福島県001

石蔵

  • 1950年竣工
  • 構造形式/石造 地上2階 鉄板葺
  • 用途/元 住居建築、医療施設
  • 所在地/福島県南会津町南会津郡南会津町田島字上町甲4033

戦時中に日本画家・版画家の山川秀峰(1898-この石蔵は、南会津郡南会津町田島地区の中心部に位置し、北側に国道121号を面する南北に長い敷地に建つ。昭和25年に内科及び外科の医院として建築され、その後保険会社の営業所に利用されたが、現在は空き家となって町が所有しながら管理している。施工者や設計者は不明だが、敷地北側に栃木県大谷で産出された大谷石を用いた石造2階建ての医院、その南側に木造2階建ての居住棟で構成され、石造の医院は東側に隣接する酒蔵(国権酒造)と調和する風景で、一体感がある歴史的な景観を示す。
石蔵はL字型の平面構成で、外観は全体に大谷石を使った重厚なデザインである。メイン玄関ポーチには円柱の柱が建っており、正面建物の玄関ポーチ柱には御影石の柱脚、円柱を使用し、ポーチ上部には半円形の妻壁を立ち上げた左右対称な造りで、西洋建築を意識した外観意匠は、元宿場町という景観の中でひときわ目立っている。一方、右側の部分は切妻でポーチも設置されているが、全体的に蔵の外観となっている。
内部空間は正面建物の1階部分は、玄関正面に医院の受付があり、その両サイドに部屋が設けられている。仕様や造りから受付右側が待合室、左側が診察室と考えられる。内装は、壁、天井とも白漆喰が基本で、照明や廻り縁などに洋風のデザインが施される。木製建具、収納、階段はケヤキ材を使用する高級な造りで、製作技術の高さを感じる素晴らしいものである。2階はL字型に和室が配置され、12.5帖の和室には床の間、書院、違い棚があり、隣の10帖和室との襖上部には見事な彫刻の欄間が残っている。
北側の蔵として使われていたと思われる部分は、1階に和室6帖があるものの土間部分が半数以上を占め、中2階は物置として利用されており、やはり当時も収蔵庫として利用されていたことがうかがえる。南会津町の中心部に立地し、地域の中でシンボル的な建物と位置づけられている。町が所有することから、今後の活用が重要といえ、活用するための協議会も開催されていることから、今後の展開が期待される。(大桃一浩)