福島県027

福島県産業交流館ビッグパレットふくしま

  • 1998年竣工
  • 設計/北川原温建築都市研究所
  • 施工/ハザマ・蔭山・八光特定建設工事共同企業体
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造および鉄骨造 地上4階、地下1階 鉄板葺
  • 用途/文化施設、産業施設
  • 所在地/福島県郡山市南2丁目52

福島県産業交流館ビッグパレットふくしまは、JR郡山駅から南に3㎞ほど離れた旧国鉄郡山操作場跡地に建つ。県の産業拠点のシンボルとして、東北有数の大空間を持つ多目的ホールと国際会議にも対応できるコンベンションホールを有する県内最大規模の複合コンベンション施設と建築された。福島県出身の大高正人や槙文彦らを審査員とする県内初の公開コンペで北川原温建築都市研究所の案が選ばれ、1998年に竣工した。
外観を特徴づける楕円形の大屋根「マザールーフ」の形状が「ビッグパレット」という愛称の由来である。内外装には様々な形状のアルミやステンレスを多用するが、凸凹や空隙の多いディテール、植物や昆虫が持つ環境に同化するカウンターシェイディング効果で、圧迫感を減らす。屋外展示場のファンコラムに穴を開けた軽やかな表現は、この地域特有の強風と建築の巨大さを緩和している。
当時の高度な技術や最新素材を駆使した先進的なデザインも特徴の一つである。例えば屋外展示場のカテナリー・カーブのルーフストラクチャー、キールトラスを支える曲面形のファンコラム、ラチスシェル構造のペデストリアンデッキなど。建築全体は、様々な機能とボリュームを持った施設をつなぎ合わせるために、張弦梁や吊り構造など四つの異なる構造システムで対応している。多目的展示ホールは3分の2は張弦梁、3分の1が吊り構造である。
最も印象的なところは、屋外展示場である。キャノピーはカテナリー・システムで構造材を見せずにCFRP製ルーバーで全体を覆い、光や風を透しつつ雨を遮断し、快適な大空間を創りあげている。当時は初めてCFRPを一次構造部材として大規模に使用している。
受賞歴は、1998年にグッドデザイン賞、日本鋼構造協会賞、照明普及賞、2000年に日本建築学会賞作品賞である。
東日本大震災では県内最大の収容避難所として、8月末の閉所までの5か月半(171日間)に約164,000人を受け入れ、災害支援の重要な拠点となった。建築家坂茂らは、紙筒と布の間仕切りシステムを提供し、地域住民と共に多目的展示ホールに組み立て、避難者のプライベート空間を確保した。
建物は東日本大震災で大きな被害を受け、本来は立ち入りが制限される状態であった。2022年、2023年の福島県沖地震でも被害を受け、その度に復旧工事が行われている。今後の長期的活用を踏まえ、さらなる復旧工事を検討している。(齋藤いち子)