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パネルディスカッション


 
   
第二部 パネルディスカッション
   
   
「映像コンテンツ契約の現状と課題」
   
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       さらに、いろいろな協議をこのガイドライン合意後やるということになっておりましたけれども、まだなかなか具体的なところまではいっていないということが現状でございます。まず当初の出演についての協約をきちんとやるということ、そこにはマルチユースの問題も入っていますから、われわれ俳優としては事務所というところを通して、そのことをきちっと徹底していかなければならないなと思います。以上、日本の場合は、外国、特に欧米とは違う部分があると思っております。

上原   どうもありがとうございました。日本の場合の、諸外国との違いのようなことをご指摘いただきました。特に実演家についてご指摘いただいたということかと思います。それでは、パネリストとしては最後のご登場ということになりますが、先ほどご講演 もいただきましたけれど、諸外国の様子をお聞きになり、あるいは実演家としての大林さんからのご指摘もお聞きになり、また先ほど短くて言い切れなかった部分もあるというようなことでございますので、そのへんも含めまして関本さんから今までのところで追加、プラスアルファーのコメントをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

関本   あまり時間もないので、少し絞って最後にNHKの役割というのは、僕は個人的に書きました。 それは実は2005年に、もともとこのネットにかかわるようになったのは、プラネットアースという番組をBBCなんかと共同製作をしていて、それはもう10年ぐらい前に契約をしていたのですが、2005年に放送直前になって、ネット権が取れてないものについては、放送でも使わないからネット権を取ってくれと突然いってきたのです。   それで今後は共同製作であれ購入であれBBCが放送したものはみんなネットに出すので、ネット権を取らないものはNHKからは買わないっていわれて、これはえらいことになったなと、フランスもおんなじこというし、BBCがそういうものだからアメリカのナショナルジオグラフィックも同じことをいうし、これはネット権取らないとえらいことになるというのを、当時僕はマルチメディア局長で、部下に命じて走り回らした経験があります。そのときからネット権というのにかかわり始めました。
   それで、さきほどの法律解釈において、じゃあ日本でどうするんだって話になったときに、たまたま不祥事があって人員削減というので、「マルチメディア局を解体する」って局長自らいったものですから解体されて、「じゃあ誰がやるんだよ」っていったら、「おまえがやるしかねえだろう」っていわれて、そこから実はかかわってきたのです。
   そこから関わってきて、実演家団体さんの協議もありましたし、それからさきほどいいましたような映画会社さんらいろいろな団体さんの協議をやって、最初は、たとえば原作権で全収入の50パーセントよこせっていわれて、何それ、ようするにやるなということかとかと思ったのですが、よく聞いたら会社の中でルールができてない、まずネットについてどう対応していいのか分かんないのだと、これいろいろな団体でおんなじこといわれたのです、ルールがないのだと。それじゃ、ルール作ってくださいと、まず各会社で。各会社でルール作っていただいたうえで、そのルールにあわせて、そのルールでビジネスとしてやっていけるかどうかという協議をしましょうということをやってきました。
   そういう意味じゃNHKがNODをやるために、何かをやっているというだけじゃなくて、ネットに関していろいろな権利者の方々がそれぞれのルールを作るという、ある種けもの道のようなものにちゃんと道路を作ろうみたいなことを、やってきたという自負はあって、その意味ではNHKがやるべき仕事かなというふうには思っています。
   
