文化庁主催 第3回コンテンツ流通促進シンポジウム
日本映画界は、ハリウッド映画並みの大作を作れるのか?−外部資金の活用を考える−

2005年7月13日 国立オリンピック記念青少年総合センター(カルチャー棟大ホール)
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特別講演
李 鳳宇 (リ ボンウ)
シネカノン
代表取締役

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この海外でのシェアの恐らく70%くらいは日本ではないかといわれています。ですので、日本に頼るケースが多くなってきたわけですね。昨年度だけで申しましても、例えば3400億ウォンですから、全体の14%、15%くらいが海外でリクープされているという計算になります。ただ、全部の映画が日本で配給できているわけじゃないわけですから、配給された映画だけに限っても、多分30%から40%くらいは日本でリクープされているという結果になるわけですね。

ですから、いま韓国の映画ファンドは日本に向いているわけです。特に今、映画の制作スタイルが変わったという映画の代表をちょっとご覧いただきたいんですけれども、映像出ますでしょうか。1本見ていただきたい、『スキャンダル』という映画です。

[ 『スキャンダル』放映 ]

今ご覧になった『スキャンダル』という、皆さんご存じのペ・ヨンジュンというヨン様が出ているわけですね。これは今までの映画の作り方とまったく違う作り方をされました。もちろんファンドのお金が中心なのですが、それに加えて制作会社はポンという会社です。日本での人気というものが徐々に盛り上がってきた時に企画されたわけです。当初、この主人公はペ・ヨンジュンじゃなかったのですね。ほかの役者がキャスティングされていました。これをファンドマネジャーやいろいろな人間たちがキャスティングを変えてしまったんですね。これはもうどういうことかといいますと、日本をターゲットにしたということですね。そこで日本でより受ける人間にキャスティングした。

もう1つは、ほかのアジアのテリトリーで受ける人間ということがあって、実はこのポンという制作会社の映画の資金は香港のエルコという会社が出しています。エルコという会社はハリウッドで非常にいろいろな映画が成功した会社でして、ビルさんというのが有名ですね。『グリーン・デスティニー』とかやっていますね。彼がこの映画会社に出資をしたわけですね。彼も非常に大きな影響力を及ぼしたといわれています。ですから、ここら辺になってくると、もう国内のシェアだけを見込んではないわけですね。日本や香港やほかのテリトリーを見ているということで、かなり変わってきました。

韓国ではこの映画はさほどヒットはしませんでした。もちろん、リクープするくらい、160万くらいは来たのですが、160万といっても日本で大変な数字なのですが、韓国では160万とか150万というのは別に大した数字じゃないです。これ、日本でもしやると、3倍ですから、300万、400万人という数字になっちゃうのですけれども、韓国では100万人超えるのは普通の現象です。300万人超えないとヒットとはいえないようです。

日本で非常にヒットしまして、DVDが日本で20万枚出たわけですね。ですから、日本での成功もあって、こういった類の映画が今、この『スキャンダル』以降、特にこの2年間作られているわけです。それはどういうことかといいますと、このイ・ビョンホンですね。われわれが『JSA』でやったんですが、その時は人気がなかったんですが、テレビドラマがオンエアされた人気が出た、このイ・ビョンホンを使った映画がいま沢山作られて、その後は今、クォン・サンウという、あとその後、どうでしょうね。いろいろな人が続くと思います。チャン・ドンゴンも来るでしょうし、いろいろな人がその次、次々に出てくる。

これはスター中心に映画が盛り上がって、日本のテレビドラマで人気がある人、ペ・ヨンジュンの現象になぞってほかの人も売り出そうじゃないかという韓国映画界全体の思惑が絡んでいるわけです。これに今、日本の配給会社を中心に非常に混乱を極めています。韓国映画のスター中心の制作システムに非常に混乱、惑わされているわけですね。

といいますのは、これはこの数年、日本における韓国映画の価格というのは高騰しています。皆さんも噂ではご存じかもしれませんが、例えば今後公開する映画ですが、『私の頭の中の消しゴム』という映画があります。これは270万ドルで日本にMG契約されましたし、『甘い人生』、これは公開終わりましたが、320万ドル、あと今後公開される『タイフーン』という映画、これは350万ドル、あと『モンスター』という映画は470万ドル、『刑事』という映画、500万ドル、とどめはヨン様ですね。『四月の雪』、600万ドルといわれていますね。どんどんどんどん高騰化しているわけですね。どこまで行くのかなと思って、私も配給をやりながらちょっと「ウーン、まずいな」と思っています。

ただ、行くつくところは行くのでしょうね、多分。どこかで失敗すると引くのでしょうから、ちなみにヨン様が出演する『四月の雪』というのは、制作費は多分350万ドルくらいじゃないかといわれています。ただ、日本での権利だけでも600万ドルという。これはどういうことなのかですが、ただ映画の成功というのは一種のバロメーターですから、MGが高く売れるというのはいい傾向ではないかなと思います。長期的に見るとちょっとどうかわかりませんが。

こういったことでお話ししてきたように、ファンドで映画が作られてきたという韓国の現状。ちょっとこの『スキャンダル』以降、少し変化があるということをちょっと申し加えて終わろうと思うんですが、ヨン様を中心に非常にヒットして高騰化しているということがあって、今の韓国でファンドを作ろう、またそのファンドが作られるという条件の1つに、こういったプロダクションが参入するというケースが非常に多くなってきました。ですから、例えばチェ・ジウさんを中心にファンドを組もうという動きがありますし、このヨン様もヨン様ファンドみたいなことをいろいろなところでささやかれていますし、クォン・サンウを中心に集めようという動きもありますし、それもだいたい10億単位ですね。「向こう3本作りますからどうですか、10億で」というようなことが今まかり通る時代ですから、この辺がどこまで続くかということがわかりませんが、ファンドのあり方が少し韓国国内でも変わってきたのかなといわれています。ですから、日本にかなり依存しているというところが、今後韓国映画を危惧する人たちは非常にまずいではないかという一方の意見があります。

もう一方で楽観視する意見もあります。このファンドで非常に沢山映画が作られるようになって、沢山のヒットがあって、韓国映画は確かに今、制作するスタッフが非常に豊かになってきました。有名監督も沢山出てきました。映画アカデミーも寄与していますが、カン・ジェギュを筆頭にパク・チャヌク、キム・ジウン、ポン・ジュノ、イ・ジェヨンですね。『僕の彼女を紹介します』のクァク・ジェヨンとか、いろいろな監督、いろいろなジャンルの映画が成功するようになったので、当分この勢いは続くのじゃないかなとも楽観視する意見はあります。

今後の課題と申しますのは、それにしてもあって、それは多分、韓国映画界も日本映画界も同じような課題を持っているのではないかなと。それは、自国のマーケットだけではもう立ち行かなくなっているのではないかなということです。それは韓国映画が日本に向けて映画を作る、発信するということもそうですし、日本映画が今まで日本のマーケットだけを対象に日本人だけにわかるような、日本人が作ってきたということも一種の限界なんですね。ですから、日本映画は特にここ数年、国内でヒットする映画が海外でまったく配給されないという、こういうケースが続いています。

ですから、国内で50億、70億という稼ぐ邦画も、海外に行ってしまうと、もう「昔見たな」という映画になってしまいます。ですから、少し日本映画の作り方も少し変えなきゃいけない時間になったのかなと思いますし、そういう意味でも例えば日韓共同でファンドを作ってみるとか、共同制作の受け皿を作ってみるとか、そういうところは今後課題として2つの国の映画業界にはあるのかなと思います。

とりあえずお時間来ましたので、以上にいたします。ありがとうございました。
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