福島県002

福島県営野田町団地(スターハウス)

  • 1959年竣工
  • 設計/(標準設計)建設省、市浦建築研究所 市浦健
  • 施工/青木工業、須藤工務店
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造 地上4階
  • 用途/住居建築
  • 所在地/福島県福島市野田町4丁目6-1

戦時中に日本画家・版画家の山川秀峰(1898-福島県営野田町団地は、1959年に完成した共同住宅である(RC造4階建て12戸×2棟)。一般的な共同住宅が長方形の平面で板状住棟であるのに対してY型の平面で搭状住棟となっており、真上から見ると星形をしていることから通称「スターハウス」と呼ばれている。スターハウスは、第二次世界大戦後に建設された住棟の形式で、戦後復興の象徴として、頑丈で火災にも強い鉄筋コンクリート造を採用し、ステンレスの流し台を持つダイニングキッチンなど新しい生活スタイルと、変化のある未来的な景観形成に果敢にチャレンジした住宅建築である。設計者は現在の「市浦都市ハウジング&プランニング」の創始者である市浦健氏で、1953年に建設省からの委託により設計し公営住宅の標準設計として全国各地に建設された。中には現在国登録有形文化財に登録されているものもある。
敷地は、福島県福島市中心部で大規模な市営住宅団地の中に2棟のスターハウス県営住宅を混在して建設している。形状は、三角形の階段室を中心に3辺にそれぞれ一戸の住戸が配置され、全体的にはY字型の搭状となっており、周囲の長方形の市営住宅とは違って独自の外観を呈している。
内部空間は、一住戸の構成として6畳と4畳半、ダイニングキッチン、トイレ、浴室から成っている。三角形の階段を中心として3片に三住戸が張り出しており、全住戸が3方向の眺望、採光、風通を得られる開放的な空間を構成している。
建築の一番の見どころは、モダンな意匠と日本の住宅建築史を今に伝える文化的価値である。敗戦後の経済も厳しい中、未来の豊かな暮らしの復興を目指して、従来の箱形デザインではなく塔状で夢のある外観デザインとし、内部空間も、ステンレスキッチンを備えたダイニングで食事ができ、浴室を完備しモダンな暮らしの実現を試みている。特に、県営野田町団地は、市浦健氏設計によるスターハウス初期の54C-2型であり、現存する貴重な建築物といえる。他に福島県内において、2023年時点で現存するスターハウスは、県営玉川団地(RC造5偕建て15戸×2棟・4RN-2DK-G(57-4P)型・いわき市)と、民間のテラス・イズミ(RC造4偕建て12戸×1棟・54C-2型・福島市)である。(新関 永)