北塩原村役場・コミュニティセンターは谷口吉生の設計により1979年に竣工した。建物は会津盆地の北端に位置し、会津若松市や喜多方市といった町々を見下ろす小高い丘の上に建っている。国道から緩やかに上るアプローチの両側は芝生がきれいに管理され、この純白の建物をより引き立たせている。
谷口吉生はニューヨーク近代美術館(MoMA)や土門拳記念館、豊田市美術館などの設計者として知られる建築家である。この建物の外観は谷口吉生のデザインの特徴が感じられ、水平垂直で構成されたファサードが美しく圧倒される。円形の列柱や矩形の水平連続窓など根源的な幾何学形態のみで構成されたデザインは、美しい自然環境の中にそれと調和した都市環境を配置することにより、一層自然を際立たせるという意図があるという。
この建物は、役場とコミュニティセンターの二つの機能を持つ複合の施設である。入口には、共用空間として「玄関ホール・コミュニティホール」が配置され、村民のラウンジとして利用されている。このホールは台形の平面プランで、傾斜地に合わせて高さと幅を連続的に変化させている。天井の高い空間はトップライトから自然光を心地よく採り込み、緑色の列柱のコロネードが特徴的である。階段状のコミュニティホールの上端は松林を望むデッキテラスにつながり、玄関ホールのある下端は役場執務室の大きなガラス窓を通して、視界が会津盆地に開いている。
昭和後期建設の建物であるが、その近代的な外観デザインと純白の外壁に古めかしさを全く感じない。シンプルな外観形状が建物の経年劣化を遅らせているようにも感じる。2013年に耐震補強工事により外壁列柱間に鉄骨ブレースが設置され、2015年に屋上に太陽光パネルが設置されているが、最小限にとどめられており、外観への配慮がなされている。(室井洋)