文化庁主催 第2回コンテンツ流通促進シンポジウム
放送番組は、ブロードバンド配信の主役となり得るか?

2004年12月1日 国立オリンピック記念青少年総合センター(カルチャー棟小ホール)
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特別講演
吉村 毅 (よしむら たけし)
カルチュア・パブリッシャーズ株式会社
常務取締役

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最初に、ビデオオンデマンドというものの可能性を幾つか挙げてみます。まず一つめですが、店舗から見ると非常に分かることがあります。店の機能で不足している部分をVODというものが補完したのだな、というような現象が分かります。例えばこのスライドに載っているのは「秋の童話」というドラマです。「秋の童話」は、韓国ドラマに詳しい人は恐らく頭の中で浮かぶいちばん初めが「冬のソナタ」だとすると、2番めに出てくるのが「秋の童話」かなと。実はこれが韓国ドラマの最初のトリガーのような作品なのです。「冬のソナタ」というのはNHKさんが最初にBSで取り組まれて、ツタヤのレンタル店のほうも商品は在庫してありました、1年ぐらい前から。今ほど多くはなかったですが。ところが「秋の童話」というのは、今から1年ちょっと前は韓国ドラマがここまでになるということはだれも予測していなかったので、「秋の童話」はツタヤでも恐らく1100店舗ある中で少量しか在庫していなかったはずなのです。その時期、約1年前から今から数か月前までの期間というのは、あるVOD会社さんの数字からいくと、実は「冬のソナタ」よりも、「秋の童話」のほうが累計視聴者数は多かったという実績があるそうです。これは店舗の感覚からすると当たり前で、店に行って借りられない、買えない、そうしたらどこで見るのか。ファンの人はどうしても見たい、探す。そうするとブロードバンドで見られるのだ、というとことで、ご覧になられたのだ、というのが、店に立っていた私の経験からの感覚です。このような形で店舗がまだそのクラスの中級商品、あるいは出はじめの商品を察知できるまでの間に、いち早くイニシャルのコストがかかりにくいVODのような機能がそこを補完してくれて、いいコンテンツを発見してくれているのではないかというのが一つ感じたところです。

VODの可能性で感じられること、その二つめです。私は個人的に4年ぐらい前から韓国という国自体に興味を持っており、これは全く個人的な話なのですが、映像にももちろんその一部として興味を持っていて、ずっと映画とドラマ関係は個人的にも追いかけてきています。ずっと流れを見ていると面白いなと思うことがあります。普通の映画ですとか、普通のドラマ的なものでいくと、大抵は地上波さんからだんだんと地方放送、BSさん、CSさんという流れが一般人の感覚です。でもこの「冬のソナタ」を見ますと、BSから始まって、そのあと人気が出て地上波という意思決定をなされました。今NHKさんでやっている「チャングムの誓い」というのも、これはたまたまなのかもしれませんが、CSであるKNTVさんからスタートして、今はBSにかけていただいている。これは非常に面白い作品で、やはりいい作品は成長するのだなというのが実感で、いい作品はどんどん鮭が川をさかのぼるようにして上がっていく。普通の今までのコンテンツというのはそういうチャンスがなくて、最初から仕組まれた仕掛けの中で大きな劇場にかかるとか、大きな放送にかかることが重要で、その仕掛けから漏れたものというのは一般消費者、我々からするとお客様とお呼びしているのですが、そのお客様の目に触れることができないという状況でした。それがこういう形で、CSを例に取っていますが、これがVODという存在にも言い換え得ると思います。そのようなVODであるとか、CSあるいはモバイルという媒体によってさまざまなコンテンツのチャンスが生まれて、その中から認められるものが出てくるというのは非常に素晴らしいことではないかと感じています。

ほかにもこのタイトル以外に最近ホットなものでいきますと、KNTVさんの人気アンケート調査で1番はペ・ヨンジュンではないのです。ペ・ヨンジュンを抜いているのがチョ・インソンという韓国俳優。これはコアなファンが多いKNTVさんだからこそ1番になるのかもしれませんが、このチョ・インソンいう俳優が出演して去年大ヒットした「バリでの出来事」というドラマがありまして、これもKNTVさんでスタートし、年内ぐらいにはTBSさんの地上波で放送スタートするという消息を聞いています。ほかにもCSもしくは地方波スタートで民放地上波に乗ってくるのがこれからも出てきそうな感じであると思います。

それと、地方局で育ってきたコンテンツとしては、先ほどお話しした「秋の童話」というのも最初から地上波ではなくて、これは正確な知識ではないのですが、MXさん辺りからスタートして、幾つかの地方局さんを回られてという形だと思います。「ホテリアー」という作品もそうだと思います。地方局から始まって、最終的にキー局の放送にも乗っていくというような上昇形です。

ツタヤのレンタルの状況からすると、地方放送を回っている時点でやはり話題になってきて、その顧客のネットワークの中に乗ってきますので、レンタルのほう、販売のほうも、その地方波で回っている段階からすでにヒットしはじめます。かなりヒットのさせ方というのは大きなところからやるだけではなくて、BSさん、CSさん、あるいは地方波をうまく回していくという形でパッケージのプロモーションが可能になってきたのが、この1年の動きです。一昨年までだったらそういう考え方は我々の中では出てきにくかったので、そういうようなチャンスは私の今本業であるカルチュア・パブリッシャーズのほうの企画としても生かしていっています。

韓国側の意図というのはどうなのかというと、韓国側は最初からそのような意図で動いているかというと、必ずしもそうではなくて、韓国側も非常にオーソドックスな、できれば地上波さんでかかることを期待していることが多いわけです。当然地上波でかかればプロモーション効果があるので、ビデオのパッケージの数もとてもたくさん入ります。いちばん希望とすると地上波で上映、そして、販売力のあるビデオメーカー、もしくは系列のビデオ会社に最初に売られて、そのあと少しずつ他のウインドウで収益を上げていくというような方法が一般的に考える理想形です。韓国の放送局は3局あるのですが、全部が同じ考え方ではないですが、そのような考え方になりつつあるとは思っています。ただ、キー局の地上波さんの数も限られているわけで、放送枠も限られている。でも韓国のコンテンツというのは、自分の国のための放送ですから、過去の作品、これからの作品も、日本でかけられる数よりも多いとなってくると、民放さん、地上波さんでかけられる枠だけでは足りないわけです。その足りなかった分の中から本当に面白いコンテンツはどれなのかというのは、地方波、あるいはCS、BS、ブロードバンドの中から生まれてくるという機会は、これからもずっと続いていくのではないかと思っています。

これは一つ韓国ドラマが今ホットな話題なので例にして取り上げていますが、これはアニメーションでも同じような試みがどんどん行われていて、スカパーさんで例えれば「風人物語」を先にPPVからスタートするとか、必ずしも地上波さんスタートではない形でコンテンツを育てているというところに関してチャレンジされている会社さんが多いですし、そこに私も非常に期待と努力をしていきたいと思っています。
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