福島県028

会津若松市役所北会津支所

  • 1999年竣工
  • 設計/古市徹雄・都市建築研究所
  • 施工/鹿島・会津土建特定建設工事共同企業体
  • 構造形式/木造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造および鉄骨造 地上4階 鉄板葺
  • 用途/文化施設、官公庁舎
  • 所在地/福島県会津若松市北会津町中荒井字諏訪前11

会津若松市役所北会津支所は、会津若松駅から西へ7kmほど離れた会津盆地の田園の中に位置する。竣工時名称は北会津村役場複合庁舎で、2004年に北会津村が会津若松市に合併して会津若松市役所北会津支所になった。1階は住民福祉課とまちづくり推進課で、2階は会津若松地方広域市町村圏整備組合消防本部と会津若松・喜多方消防指令センターに用途を変更した。3階は会議室等である。旧北会津村役場の老朽化に伴い新庁舎が建築されたが、5社によるプロポーザルで古市徹雄・都市建築研究所の案が選ばれ、1999年に竣工した。古市徹雄は本県出身の建築家である。
この建物を印象付けるのは、見渡す限り平坦な田園の中に見える白い展望台である。設計者がヨーロッパ山中の教会をイメージして造り、地域のシンボルタワーとして認知されている。カーテンウォールの上にそびえ立つ姿はファサードの要である。高さ7.5mのカーテンウォールは、ガラスを支える背後の支持材が見えないよう4点支持のDPG工法に替わる1点支持のMPG工法を開発し、ガラス面の透明性を高めている。
ガラス屋根のエントランスホールは、ギャラリーやイベントなど多様に活用できる列柱空間である。執務室空間は、天井高と柱のスパンが共に7.5mの木造柱大空間で、柱の頂部に直径1.8mの円形トップライトを設け、明るく伸びやかな空間を創りあげている。また、執務室南面すべてをガラス面で外部と連続するオープンな空間とし、外部からも内部が完全に認識され、会津の閉鎖性や薄暗いイメージを払拭している。室内に自然光が十分に確保され、冬も自然光のみで執務が可能である。このように会津の伝統的木造空間の維持を図りつつ、当時の新技術で現代的に進化させた木造柱大空間が見どころである。
この建物の屋根は、設計者独自の積雪対策でフラットな屋根面である。会津特有の激しい地吹雪で屋根の雪を吹き飛ばすと共に、屋根からの落下事故や地上の積雪処理対策でもある。しかし、この地の冬の厳しさは設計者の想像以上であり、老朽化による雨漏りや劣化も加わり悩ましい問題で、今後のメンテナンスが重要な課題である。2015年には建物の南東部に太陽光パネルを設けている。(齋藤いち子)