福島県030

福島県男女共生センター

  • 2000年竣工
  • 設計/槇総合計画事務所
  • 施工/西松・野地特定建設工事共同企業体
  • 構造形式/鉄骨鉄筋コンクリート造および鉄骨造 地上6階、塔屋1階
  • 用途/官公庁舎
  • 所在地/福島県二本松市郭内1丁目196-1

福島県男女共生センターは、福島県が「男女共同参画社会」の実現を目指して、自己啓発や積極的な社会参加を通じ豊かな人生を送るための実践的活動拠点として整備した施設で、2000年10月に完成した。総事業費は約50億円。1996年に公募型プロポーザルを実施し、設計者として槇総合計画事務所を選定した。2002年にBCS賞を受賞している。
敷地は、二本松市内の緑豊かな自然環境に囲まれた高低差約12mの急傾斜地で、敷地内の植栽とも一体的なつながりを呈している。また、北西方向に霞ヶ城や安達太良山があり、これらの眺望を楽しむ場所を建物内の所々に配置している。
外観は上部がガラスとルーバー、下部はオランダ産レンガで、上下で異なる素材を用いている。これは、「明と暗」「静と動」「軽快と重厚」と同じように相反するものを素材の組み合わせで表現するが、全体的に調和がとれており、これは内部の随所で見ることができる。
当該施設は、「情報機能」「自立促進機能」「交流機能」の3つの機能を有しており、そのために、1階に400人収容の研修ホール、2階に多目的研修室、子供室、相談室、3階に図書室、交流室、4階・5階に宿泊室、調理室、介護実習室などを配置している。
内装は、壁のコンクリート打放しには杉板本実型枠を用い、床はメープルフローリング、併せて木製品の家具を配置して、全体的に温かみのある柔らかな雰囲気を醸し出している。
また、随所にテラスやラウンジを配し、くつろぎの空間を形成している。特に2階の外部サンクンテラスは周囲の山々に埋没した空間となり、ゆったりと自然を満喫するのに十分である。屋上テラスは通常は解放していないが、霞ヶ城や安達太良山の眺望を楽しむことができる。
建築の一番の見どころであるが、はじめにポイント的には、1階北側から入ったエントランスホールである。3層吹抜けの開放的な空間で、正面の戸室石貼りの階段越しに南側の大きなガラスを透して、外部の自然が目に入る。斜面をうまく利用することで、自然の中に入り込んだような気持ちにさせる。2階サンクンテラスのカエデ科の植栽が赤く紅葉した時は格別であるとのこと。また、ここから自分の行き先を容易に知ることができる誘導の場所にもなっている。
次に全体的には、建設地の傾斜地を巧みに利用して、周辺の自然環境と一体化することで、その空間を楽しむ構成となっている。また、打放しコンクリート、木、石、鉄、ガラスなどの異なる素材が、同じ1つの空間で調和するその使い方は正に奥義の技といえる。また、ディテールにも驚かされる。外部に配置されているルーバー一つとっても、アルミと木(イペ)で構成されているので、見る方向からシャープさ(アルミ)と暖かさ(木)の違った印象を味わえるなど、細部の見どころは尽きない。(新関永)