選定保存技術

選定保存技術とは

文化財は先人の築き上げた大切な遺産であり、私たちはこれを保存して後世に伝えていく重大な責務があります。

文化財保護法では、文化財の保存のために欠くことのできない伝統的な技術または技能である「文化財の保存技術」のうち、保存の措置を講ずる必要のあるものを「選定保存技術」として選定し、その保持者や保存団体を認定する制度を設けています。この制度は、文化財を支え、その存続を左右する重要な技術を保護することを目的としており、技術者の確保のための伝承者養成とともに、技術の向上、技術の記録作成などを行うものです。

昭和50年の同制度創設後、現在までに随時選定・認定が行われ、保持者・保存団体による伝承者養成事業の実施をはじめ、技術の保存・伝承に多くの努力が払われています。

令和4年12月現在、選定保存技術は84件存在します。

・文化財を支える伝統の名匠 リーフレット

https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/shuppanbutsu/bunkazai_pamphlet/pdf/93821601_01.pdf

2020年12月には、国の選定保存技術のうち17件から構成される「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」が選定保存技術から初のユネスコ無形文化遺産への登録となりました。

・「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」のユネスコ無形文化遺産登録(代表一覧表記載)について

https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/pdf/92709001_01.pdf

・文化遺産オンライン「伝統建築工匠の技」

https://bunka.nii.ac.jp/special_content/ilink4

また、令和3年12月には、文化財の持続可能な保存・継承体制の構築を図るための5か年計画(令和4年度~令和8年度)として「文化財の匠プロジェクト」を文部科学大臣決定しました。同プロジェクトでは、(1)文化財の保存・継承のための用具・原材料の確保、(2)文化財保存技術に係る人材養成と修理等の拠点整備、(3)文化財を適正な修理周期で修理するための事業規模の確保 に取組み、選定保存技術を含む文化財保存技術の保存・継承に取り組んでいます。

・「文化財の匠プロジェクト」の決定について

https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/93637901.html

選定保存技術の例

在来絹製作

「在来絹製作」保持者 志村 明
(糸繰りをする様子)

「在来絹製作」

前近代の技術を研究し復元的に、桑栽培、在来種の養蚕、製糸、製織を行う技術です。この技術にて製作された絹材料(補修裂、補修糸、真綿)は、修理対象の文化財(染織品)の物性に合わせて蚕品種、糸繰方法、織密度、砧加工等を選択することにより、適切な補修材料として多く使用されます。

表具用木製軸首製作

「表具用木製軸首製作」保持者 花輪 滋寛
(轆轤により削り加工を行う様子)

「表具用木製軸首製作」

軸首は掛幅装や巻子装などの表具の一部材で、装飾の一翼を担うとともに、巻き解きの際の手がかりとなります。木工品では黒檀、紫檀など唐木と呼ばれる重厚、緻密な材質の木材が多く用いられます。軸首は轆轤ろくろを用いて刃物で削り形成されますが、極めて繊細、正確な加工技術を必要とします。

選定保存技術の一覧は、上述のパンフレット「文化財を支える伝統の名匠 リーフレット」をご覧ください。

選定保存技術の広報事業

文化庁では、選定保存技術を広く周知する機会を確保することで、国民の文化財保護に対する意識の向上を促すとともに、文化財保存技術や文化財の保護施策の充実を図っています。

・日本の技フェア

年に1回、選定保存技術保存団体が一堂に会し、展示・実演を行うとともに、体験の機会を提供します。

・日本の技EXPO

日本博主催・共催型プロジェクトとして、選定保存技術をテーマとした巡回展やVRサイトを立ち上げています。

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