていく。

【教員向け研修プログラムの提案】

外国系の子どもたちを受け入れる現場にいる教員を対象にした研修プログラムを教育委員会に提案する。

【外国人相談窓口】

区役所本庁舎としんじゅく多文化共生プラザに常設している「外国人相談窓口」で,子どもたちの保護者や子どもたち自身に関する相談にのる。

【ネットワークづくり】

区内で外国系の子どもたち支援の活動をしているさまざまな団体やボランティアに呼びかけ,新宿区教育委員会を中心としてそれぞれの提供できる活動をまとめ,全体で動くしくみをつくるなど,具体的なコーディネートをする。

【適応指導(初期)の内容の提案】

適応指導の初期指導のカリキュラムの提案を日本語の専門家や学校と意見交換しながら提案する。

【日本語学習コーナー】

しんじゅく多文化共生プラザ内日本語学習コーナーの活用(日本語に関する書籍・情報提供)

【教育関係組織への支援】

以下の点を提案し,協力・支援していく。

  • ・ 転入学してくる外国系の子どもたちがスムーズに学校生活に溶け込めるしくみづくり。(コーディネーターの配置)
  • ・ 外国系の子どもたちを受け入れることになる学校現場が無理なく対応していける態勢を整える。(初期指導教室の設置と運営)
  • ・ 外国系の子どもたちの保護者,教員への十分な情報提供(日本語が十分理解できない保護者への支援,外国系の子どもに対応するための教員研修)
  • ・ 外国系の子どもたちを対象とした,高校進学のための進路指導
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