JR磐城塙駅・塙町コミュニティープラザ・塙町立図書は、林業や木材産業が盛んな塙町「木のまち、はなわ」のシンボルとなるようなJR水郡線の駅のホームに沿って連なる『森林(もり)』をイメージした8つの屋根をもつユニークな建物である。1990年、町は木構造による林業関連施設を手がけている伊藤邦明氏を設計者として特命にて指名し、町のランドマークとなるこれらの施設建設事業を行なった。
Ⅰ期工事として建設された塙町立図書館は森や林の木陰を創造させる建物で、3つの円錐屋根(森)と2つの四角錐屋根(林)が、読書をする人達を包み込む大きな木の梢を表している。円錐の屋根の下に児童開架室があり、樹々の幹や枝を表すような柱や梁で大きな丸い屋根を支え、さながら森の中にいるような空間を演出する。一般開架室は四角錐の屋根の下に設けられ、大きなトップライトから落ちる明るい光が木もれ日の下で読書をしている雰囲気を醸し出している。
Ⅱ期工事の塙町コミュニティープラザは磐城塙駅駅舎を合築した全国でも珍しい複合施設で、3つの円錐屋根を持ち、塙町立図書館の北側に併設された。枝の絡み合う林または大きな傘の下のイメージを伺わせ、また垂木のリズミカルな構造が農家の茅葺き屋根の屋根裏空間を創造させる。漫画家・富永一朗画伯の漫画廊や町民展示館、喫茶室、お土産品コーナー等が含まれ、町の情報発信基地、社会教育の拠点として町民に活用されている。さらにⅢ期工事では公園部分が延長され、町の中央部が一新される契機となった。
専門誌である「新建築」や海外の「WERELD STATIONS」等の多くの書籍に紹介されている。1995年グッドデザイン賞、1996年福島県建築文化賞、1996年ブルネル賞を受賞している。また、2001年シカゴ美術館、2002年オランダ・ユトレヒト中央博物館等で模型や図面が展示され、設計者が招待を受けている。(蔭山寿一)