文化庁主催 第3回コンテンツ流通促進シンポジウム
日本映画界は、ハリウッド映画並みの大作を作れるのか?−外部資金の活用を考える−

2005年7月13日 国立オリンピック記念青少年総合センター(カルチャー棟大ホール)
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パネルディスカッション

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『春の日は過ぎゆく』の映画の時にソウルで初日に伺った時に、まず長蛇の列にびっくりしましたけれども、日本と同じように初日舞台挨拶を行ないます。主演のイ・ヨンエという国民的な女優さんですね。それと青春スターのユ・ジテという2人が壇上に上がったわけですけれども、イ・ヨンエさんのほうはリムジンが来まして、「じゃあね」ってにこやかに1回で帰られたのですけれども、それはいいのですが、ユ・ジテさんのほうは劇場の前から帰らないのですね。どんなお客が来てくれるのか、もう本当に自分の目で確かめたい。それでもちろんトップスターですから、一般の方がワーッと殺到しても、サインはしてあげるし、握手はするし、肩を組んで写真までにこやかにやるのですね。

そういう中で舞台挨拶にもう1回立ちたいと、彼のほうから言ってきまして、制作サイドとしてはもうしめしめという感じですから、そんなことで、結局、毎回舞台挨拶を彼はシークレットでやってくれたのですね。ファンを大事にするということは、ビジネス的に考えますと、そこでは成功報酬が契約上確立されている。お客が入れば収入も増える。その辺が韓国は映画スターが動員力を持って世の中に還元していくという、そういう非常にいいシステムが、今、確立されているなというふうに思います。

日本はなかなかスターシステムという、かつてそういう時代がありましたけれども、それでディレクターズシステムがあり、今ようやくここに来てプロデューサーシステム、ハリウッド型ほどはいかないですけれども、メジャーの映画会社を含めて今、一番大事なのは企画なのだと。世の中のニーズ、観客が何を求めているか。それに対して観客との接点に立っているのは、やはりプロデューサー。このプロデューサーの資質が今、問われているという中で、プロデューサーを育てる企画をもっともっと企画開発費ですね。いわゆるデベロップメントのフィーをもっともっと豊かにしていくというところで、ようやく日本映画も企画優先という状況が見えてきまして、その中で観客の志向もテレビのほうから映画のほうにという流れもやや映画に味方してきた。

その中でやはり動員力を含めた企画が、非常に魅力的な映画が日本映画でも並び始めた。この場合、企画というのはパッケージとしての企画デザインですから、脚本があり、もちろんその元になる企画がありますけれども、原作がベストセラーの場合ももちろんあります。原作があり、企画があり、脚本があり、それと優秀な監督があり、俳優さんですね。役者が主演のクラスが並んでいく。その辺が1つのコーディネートされる形での非常に魅力的な企画が誕生していく。

その企画がだんだんだんだん撮影という肉付きになり、ポストプロダクションという仕上げの作業になって、宣伝というもう1つ非常に大事な期間を置いて観客の皆様にプレゼンスされていく。その辺の流通も含めて、日本映画はだいぶ活性化してきた理由の1つだと思うのですけれども、日本映画がこういう形でとりあえずは観客の動員数がだいぶ定着してきたという中で、プロデューサーに限っていいますと、僕はいつも3本の柱があると思うのですが、1つはクリエイターとしての能力ですね。やはりゼロから新しいものを創造していく。

クリエイトしていく能力と、もう1つはコーディネーターとしての力ですね。やはりコーディネーターのセンスが必要だと思います。これはこの企画には例えばこの脚本家、あるいはこの監督、この監督はこういう音楽家とは組んだことがないけれども組ましてみよう。あるいは今まで映画に出ていない舞台の俳優さんを連れてこようとか、そういう意味でのコーディネートしていく力ですね。その辺の感性、センスも必要だと思います。

もう1つはビジネスマンとしての能力です。これは今日のテーマでもあると思うのですけれども、やはり映画というのは非常に多額の制作費がかかります。その制作費をどのように調達していくか。

