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パネルディスカッション


 
   
第二部 パネルディスカッション
   
   
「映像コンテンツ契約の現状と課題」
   
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      そこのテレビ業界全体をもう一回アップしていくために何が必要なのか。それはコンテンツに携わっている人間だけじゃなくて、テレビというのは所詮、テレビだけじゃないと思いますが、携帯もWiiもそうですけど、コンテンツというのはハードと中身とがうまく相俟ったときに、当たってきたのです。そういうことも含めて総合的に考えて、テレビ業界、あるいはコンテンツ業界全体の底上げをしてかないと、なかなかいいコンテンツが回らない時代が、来るのではないかなというのは、ここ2~3年としては非常に心配をしているということです。

大林   少し前までは著作権の問題というのは、専門家の間というか、製作者や実演家、そういうところで議論が回っていたと思うのですけど、今いろいろなメディアの中で、ユーザーという、全く、わたしたちのレベルからいうと、素人の人たちが参画してきている。それが今いろいろな混乱が起きている部分でもあるだろうなと思います。
  先ほどアメリカのこと出ましたけど、確かSAGはストライキをやるスト権が確立できなかったのですよね、去年から今年にかけて。あそこは全組合員の75パーセントが賛成しないと、スト権が確立されないというかなりハードルが高い設定をしていまして、意見が真っ二つなのでとうとうやれなかったということでした。
  強力な労働組合を持ってしても、なかなか問題を解決できない部分もでてきています。日本で去年から今年にかけての不況という、100年に1度の状況の中、広告モデルで成り立っているテレビ業界で、我々も皆さんと一緒に仕事をしているわけです。業界全体がシュリンクしてきている中で、その外に居るユーザーという人たちが、これはテレビ局さんも同じ、製作会社さんも同じ、われわれも同じなのですけど現場で作り上げたわれわれの成果を、ただでなんとか利用しようということが出てきている。これは困るなと思います。
  ですから今製作の中身の問題もお触れになりましたけど、やはり、手を携えていいものを作っていくことが、これから次の展開を呼んでいくのだろうということで、現場的にいえば、本当にいい作品を作り、いい番組を作り、そしてそれを二次使用、その後のマルチのユースに回していくということが、実演家にとっても非常に大切なことであろうなと思います。全く今日のテーマから外れてしまうかもしれませんが、基本はそこに返ってくのだろうなというふうにわたしは思っています。

   
    パネラー2   上原   ありがとうございました。それでは最後に皆さまの、今日のお話しをいただいたところで、簡単にコーディネーターとしてまとめさせていただきます。ポイントだけ私が感じたかぎりのことを、お伝えさせていただきたいと思います。
  一つ目は4カ国の状況をご報告いたしました。これを見て分かっていただけたかと思いますが、必ずしも隣の芝生は青くないということであろうと思います。いかにも日本だけが遅れていて、よそは楽に行われているというふうに思われているところが、日本ではあったわけですが、先ほど張さんからも、韓国でも別に販権があって、なんでもそれで解決しているわけではありませんよというお話しがありましたように、それぞれの国はそれぞれの背景に、あるいはそれぞれの歴史的な制度に対応した法制度と、社会システムをもって新しい媒体に対応してきている。そのことを抜きにして他国のまねをしても、おそらく成果は得られないであろうということではないかと思います。
  それと若干広げて申し上げますと、升本さんからもありましたが、アメリカが契約社会というけど、それを支えるバックボーンがあると。これもまさに社会の制度によるものでありますが、そうしたバックボーンと同時に、さまざまな契約を結ぶという慣行が無いと、契約も結べないということであります。
   
      そうした慣行というのは社会全体の一種のコンセンサス、あるいは1つのベクトルだと思います。そうしたものがどのようにして形成されていくのか、そういうものがないところで、無理に契約書を作らなければいけないといっても、なかなかそれが進むものではなかろうというところが、各国の制度などの関係から、見えてくるのではないかと思います。
  講演で示されましたが、CDCによる音楽著作権処理の機構や、あるいは実演に関しましては、実演の集中管理というようなことが、来年の春に向けて進みつつあります。我が国におきましても集中管理を、進めようというそうした動きが次々と出てまいります。その中で先ほどもフロアからございましたが、大事なのはマーケットとしてのインターネットにコンテンツをどう出すかということを考えるときには、マーケットがどのくらいの規模でありうるのか、どう育つのかどう育てられるのか、そことの往復関係が重要なポイントになってくるのであろうということかと思います。
  そして最後でございますが、これはかなり多くの方からでたと思いますけれど、流通をするためにはその前に、良きコンテンツが出来なければならない。その環境が今不況の中で危ない状況にあるということを、もう1度思い出す必要があるという提言が、改めて本パネル討論の中でパネリストの皆さん、あるいはフロアから示されたように思われます。そうした問題を踏まえて、今後とも我が国の映像業界と、そして映像コンテンツが発展し、様々にいきいきとした使い方ができるようなシステムが、さらにこれから進んでいくように、今までインターネットの前までは十分、十分とはいえないかもしれませんが、相当に出来てきた。それが、これからも出来ていけるように、今回のパネル討論がそれを考える「よすが」になれば、幸いかと思っております。
 皆さまお付き合いどうもありがとうございました。
   

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