いわき市草野心平記念文学館は、いわき市小川町の郊外にあって、阿武隈山系の山並みを見渡せる丘陵地にある。文学館は1998年に開館し、いわき市出身の、詩人として著名な草野心平氏の人物像や業績を紹介する常設展示室と、いろいろな芸術作品を展示するアートパフォーミングスペース、収蔵図書の閲覧が出来る文学プラザ、講演会などに使用する小講堂、地域の食事を適用する食堂(現在休業中)等で構成される。
本施設の設計は、プロポーザル方式で選ばれた、いわき市の邑建築設計事務所(所長陽田秀夫)が行った。草野心平氏の世界観、「人間も動物も植物も無機物も、みんな宇宙の生きもの」を現すように、建物が周辺の自然に溶け込むように計画されている。車寄せから外部通路を通りエントランスに向かうが、屋根は緑化され、建物全体が土中に埋もれたように見える。エントランスホールからアトリウムロビーに入るとトップライトからの光が入り、その先に約7m×10mの大きなガラス面がある。ガラス面には草野心平氏の「猛烈な天」という詩が刻まれていて、外の風景と重ねてみることが出来る。このアトリウムロビーを中心に各施設が配置されている。そのうち、当初、トップライトからの光と、東側腰からガラス越しに外の池を見ることが出来たアートパフォーミングスペースは、展示品への影響を考慮し、自然光を遮る改修が行われた。建物全体は、木・土・石といった、草野心平氏が好んだ素材や色が用いられ、自然と共生した仕上げとなっている。(作山栄一)