    関本氏      ただ一方で、1本300円とか310円とか、3年で単黒、5年で累損解消って、そのようなものできるんだったら民放さんはとっくにやっているよねと、そういうのをやることが本当にNHKの役割なのかという疑問は常にありました。たとえば僕20年前に、前のBSを開局したときにも立ち会い、そのときはプロデューサーで、地上波では絶対やれないことをやろうと、とにかく受像機買ってもらわなきゃいけないので、放送の3カ月ぐらい前にはNHKのBSでは面白いことがあるらしいというので、話題になることをやろうとかいろいろな知恵使っていたのです。ところが今度は二次利用しかできないので話題がつくれない。それから、コマーシャルしちゃいけないとか、いろいろな手足縛られた中で、それで3年で5年でというのようなことを、本当にNHKがやるべきことなのかなという疑問はあります。    
       今後、IPTVがどのあいだにどれぐらい伸びるかは分かりません。ただ将来的にはやはりIPTVというのは、僕は伸びていくだろうと思いますし、そこはNHKオンデマンドみたいに動画だけじゃなくて、たとえば任天堂のWiiさんのようなやつも全部つながっていると、今はテレビにいろいろなものがワーっとつながっていますけど、そこはテレビの中に入っていけば、オンラインゲームを含めて全部できるような、そういうテレビだって普及していくかもしれない。そのときに、日本のメーカーが、携帯みたいに日本では圧倒的に強いけど世界では全然売れない、そういうことに日本のテレビはなっていいんだろうかという疑問があります。
   そのこと自体は、なんのために僕らはやっているのだろうというと、視聴者のためにやっているということとは別に、やはりみんなが豊かになったりとかって、そういうためにもNHKというのは役割があると思う。それを考えると本当に300円でとか、そういう考え方がいいのかどうかというのは、現場で実は走りながら「俺は自分でやっていることは正しいのかな」という思いを常に抱いていて。そのことはもう1回皆さん、これはそれこそさきほど岡本先生が「国民が決めることだ」とおっしゃっていましたけど、やはりもう一回問い直していかないと。ビジネスとして成り立つということだけでやってていいのかな、IPTVも含めた普及、特に今ですらサムソン対ソニー、松下さんとで、ほぼ引きあうような感じですから、そういうところは頑張っていくようなことにならないと駄目なんじゃないかって。
   それは、たとえば東芝さんの問題もありましたけど、東芝さんだってもうかっていたら、私的録音のお金ぐらい払っていると思うのです。苦しいから払わないとかって言い出しているので、もうかってれば払っているのじゃないかって僕なんかは思っていて、だから経済産業省の中ではあんな程度のことで、実演家さん団体と何もけんかすることないじゃないかと、今までずっとみんなでやってきたんじゃないかと。実演家さん、テレビ局、いろいろな人たちがかかわって、メーカーさんが世界に伸びていくことの、俺たちは貢献してきたんじゃないか。そういうつまりもう少し仲良くするような、あるいはウインウインの関係を作るようなことを、もっと考えたらどうですかとか、あっちではいっているのです。
だからそういうことも含めて、契約でどうするかってなかなか難しい問題、アメリカがいいかとか韓国がいいかとかそういうレベルの問題じゃなくて、もっと大きな問題としてNHKはどうすべきかということを、日々悩んでいるのは実状です。実はこれが一番いいたくて今日は出て来たのだと思います。

上原   はい、ありがとうございます。NHKさんがいかにあるべきかという大きなテーマは、日本の映像媒体においての基本構造の問題だと思いますので、なかなかコンテンツ流通という話からそこまで本日議論を展開するのは難しいかなとは思いますが、今のお話の中にいろいろなテーマは含まれていたと思います。
   少し関本さんのお話の中で気になりましたのは、IPTVという言葉をお使いになっているのですが、実は世界中でIPTVというのはいろいろな意味で使われております。今関本さんおっしゃっているIPTVというのは、おそらくインターネットとつなぐことによってテレビも見られれば、インターネットを通じてのいわゆるIPマルチテレビもつなげれば、あるいはインターネットの世界の、たとえば対戦型ゲームのようなものにも参加できるというような、マルチな受信インターネット機能を持った受像機であり、インターネット接続機であるというものを、意味しておっしゃっているというふうにわたしとらえたのですが、その理解でよろしいでしょうか。

関本   よろしいです。

上原   実は報告書の中には、各国のIPTVの事情をごく簡単に書いてはございまして、IPTVとして何を認めるのかというのは、非常に大きな問題になっております。日本でもIPマルチの議論がありましたけれど、当然皆さんご存知のように今の日本の普通のIPマルチテレビで、放送を同時再送信いたしますと送信可能化権の処理の問題がでてまいります。そうした部分をどんなふうに考えるのかというと、今度は同時再送信とそれからIPTVの問題というものがでてまいります。

   

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