文化庁主催 コンテンツ流通促進シンポジウム「著作物の流通・契約システムに関する研究会」の成果報告
コンテンツビジネスの未来は輝いているか?

2004年6月28日 国立オリンピック記念青少年総合センター(カルチャー棟大ホール)
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基調講演
森口 泰孝 (もりぐち やすたか)
文化庁長官官房審議官・
内閣官房知的財産戦略推進事務局次長
講演資料のダウンロード (PDF:273KB)

コンテンツビジネスの飛躍的拡大に向けた政府の取組み

撮影:小池 良幸
ID:HJPI320100000590
文化庁審議官、そして内閣官房の知的財産戦略事務局次長も兼務しております森口でございます。よろしくお願いいたします。
本日は、「コンテンツビジネスの飛躍的拡大に向けた政府の取組み」ということで、政府全体、そして文化庁の取組みをご紹介させていただきます。
コンテンツビジネスについては、本日の副題でも「コンテンツビジネスの未来は輝いているのか?」と付いておりますが、我々としても非常に輝きを放つ潜在的可能性があると思っております。他方で、なかなか大変な面もある、そういう状況だと思います。

これについては、政府も様々な取組みを行っています。それを逐次ご紹介しながら、現状の様々な問題点も含めて、ご説明をしたいと思います。

コンテンツビジネスの現状
始めに、コンテンツビジネスの現状をご覧いただきたいと思います。
これまでの実績、あるいは今後の見通しを見ますと、2000年に1兆ドル。1ドル約100円としましても約100兆円。約100兆円という世界規模です。それが2006年には1.4兆ドルということですから、非常に高い成長が期待される分野です。
2006年における世界のGDPの実質成長率は4.4%と予測されています。これに対し、世界のコンテンツ産業の実質成長率は6.5%と非常に大きな伸びが予測されております。さらに、アジア地域のコンテンツ産業は、7.1%成長が見込まれている。アジア地域のコンテンツ産業というのは、そういう高成長産業であるということです。
そのような中で、翻って「日本がどのような位置にあるのか」を見ていただきたいと思います。色々な比較の仕方がありますが、ここでは、各国のGDPに占めるコンテンツ産業の規模を比較しています。日本のGDPが4.9兆ドル、円で換算して約500兆円と言われています。その内、約11兆円がコンテンツ産業の規模です。対GDP比で言うと、大体2%です。
米国は対GDP比で5%。GDPの規模が9.8兆ドルと日本の約2倍の規模ですが、コンテンツ産業の規模では約5倍、約50兆円の規模になっています。対GDP比の世界平均が3%ということですから、日本はまだ世界の平均にも達していないのです。つまり、我が国のコンテンツビジネスは潜在的に延びる可能性があるが、まだまだ米国、世界平均からも遅れをとっているという状況にあるということです。

図1:コンテンツ産業の海外売上規模
図1:コンテンツ産業の海外売上規模
さらに海外での売上規模と比較をしたのが図1です。
11兆円産業のうち、海外の売上規模の占める割合は31億ドル、1兆円にとどかないわけです。割合で言うと3%しかないということで、ほとんど国内で閉じたビジネスであると言えると思います。
一方米国は、約50兆円の産業規模のうち海外売上が17%を占めると言われています。もっと多いのではないかという気もするのですが、とりあえず17%としても、日本とは全く比較にならないくらい圧倒的に海外に展開しています。そういう意味で、本日参加の皆様、コンテンツビジネスに携わっている関係者の方々には、是非がんばっていただきたい。

図2:我が国のコンテンツ産業の海外収支
図2:我が国のコンテンツ産業の海外収支
話を続けますが、このコンテンツの海外収支、ゲームソフトを除く主要コンテンツ産業は輸入超過の状況にあります。このゲームソフトにしましても、最近の状況を色々と聞いてみますと、米国がかなりこの分野に本格的に取り組んでおり、ハリウッドも力を入れていると聞いております。この優位がどこまで続くのかなという危機感を持っております。


さて、このコンテンツというのは、知的財産であると同時に、まさしく「ソフトパワー」の固まりです。そういった「知的財産とソフトパワー」によって、我が国をこれから盛り立てようということです。
いわゆる製造業については、「世界の工場」と呼ばれる中国が安い労働力という強みを活かし、進出著しいわけです。日本の「ものづくり」も中国へ製造拠点を移転するという動きが見られます。そういう状況ですので、これからの日本を何で支えていくのかといった時の1つの柱として、知的財産、コンテンツがあるのだと思います。
「多様な波及効果」ということを資料に書かせていただきましたが、コンテンツとは、幅広いビジネス展開ができるという特徴を持っております。例えば、いわゆる「ポケモン」は、ゲームで始まりましたが、テレビアニメ、映画、それから玩具、その他いろいろなキャラクターグッズへと展開し、全体としては約1兆円の直接経済効果、さらに海外における波及効果が約2兆円と言われるほどの、非常に大きなビジネスになっています。さらに観光産業への波及。観光産業も、我が国として大きくすべく政府も取り組んでおりますが、例えば、映画のロケ地である小樽や函館に、映画のヒットによって観光客が押し寄せて来る、そういう現象が見られます。

そして、コンテンツは、産業的側面のみに着目するのではなく、やはりアニメにしてもこういったものがヒットすることを契機として外国における日本理解が進むということがあります。ちょうど逆のケースが、まさに、現在の日本における「韓流」ブームです。「冬のソナタ」にしましても、日本でのヒットが、我が国における韓国に対する様々な理解・関心が増進するという結果に繋がっています。
日本の素晴らしい文化・芸術が海外で花開くことによって、併せて日本への理解・関心が進む。そういう意味で、コンテンツ産業は、これからの日本を支える重要産業ではないかと思っているのです。
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