文化庁主催 第3回コンテンツ流通促進シンポジウム
日本映画界は、ハリウッド映画並みの大作を作れるのか?−外部資金の活用を考える−

2005年7月13日 国立オリンピック記念青少年総合センター(カルチャー棟大ホール)
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特別講演
李 鳳宇 (リ ボンウ)
シネカノン
代表取締役

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一番大きな試みとしては、これはいいか悪いかは別なのですが、ロビー活動をしようということで真っ先にやったことが、韓国映画を助成してくれる大統領を選ぼうということになりました。大統領選挙は皆さんご存じのとおり、文民政府になって民主化になって、そして金泳三政権から始まって、金大中に移るわけですけれども、金大中さんの選挙活動で先頭に立ったのは、これは実は映画人だったんですね。

というのは、金大中さんがもし自分が当選をしたら、韓国映画を助成しますという約束をしました。いろいろな映画人たちのサポートもあって、最後決め手になったのはそうじゃないかといわれているのですが、伯仲しましたが金大中さんが勝ちました。勝って、公約どおり韓国映画界を振興しましょうということで、真っ先にやったことというのは、今まで韓国映画振興公社という公社がありました。これはもう完全にある種国の団体だった、外郭団体だったのですが、これを半官半民にしましょうということで、民間の人たちを沢山入れて、韓国映画振興委員会というふうに名称を変えました。そこに当時のお金で1500億ウォンを拠出しましょうと。日本円で150 億円くらいですね。10分の1ですから。それで韓国映画振興が始まったわけです。

振興の一番大きな柱とされたのは、当時から韓国映画の最も大きな構造的な矛盾を何とか改革しようということでした。構造的な矛盾って何かといいますと、古い韓国映画をご覧になった方は何となく記憶にあると思うんですが、韓国映画が好んで用いたモチーフにロードムービーというのがあります。これは韓国映画で成功した映画、私が配給しました『風の丘を越えて/ソビョンジュ』もそうですし、それ以前にあった『旅人は休まない』もそうですし、いろいろなものはほとんどロードムービーの形をとっています。男2人、女1人の旅物語、鯨とりとか、代表的なことがいっぱいありますけど。

ただ、こういった偏ったストーリー、偏った撮影方法になってしまうので、これは非常に限界がある。それまでは韓国映画界というのはスタジオを持ちませんでした。それからスタジオを持とうという、スタジオの建設の着工が始まります。97年にナミャンというところ、そこに韓国の映画スタジオができます。今では多分東洋一だといわれていますが、非常に最新設備のスタジオです。これができた後に、やはり韓国映画は要するにテーマとしてかなり変わってくるわけですね。

もう1つ、振興委員会が力を入れたことというのは学校です。これは人材育成がやはり急務だったわけですね。韓国映画アカデミーというのを作ります。ここでは韓国映画のエリートたちを養成しようということで、ほとんどは大学を出た人たち、男性だったら軍隊に行ってきた人たち、そういう人たちをもう1度再トレーニングしようということで、高い倍率に今なりましたが、そういったエリートを養成しようとして、韓国映画アカデミーを創設するわけです。

もう今ここから出てきた才能というのは、日本でも私が配給しました『スキャンダル』という映画という監督、イ・ジェヨンもそうです。そして『殺人の追憶』のポン・ジュノもそうですね。最近の『マラソン』という映画の監督もそうですね。ですから、ほとんどこの韓国映画アカデミーというところから俊英がどんどんどんどんデビューしては、映画の制作陣を豊かにしているなと思います。これを作った。

もう1つは今日の話題になるでしょう、このファンドですね。映画の資金的な支援をしましょうという3本柱で、3本目というものを作ったわけです。このファンドを作ろうという。当初はファンドではなくて支援をしましょうというふうなことだったんですが、支援の方法は現在いろいろな形で変遷を遂げて、いま3つのやり方があるといわれています。

1つは投資をしましょう。もう1つは融資をしましょう。もう1つは無償で支援しましょうという3つの柱があるといわれています。去年度の実績をいいますと、支援しましょうというところでいいますと、無償でお金をあげてしまうわけですけれども、これは韓国ウォンで4億ウォン、4000万円くらいというものを年間6本、あとデジタルで作った映画も支援しましょうというのが始まりまして、これはだいたい8000万ウォン、800 万円ですね。これが年間10本くらい支援しましょうというふうにして、支援はそういう柱でやっております。一方でシナリオ支援、開発支援というものがあって、もう一方でさっきも申し上げた投資という部分、これがファンドに値するわけですね。

融資をしましょうというのもあります。これはほとんど、でも劇場に対する融資でして、新たに設備を変えるとか、音響システムを変えるとか、そういうことに融資をする。ですから、ほとんどこの対象は劇場です。そういったものが柱になってまして、その中の投資という部分がいま現在ファンドという形に形が変わってきたわけです。

ファンドというのはどういうふうに韓国の場合、映画振興委員会がやっているかといいますと、これは基本的に今年だと6月末の締め切りで、ファンドの申請をこの映画振興委員会にします。今年の6月だと、14のファンドの候補が申請をしたといわれています。届け出があった。映画振興委員会のうちいくつを選ぶかというのを、いま僕、結果は聞いていないんですが、多分4つか5つ選ぶのではないかといわれています。選ばれたファンドはどういう利点があるかといいますと、例えば10億円、韓国ウォンでいいますと100億ウォンくらいのファンドだとしますと、この部分のだいたい20%くらいは振興委員会が負担します。最大だと30%くらいあるのですが、今の傾向としてはあまりここからお金をもらいたくないという傾向みたいです。というのは、映画振興委員会からお金をもらってしまうと、いろいろな内容の規制とか、そういうこともあるので、もうちょっと自由なものができないといわれています。

とりあえず、ここに申請するわけです。そして20%前後の資金がここから入ってくる。当初はこのファンドを活性化するために、韓国映画振興委員会が投じたファンド、投じた資金は、最終回収の対象でした。つまり、80%くらい回収すれば、とりあえずファンドに参加した人たちはイーブンになるわけです。最後の20%について、政府のお金を回収できれば返してくださいということをとっていました。ただ、これがいろいろなファンド、でっこみひっこみが出てきたわけですから、その制度は今なくなりまして、今は同時回収をしますというふうになっています。
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