福島県029

ふくしま海洋科学館アクアマリンふくしま

  • 2000年竣工
  • 設計/日本設計
  • 施工/大成・福浜・加地和JV
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造および鉄骨造 地上4階
  • 用途/文化施設
  • 所在地/福島県いわき市小名浜辰巳町50

ふくしま海洋科学館アクアマリンふくしまは、福島県が県民の多様で高度なニーズに応え得る文化施設として、海を知り海に親しむ学習機会を県民に提供するため、親水空間としての整備が進む小名浜港再開発地区の一角に、水族館を中心に海と陸の生物、文化、科学など、さまざまな視点から「ふくしまの海=潮目の海」を紹介する体験型学習施設として建設された。
本施設の設計は、「海を通して『人と地球の未来』を考える」との基本理念のもと、指名競争入札で選ばれた日本設計が行っており、ガラスの柔らかなシェルターに包まれ、太陽の光と風を取り入れた「環境再現型」の展示空間が施設の特徴となっている。また、組織系設計事務所・日本設計の水族館設計の出発点といえる施設であり、「福島の自然をそのままパッケージする」という発想で設計されている。
内部の展示空間は、「水際の世界」と「水中の世界」の二つの部分からなり、穏やかなスロープにより環境の変化を連続的に体験できる空間になっており、自然換気を基本とする風のシステムや熱負荷の低減を図るなど、「自然」の環境を意識した空間となっている。
敷地は埠頭跡地であり、液状化対策として格子状地中壁により地盤改良を行っている。また、エントランスホールと展示空間は総ガラス張りになっており、透明感にあふれ、緩やかなカーブを描く三次元曲面が形成されている。鉄骨の加工組立とガラスの取付作業は、高い施工精度が要求され、コンピュータ解析による鉄骨のたわみの管理をするなど、高度な技術と細心の注意が払われた施工となっている。
巨大なガラスシェルターの内部には、生態系の全く異なる山から海辺を模した空間、親潮と黒潮を再現した三角トンネルのアクリル大水槽が配置されている。
2011年3月11日の東日本大震災による津波被害と原子力発電所事故の影響で9割の生物を失いながら、4ヶ月後には再オープンを果たした施設であり、いち早く復興に立ち向かった施設でもあります。(遠藤一善)