文化庁主催 コンテンツ流通促進シンポジウム「著作物の流通・契約システムに関する研究会」の成果報告
コンテンツビジネスの未来は輝いているか?

2004年6月28日 国立オリンピック記念青少年総合センター(カルチャー棟大ホール)
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特別講演
浜野 保樹 (はまの やすき)
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 教授

コンテンツ産業の最新動向と国際展開における課題

撮影:小池 良幸
ID:HJPI320100000590
ただいまご紹介いただきました濱野でございます。
先ほど、森口さんから全体的な構想とか政府の方針とかがお話がありましたので、私の方はできるだけだぶらないように、最近の動向とか、私が関わっているプロジェクトなんかについてお話ししたいと思います。

日本のコンテンツ産業というのは最近になって力を持っているということがいろいろな方面から言われるようになりました。これは昨年フランスに行ったときに撮った写真ですけれども、パリの下町の一画に日本のマンガとかアニメーションを集めた本屋さんが集中している場所がありまして、日本のマンガがフランス語に訳されたものとか日本語の本がそのまま売られています。これ全部日本のマンガですけれども。欧米の横書きと日本の縦書きとでは、開き方が違います。そのため、欧米ではマンガ本を印刷する際にはかつて左右を反転して印刷していました。そういったマンガを見たフランスの人は日本人に左利きが多いのを不思議がっていたそうです。最近ではオリジナルに近い形でマンガが見たいということで、全部日本開きになっています。くるみも同じようにしてほしいとか、できるだけ原版に近い形でマンガがフランスで出版されて、こういった店に同好の士が集まって情報交換をする場になっているわけですね。こういった、これはフランスで最も当たったアニメーション「マジンガーZ」のキャラクターで、こういった形で日本のポップカルチャーというのは本当に幅広く世界で受け入れられているわけです。

それを質的に非常に高められたのが、宮崎駿監督とか高畑監督とか、2人の師匠でもあります大塚康生さんなどです。この写真は三鷹の森ジブリ美術館の開館パーティーで私が撮ったものです。何で宮崎監督が横を向いているかとというと、近くを歩いていた幼稚園児たちが、宮崎監督を見つけて、「宮崎さん」と全員で呼んだからです。それぐらい宮崎監督の知名度が高くて、今回業界の方がいらっしゃると思いますが、皆さんの中で例えば「白雪姫」の監督とか「ピノキオ」の監督言ってごらんなさいって、言える人ってほとんどいないんですね。それぐらい日本のこういったポップカルチャーの方々というのは作家性が強くて、非常にすぐれた作品を自分の名前で出されている。だから、幼稚園の子どもまで「宮崎駿」という名前を知っていて、顔を見て呼ぶぐらい高名なのです。

また、別の部分で言えば、日本のかわいいキャラクターも国際的に評価されています。最近「巨額を稼ぎ出すハローキティの生態」という、2人のアメリカ人ジャーナリストがハローキティはなぜ国際競争力をもつのかについて調べた本が出版されました。日本特有の「かわいい」というところに注目している現代アートの村上隆さんは、ルイ・ヴィトンから頼まれてアニメーションを制作しました。ルイ・ヴィトンの世界の直営店で日本制作のアニメーションが、細田守という優秀なアニメーション監督に監督をさせたのですが、それが上映されました。その中に出てくるキャラクターが携帯電話を持っています。かわいらしさとか日本の軽薄短小に長けた家電を絡めた、極めて日本的なアニメーションが世界中のルイ・ヴィトンの店頭で放映されたわけです。


撮影:小池 良幸
ID:HJPI320100000590
いくらでもまだデータで示すことができます。ライコスというインターネットの検索サイトがありますけれども、ライコスは最もインターネット上で検索された言葉というのを毎年発表しています。2001年、2002年と世界で最もインターネット上で検索された言葉は「ドラゴンボール」という言葉でした。最も世界の人が知りたかった言葉は、日本のマンガ・アニメーションの「ドラゴンボール」なんです。イクラ戦争でも9・11でもなくて。フランスで最も有名な日本人はだれかという調査を在仏日本大使館が毎年しているようですが、ここずっと鳥山明さんだそうです。日本のグローバル企業の代表者でも首相でもなくて、鳥山明という方が一番有名な方です。

経済界の人に話をする場合、「鳥山明という名前を知っている人は、手を上げてください」と言ったら一人も手を上げない。財界の方が知らない人が世界で最も有名な方なんです、そういう人が外貨を稼いでるんです、という話をすると、ギョッとされるんですけれども。

残念ながら、「ドラゴンボール」は去年3位になりました。1番、2番はP2Pの違法ソフトです。それをダウンロードしたいためにみんな検索したわけです。でも、コンテンツ系ではトップが「ドラゴンボール」だったわけです。
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