福島県011

裏磐梯高原ホテル

  • 1983年竣工
  • 設計/株式会社竹中工務店
  • 施工/株式会社竹中工務店
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造 地上3階 鉄板葺
  • 用途/宿泊施設
  • 所在地/福島県耶麻郡北塩原村檜原湯平山1171

1958年に創業された裏磐梯高原ホテルは、1983年【「国立公園内の自然と調和する建築」とする思想に基づき、裏磐梯の観光に寄与する。】を目的に建て替えられた。皇室にも利用されたことのある裏磐梯を代表するリゾートホテルである。レッドシダーシングル葺きの外壁と切妻屋根のデザインが磐梯朝日国立公園内の自然公園法許可基準のモデルとして周辺地域の建物に展開されており、地区景観の形成に大きく貢献し親しまれてきた。
多雪極寒地域における長寿命、省エネルギーに対する配慮として、外壁にRC外断熱工法(合板12㎜断熱材38㎜の複合版を型枠として躯体コンクリートを打ち込み、12㎜の合板に直接レッドシダーを釘打ちしている)を採用しており、厳しい自然環境の中で風合いを増しながら現在もその効果を発揮している。ホテルは五色沼の一つである弥六沼越しに磐梯山を望む絶好のロケーションにあり、季節の移ろいや水面に映りこむ神秘的な景観など、この場所ならではの自然の豊かさを満喫できる。2011年から2014年にかけて施設の陳腐化・老朽化対策として内部諸室の改修を行い、内部空間は細心の配慮のもと、和室であった宿泊室の半分を洋室として磐梯山への眺望をより活かす形に変え、2階和室大広間を椅子席のメインダイニングルームに、浴場は積雪のある冬季も弥六沼の自然環境が楽しめる温浴棟として増築し、もともとの大浴場はパーテイや研修に使える多目的室に改修された。外観をそのまま残しつつ温浴棟増築・客室のリニューアルによりホテルとしての居住性を向上し、快適な環境で自然を楽しめる滞在型ホテルに再生した。
磐梯山を一望するレストランや、湯面が沼の水面に連続して感じられる露天風呂、開放的で眺望を楽しみながらくつろげる客室に加えて、ライブラリーラウンジ、研修・多目的室、ブライダル、チャペルなど機能が充実され、一年を通じて自然に関するイベント(展示・講演会等)を企画・開催、宿泊者のみならず一般に公開して地域の活性化に貢献している。
改修は、当初の設計のテイストを守りつつ、現代ニーズに対応した事業企画並びにそれを具現化、建物の価値を維持しつつ建物寿命を長らえさせていくことに成功し、地域環境・景観を含めて維持されている。スクラップアンドビルドではなく、景観を保全しつつ長寿命化を進めていく地域づくりへの貢献として高く評価されている。(蔭山寿一)