福島県021

南相馬市博物館

  • 1995年竣工
  • 設計/(株)伊藤喜三郎建築研究所
  • 施工/五洋・庄司特定建設工事共同企業体
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造および鉄骨造 平屋(一部地下1階)
  • 用途/文化施設
  • 所在地/福島県南相馬市原町区牛来字出口194番地

福島県南相馬市は、一千有余年の歴史を誇る勇壮な「相馬野馬追」の地として知られている。敷地は「相馬野馬追」のハイライト、甲冑競馬・神旗争奪戦が繰り広げられる雲雀ヶ原祭場地の東側に広がる、緑豊かな東ヶ丘公園の中に位置している。
平成7年「野馬追の里歴史民俗資料館」として開館し、平成10年に「野馬追の里原町市立博物館」に名称変更し、平成18年には市町村合併により「南相馬市博物館」に改称している。
展示は相馬地方の伝統である、国指定重要無形民族文化財「相馬野馬追」を中心に、南相馬市周辺地域の自然・歴史・民俗をテーマとした展示を行っている。
設計者は伊藤喜三郎建築研究所で、西側の大曲面(3次元曲線)の流れるような屋根のフォルムは、地域の歴史と伝統を踏まえながら、未来への飛翔をシンボリックに表現したものである。
構造は鉄筋コンクリート造で、鉄骨造の2つの大曲面屋根が東西の躯体の上に掛かっている。
公園の緑に面した西側外観は開放的なガラス面と石張外壁とし、搬出入・収蔵庫の有る東側は大曲面(2次元曲線)の屋根とタイル張り・塗装仕上げの閉鎖的な外観となっていて、エントランスホール入口は東西のボリュームの間に有り、西側の大曲面屋根の飛翔感が印象的である。
施設は西側に常設展示室と体験学習室、東側に収蔵庫と事務室・補修工作室を配置し、常設展示室と収蔵庫の間に特別展示室が配置されている。エントランスホールを抜けると、西側の公園に大きく開いた展示ホールが広がり、常設展示室入口とシアターへと繋がっていて、シアターでは「相馬野馬追」と地域の自然と歴史などを紹介している。 来館者もスタッフも利用しやすい平面となっていて、アプローチから展示室までは段差の無いバリアフリーとなっている。
西側展示ホールからはガラス窓を通して公園の緑を眺めることができるが、開館して28年経過し周辺の樹木が成長し、建物は樹木の中に見え隠れするように溶け込んでいる。公園の散策路を歩く人々がいつも見られ、地域の人に親しまれている。(菊地進)