福島県016

日本ベクトン・ディッキンソン(株)福島工場

  • 1987年竣工
  • 設計/竹中工務店 (株)日揮(工場棟増築)
  • 施工/竹中工務店(新築、事務所棟増築)黒金建設(工場棟増築)
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造および鉄骨造 地上2階 桟瓦葺
  • 用途/産業施設
  • 所在地/福島県福島市土船字五反田1番地

福島市西部に位置する西工業団地の中、設計者が伝統的な日本の風景を感じたという敷地は吾妻・安達太良の山々の連なりを背景とし、水田や果樹園に囲まれ、杉木立の森と河岸の松林に隣接している。日本ベクトン・ディッキンソン社はアメリカに本社を持つ国際的医療機材メーカーの日本法人である。人の命を預かる重い使命を託された製品は、美しく整備された環境の中で生み出さなければならないという理念のもとに、福島工場は伝統的な日本の田園風景を背景に建てられている。
工場施設は事務・研修エリア、製造エリア、搬出入・倉庫エリア、機械室エリアに明快にゾーニングされていて、それぞれの機能空間が効率良くつながっている。
外観は寄棟の瓦屋根の連なりとして表現している。屋根は伝統的ないぶし一文字瓦、外壁は色むらを意識したコンクリート打放しによるシンプルな構成であるが、正面の事務・製造部分の高さを低く抑え、奥の搬出入・倉庫部分の高さの有るボリュームの対比が屋根の連なりや外観に変化を与え、施設群の美しさとなっている。
駐車場は建物西側に配置し、アプローチを迂回させることにより建物は前庭の緑と池の水面越しに見え、寄棟屋根の連なりと低く抑えた庇の外観を際立たせている。
来訪者は一文字瓦の深い軒と列柱の回廊を通りロビーへと導かれる。池を渡る通路からも同様にロビーへと導かれる。
開放的なロビーからは大きなガラス窓を通して、西側には列柱の回廊と池、東側には食堂前の列柱と前庭の緑を眺めることができる。
2000年に増築された第2工場棟は箱型の外観であるが、打放しコンクリートに近い色合とし、廊下を介して奥の倉庫部分に接続している。正面事務室棟の東側に増築した第2の事務室棟は、低く抑えた廊下を介して既存建物と接続していて、既存棟の外観を踏襲している。一体感のある美しい外観の施設群が、伝統的な風景に調和している。(菊地 進)