文化庁主催 コンテンツ流通促進シンポジウム「著作物の流通・契約システムに関する研究会」の成果報告
コンテンツビジネスの未来は輝いているか?

2004年6月28日 国立オリンピック記念青少年総合センター(カルチャー棟大ホール)
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基調講演
森口 泰孝 (もりぐち やすたか)
文化庁長官官房審議官・
内閣官房知的財産戦略推進事務局次長

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撮影:小池 良幸
ID:HJPI320100000590
政府の役割とは
さて、終戦直後であれば、政府の役割というのは、補助金を関係業界に出す、業界を保護する、それによって産業競争力をつけていくという時代であったわけです。しかし、これからの時代は、コンテンツ振興ということで国がやれることはかなり限界がある状況ではないかと思います。国がやれることは、やはり法律を整備することにより、民間の事業活動を容易にする、あるいは税制面での手当てを行うといった諸々の環境整備、そういったものが国の役割だと思います。


海外におけるコンテンツ振興政策
それでは、各国政府はどういう支援を行ってきたかを簡単に紹介します。
まず、米国。米国では、基本的には民間中心でコンテンツ産業振興がすすんでいますが、既に戦前から、映画については、欧州映画が主流であったところ、映画は国の戦略産業であるということで、その振興を図っております。
戦後では、1949年の映画産業の制作部門と興行部門の分離、あるいは1970年のテレビ3大ネットワークの番組制作の規制、こういったルール作りによってコンテンツの制作部門も強くしていった。
或いは、通商政策として、スペシャル301条により海賊版等の知財保護の不十分な国をしっかり監視する、あるいはWTOの枠組みを強力に進めるという形で、やはり環境整備に非常に力を入れていると思います。
その結果として、米国は世界のコンテンツ市場の約半分、100兆のうちの50兆円を占めるという一人勝ちの状況が生まれています。

アジアで特筆すべきは、やはり韓国でしょう。韓国は本当に国を挙げて取り組んでいます。やはり、我が国のゲーム、アニメの成功を見てきたのだと思いますが、「文化産業振興基本法」の制定、「コンテンツビジョン21」、「デジタルコンテンツ産業振興法」といった法整備等を国として積極的に進め、これらを起爆剤として、結果として先ほど申したような「韓流」現象が起きているわけです。
既にオンラインゲームでは、韓国が世界市場の4割を占めると言われています。その意味で、韓国は、国を挙げたコンテンツ振興を行い、成果を挙げている国であると思います。
欧州では、英国がブレア政権で「クール・ブリタニア」という方針を打ち出しまし、それ以降も非常に熱心にクリエイティブ産業の振興に取り組んでいるという状況です。
また、フランスはご承知のとおり、やはり文化という側面から、国を挙げた財政的な面も含めた支援をしているという状況です。

我が国のコンテンツビジネス振興のための取組み

撮影:小池 良幸
ID:HJPI320100000590
我が国においても、コンテンツを含む「知的財産」で21世紀の日本を強くしていこう、「知的財産立国」を目指そうという動きが、2002年2月の小泉総理の施政方針演説以降、ここ2年ほどの間に、急ピッチで進んでいます。
具体的には、2002年12月の「知的財産基本法」成立。そして知財基本法に基づき、小泉総理を本部長とする「知的財産戦略本部」が昨年3月に設置をされ、7月には「知的財産推進計画」が策定されました。


この「知的財産推進計画」では、特にコンテンツに力を入れようということで、「コンテンツビジネスの飛躍的拡大」という章を一つ設けております。これを受け、昨年秋、「コンテンツ専門調査会」が活動を開始しました。第二部で講演される濱野教授にも参加いただき、様々な議論を行いました。
今年に入っても、大きな動きが次々と起こっております。
まず、1月の小泉総理の施政方針演説において「世界で高く評価されている映画、アニメ、ゲームソフトなどの著作物を活用したビジネスを振興し、文化・芸術を生かした豊かな国づくりを進める」と、コンテンツについて明言しています。
また、「e−Japan戦略」が策定されていますが、2月に公表された「加速化パッケージ」においてもコンテンツ政策の推進が一つの柱として記載されています。
関税定率法の改正による海賊版対策のための立法も行われました。また、改正下請法の施行、独禁法ガイドラインの改正も行われました。

コンテンツ専門調査会の提言 〜ソフトパワー時代の国家戦略〜
我が国のコンテンツビジネスの現状、これは既に説明したとおりです。韓国や中国が追い上げる。ヨーロッパは従来どおり手厚くやっている。米国は一人勝ち。そういう中で日本は今後どうなるのか。やはり、ここ数年が大きなポイントになると思います。そういう意味で、コンテンツビジネスの振興を国家戦略の柱に据えようではないかと、いうことが報告書の基本的なポイントです。

そのための問題点については、色々と議論がありましたが、資料にあります3つの目標を達成するということです。
「3カ年集中改革の実施」を謳っていますが、韓国や中国の追い上げが急速である、米国もますます市場支配力を強めている、そういう中で、やはりここ3年がポイントだと思います。3年間で課題を克服し11兆円産業をさらに大きくするということだと思います。
個別の課題は色々とございます。例えば、コンテンツ業界が、各々ばらばらに取り組んでいる、一体感がないということ。或いは、実際のコンテンツビジネスに携わる方々の多くが中小企業であり資金調達等の面で非常に苦労が多い。また、放送局と番組制作者側が下請関係にある。これについては、専門調査会における議論でも大分改善されつつあるというお話もありましたが、そういった中で、制作者やクリエーターの方々が海外展開にまで目を向ける機会がないという状況にある。
そういう意味でも、制作事業者の資金調達手段の多様化は非常に重要です。今国会でも関連法律が提出されましたが、「信託業法」は残念ながら時間切れとなってしまいました。次の臨時国会等でぜひ成立させていただきたいと思います。

また、この「改革3」にありますように、インセンティブの付与。これはやはり税制だと思いますが、来年度の税制改正に向けてしっかり取り組む必要があると思います。
しかしながら、国がやれることには限度があります。何といっても関係業界、関係者が自らがんばる以外ないと思います。そのための「一致団結のためのスローガン」が次の「ABCDE」です。「All Japan」でやっていこう。それから、「Brand Japan」をしっかりと位置づけて、「Cool Japan」を目指して、技術的には「Digital Japan」、あるいは先端技術「E-Tech Japan」を目標にこれから取り組もう、ということを専門調査会でまとめました。
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