そこで今、一般の投資家、松竹でいいますと、『忍 SHINOBI』というこの秋に公開する映画で個人投資家を募るということを第1弾としてやりまして、昨年の12月に信託法が変わりまして、後で土肥さんのほうからお話が詳しくあると思うんですが、『阿修羅城の瞳』という映画の時に土井さんの会社にコーディネートしていただく形で信託法での第1弾という形をとりました。そういう投資の機会がますます増えていくと思うんですね。これは非常にいい傾向だと思います。

要するに、やはり観客、一般の大衆の側を制作の段階から巻き込んでいくことがある。これはむしろ映画づくりに参加するということでは、暗闇の中で映画館で一方通行で映画を見ている時代から、やはり映画制作に関して参加していく。一緒になって作る一員として映画制作をも楽しんでいけるという意味では、チャンスがますます広がっていくというのはとてもいい傾向だと思います。

とりあえず、僕は導入部分の話でこんな形のお話をさせていただいたのですけれども、まず日本映画、ようやく元気になってきまして、これから投資機会が増えていくと思うのですけれども、いま日本映画が資金難ではなぜかあまりないのですね。むしろ5〜6年前くらいから、だんだんだんだん状況がよくなりまして、いま比較的お金が集まりやすくなったというふうに映画協会ではいわれています。これは映画の興行という映画館だけではなくて、2次利用ですね。ビデオグラム、ビデオですとかDVDあるいはテレビ放映、いろいろな間口が広がってきた、ビジネスチャンスが生まれてきた。

海外セールスも含めて、そういういろいろなビジネスチャンスが集まる形で、映画という商品が、事業が成り立つようになってきたという意味では、今後映画事業にますます参加される一般の方あるいは企業の方、ぜひ意欲的に前向きに取り組んでいただければありがたいなと思っています。

とりあえずこんなことで僕のお話は終わりにさせていただきます。どうもありがとうございます。

どうもありがとうございました。企画の重要性、当然作品の開発以前のプロデューサーの重要性、こういうことをご指摘になったわけでありますけれども、そうなりますと、スキーム的には開発の初期の段階でどうやって投資をしていくか。いってみますと、知財信託というような知財が成立する前に、ないしは知財の目がある段階でどのように投資を促していくかということが、スキームとしては問題提起されることになるのかもしれません。

それでは次、福田さん、お願いいたします。

ソニー・ピクチャーズ、福田です。こんにちは。今日は壮大なテーマに対して、私の役割発揮かあるかどうか、いささか自信がないのですけれども、ハリウッド映画会社に身を置くものの右代表ということでは当然あり得ませんで、私が長年映像エンタテインメント、日本の映像エンタテインメントに関わった経験を生かして、このパネルディスカッションで話が深まっていけばと思います。

外部資金の導入ということがメインテーマになっていますけれども、それ以前に日本において映像エンタテインメント、お客様が払う映像エンタテインメントのマーケットがどういうものなのかというのを数字でまとめました。時間的に数字が続くと眠くなりますけれども、タイトルが「日本映画対ハリウッド映画」ということで、ゴジラ対ガメラみたいな感じで壮大なテーマですけれども、これは必ずしもハリウッドを見本にして、日本映画を成立させるということではないのですが、やはりハリウッドは80年間の歴史を持った映画産業の拠点であり、私も1人の日本人としてハリウッドの関係者と語ると、そこには80年なりのノウハウもありますのでいま現状での日米のマーケットの違いについてご説明させていただきたいと思います。

いろいろな切り口で文化庁さんもエンタテインメントビジネスのマーケット性が自動車業界を抜くとか、そういう記事をよく新聞とかで見るのですけれども、実はお客様から払う映像エンタテインメントの総額というのは、私どもの調査では1兆1343億円です。ここには実はNHKに支払っている受信料というのは入っていないのですが、これを6000億くらい入れますと2兆円弱というのが広告収入に頼っている民放の収入を入れない映像エンタテインメントのマーケットだと思うのですね。

