福島県営大坪団地は「1982年建設省優良モデル住宅街区建設プロジェクト」の一環として、福島県より大高建築設計事務所に基本設計を委託された団地です。
このプロジェクトの目的は「良好な住戸性能及びデザインの優れた公営住宅の建設を周辺の市街地環境整備を行うことにより、住環境の良好な住宅街区を形成する」ものでした。基本設計はその主旨に沿って、社会環境、自然環境に調和した団地となる様まとめられている。社会環境に適応した住宅団地としては、会津の街並みに調和し、単一的、単調なものにならないこと。自然環境に適応した住環境整備としては、多雪地域を認識した住宅団地計画及び住戸計画とすることとし、特に雪対策を大きなテーマとして挙げている。
団地は会津若松市の南部で会津若松市中心部より3km、国道のバイパスに面し、小学校に隣接し周囲は住宅地である。周辺の低層住宅に調和し、バイパスからの景観を重視するコンセプトから、バイパス側に中層メゾネットタイプの住棟ブロックを配置し、団地のシンボルとなる給水塔を載せた集会所を前庭に設置している。バイパスから奥まった所は、周囲と調和するよう戸建て住宅的な勾配屋根を持つバッテリー型住棟を配置している。雪対策として、敷地内に流雪溝として機能するよう小川が整備されている。雪割り棟を持った勾配屋根の雪は住棟間のスペースに自然落雪させている。落雪時の安全対策として雪が落ちるスペースは冬期に人が入らないよう自転車置き場などで囲った中庭としている。
多雪地域の住宅に配慮した住棟内は、階段室などの公共部分を屋内化し広めにとることや、住戸玄関も長靴などを考慮し通常よりも広いスペースとしている。また、冬の物干し場として各戸にサンルームを設けている。東日本大震災により基礎杭が圧壊(住棟傾斜)するなど大きな被害を受けたが、復旧工事を行い継続使用されている。(室井洋)