 |
『春の日は過ぎゆく』の映画の時にソウルで初日に伺った時に、まず長蛇の列にびっくりしましたけれども、日本と同じように初日舞台挨拶を行ないます。主演のイ・ヨンエという国民的な女優さんですね。それと青春スターのユ・ジテという2人が壇上に上がったわけですけれども、イ・ヨンエさんのほうはリムジンが来まして、「じゃあね」ってにこやかに1回で帰られたのですけれども、それはいいのですが、ユ・ジテさんのほうは劇場の前から帰らないのですね。どんなお客が来てくれるのか、もう本当に自分の目で確かめたい。それでもちろんトップスターですから、一般の方がワーッと殺到しても、サインはしてあげるし、握手はするし、肩を組んで写真までにこやかにやるのですね。
そういう中で舞台挨拶にもう1回立ちたいと、彼のほうから言ってきまして、制作サイドとしてはもうしめしめという感じですから、そんなことで、結局、毎回舞台挨拶を彼はシークレットでやってくれたのですね。ファンを大事にするということは、ビジネス的に考えますと、そこでは成功報酬が契約上確立されている。お客が入れば収入も増える。その辺が韓国は映画スターが動員力を持って世の中に還元していくという、そういう非常にいいシステムが、今、確立されているなというふうに思います。
日本はなかなかスターシステムという、かつてそういう時代がありましたけれども、それでディレクターズシステムがあり、今ようやくここに来てプロデューサーシステム、ハリウッド型ほどはいかないですけれども、メジャーの映画会社を含めて今、一番大事なのは企画なのだと。世の中のニーズ、観客が何を求めているか。それに対して観客との接点に立っているのは、やはりプロデューサー。このプロデューサーの資質が今、問われているという中で、プロデューサーを育てる企画をもっともっと企画開発費ですね。いわゆるデベロップメントのフィーをもっともっと豊かにしていくというところで、ようやく日本映画も企画優先という状況が見えてきまして、その中で観客の志向もテレビのほうから映画のほうにという流れもやや映画に味方してきた。
その中でやはり動員力を含めた企画が、非常に魅力的な映画が日本映画でも並び始めた。この場合、企画というのはパッケージとしての企画デザインですから、脚本があり、もちろんその元になる企画がありますけれども、原作がベストセラーの場合ももちろんあります。原作があり、企画があり、脚本があり、それと優秀な監督があり、俳優さんですね。役者が主演のクラスが並んでいく。その辺が1つのコーディネートされる形での非常に魅力的な企画が誕生していく。
その企画がだんだんだんだん撮影という肉付きになり、ポストプロダクションという仕上げの作業になって、宣伝というもう1つ非常に大事な期間を置いて観客の皆様にプレゼンスされていく。その辺の流通も含めて、日本映画はだいぶ活性化してきた理由の1つだと思うのですけれども、日本映画がこういう形でとりあえずは観客の動員数がだいぶ定着してきたという中で、プロデューサーに限っていいますと、僕はいつも3本の柱があると思うのですが、1つはクリエイターとしての能力ですね。やはりゼロから新しいものを創造していく。
クリエイトしていく能力と、もう1つはコーディネーターとしての力ですね。やはりコーディネーターのセンスが必要だと思います。これはこの企画には例えばこの脚本家、あるいはこの監督、この監督はこういう音楽家とは組んだことがないけれども組ましてみよう。あるいは今まで映画に出ていない舞台の俳優さんを連れてこようとか、そういう意味でのコーディネートしていく力ですね。その辺の感性、センスも必要だと思います。
もう1つはビジネスマンとしての能力です。これは今日のテーマでもあると思うのですけれども、やはり映画というのは非常に多額の制作費がかかります。その制作費をどのように調達していくか。
そこで今、一般の投資家、松竹でいいますと、『忍 SHINOBI』というこの秋に公開する映画で個人投資家を募るということを第1弾としてやりまして、昨年の12月に信託法が変わりまして、後で土肥さんのほうからお話が詳しくあると思うんですが、『阿修羅城の瞳』という映画の時に土井さんの会社にコーディネートしていただく形で信託法での第1弾という形をとりました。そういう投資の機会がますます増えていくと思うんですね。これは非常にいい傾向だと思います。
要するに、やはり観客、一般の大衆の側を制作の段階から巻き込んでいくことがある。これはむしろ映画づくりに参加するということでは、暗闇の中で映画館で一方通行で映画を見ている時代から、やはり映画制作に関して参加していく。一緒になって作る一員として映画制作をも楽しんでいけるという意味では、チャンスがますます広がっていくというのはとてもいい傾向だと思います。
とりあえず、僕は導入部分の話でこんな形のお話をさせていただいたのですけれども、まず日本映画、ようやく元気になってきまして、これから投資機会が増えていくと思うのですけれども、いま日本映画が資金難ではなぜかあまりないのですね。むしろ5〜6年前くらいから、だんだんだんだん状況がよくなりまして、いま比較的お金が集まりやすくなったというふうに映画協会ではいわれています。これは映画の興行という映画館だけではなくて、2次利用ですね。ビデオグラム、ビデオですとかDVDあるいはテレビ放映、いろいろな間口が広がってきた、ビジネスチャンスが生まれてきた。
海外セールスも含めて、そういういろいろなビジネスチャンスが集まる形で、映画という商品が、事業が成り立つようになってきたという意味では、今後映画事業にますます参加される一般の方あるいは企業の方、ぜひ意欲的に前向きに取り組んでいただければありがたいなと思っています。
とりあえずこんなことで僕のお話は終わりにさせていただきます。どうもありがとうございます。 |