福島県立博物館は会津若松市の鶴ヶ城址公園三の丸跡地に建てられている。その立地性を考慮して「歴史的環境の調和と多雪な自然環境への対応」をメインテーマとし、「開かれた博物館」をめざして整備された。設計はプロポーザルにより佐藤武夫設計事務所(現・佐藤総合計画)が行った。
外観は博物館の「保存」という機能と、「伝承」という役割を象徴する形態として、会津や喜多方地方に伝わる「蔵造り」をモチーフにしている。外壁は漆喰調といぶし瓦調の二色のタイルを打ち込んだPC板で、いぶし瓦色の鋼板葺大屋根は軒先が低く抑えられている。建物は南に開いた「コ」の字型で冬季の北西風から来館者を守る配置となっている。
内部はエントランスホールを中心に展示部門と教育普及部門がそれを囲み、東側に収蔵・研究・管理・事務部門が配置されている。来館者を迎えるエントランスホールは勾配屋根を利用した傾斜天井の大空間である。視界に大きく映りこんでくる内壁は西会津産の若草石(凝灰岩)であり、スクラッチを入れることで柔らかな表情となっている。この内壁は展示空間にも続いている。自然の素材で構成された内装には、天井材として県木の欅や会津産の桐が使われており、会津木綿をモチーフとした椅子を講堂に置くなど会津地方の風土性を取り入れている。
博物館という施設に見られがちな「荘厳な雰囲気」ではなく「明るく、親しみやすく、落ち着いた雰囲気」の空間づくりを意識し、一般に無料開放されているエントランスロビーは、地域の人々に四季を通じてたまり場として利用されている。(室井洋)