これを見ていただくと、もうこの数年でトレンドが変わっていまして、ほとんどDVDの出現によって、昔映画会社はビデオメーカーやなにか、ハリウッドスタジオも含めて訴えたものなのですが、必ずしもこの業界、すごく頭のいい人が20年先を見越して引っ張っていっているんじゃないんだなということがわかると思うのです。今や映画会社もビデオ販売会社といいますか、ビデオの売り上げか約2倍以上あるわけですね。このトレンドというのは非常なスピードでいま進んでおります。

また、このパイチャートを見ていただきますと、洋画対(邦画+アニメ)と書いてありますけれども、洋画が、これはテレビには入っていませんが、4131億円、約6割に対して邦画、アニメ含むものが4割と。こうなってきますと、実は数年前のイメージでは7〜8割方がハリウッド支配だったのですね、日本のマーケットが。ところが、それがアニメはもう数年前からブームになっていますけれども、邦画も非常に、先ほどの宮島さんの話じゃないですけれども、元気でありまして、もう4割くらい、下手すれば、これは五分五分、本当はこのパイ自体の広がりもありますので、そういう意味では成長分野だというふうに認識しております。

また、この洋画の日本における映像市場規模の調査をいたしまして、これも必ずしも新作だけじゃなくて、特にDVDとかテレビなんかはリピートなんかがパッケージされていたりしますので、必ずしも新作だけのフローとはいえないのですが、約5000億円の産業になっているだろうと。これも如実に表われているのが、全体構成でいいますと、6割近くがDVDとレンタルビデオ等々で占められている。映画そのもののマーケット性というのは、最初は劇場だけだったわけですね。ビデオが出た時、先ほどのタイムシフトマシンで劇場を脅かすものだといった認識が30年前あったわけなのですが、いま非常にシステマティックになっていまして、こういったそれぞれ期間を置いて露出することをウィンドウと呼んでいますけれども、基本的には作品の大小によって多少違うかもしれませんが、ハリウッドのものなんかは劇場公開して、だいたい4カ月から6カ月くらいでTSUTAYAさんとか、そういうところで、借りることができたり、買えたりする。1年くらいたちますと、スカパーとか、WOWOWで見られるようになる。こういった構造になっています。

アメリカとの比較でいいますと、もうこれは圧倒的なのですね。もちろん人口比ということはあろうかと思いますが、ざっくりいいますと、アメリカは、劇場、DVD、テレビ、合わせますと8兆円規模ありまして、それに対して日本は先ほどのNHKを除く1兆1000億円ですから8倍ですよね。人口が倍違ったとしても、4倍くらい違うわけですから、それくらいもともとのポテンシャルが違うという、数字上の事実ですね。

それをもう少しユーザーからわかりやすいようにブレークダウンしたのが、この右のほうにありますけれども、まず劇場映画市場に関しては、日本が2000億に対して、これは2003年のデータですけれども、アメリカは約1兆円近いということで、アメリカの5分の1。

特に、ここがわれわれ映画関係者として忸怩たるものがあるわけなんですが、入場料が高いんですね。アメリカが今、ここ2〜3日の報道ですかね。劇場があまり、『スターウォーズ』の影響かもしれませんけれども、ヒットがないなんていう記事が出ていますが、しかもアメリカの劇場の入場料がちょっとだけ値上がったんですね。それでも100円換算で計算しますと、日本が当日券1800円に対してアメリカは600円ですから、3倍するわけですね。これを1人当たりにしますと、それでも半分くらいということで、あと鑑賞本数が全然違うんですね。アメリカが約6本に対して日本は1本欠けるくらいということであります。

また、DVDマーケットで、ホームエンタテインメントの市場におきましては、アメリカの4分の1くらいの市場なのですね。ただ、これは猛烈な勢いでDVDのプレーヤーとかハードディスクについているDVDプレーヤーが急速に伸びていますので、これはハードの事情によってもうちょっとマーケット性の追いつき方は日本が今、急速に追いついているという状況だと認識しております。
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