文化庁主催 第3回コンテンツ流通促進シンポジウム
日本映画界は、ハリウッド映画並みの大作を作れるのか?−外部資金の活用を考える−

2005年7月13日 国立オリンピック記念青少年総合センター(カルチャー棟大ホール)
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パネルディスカッション

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まず、先ほど新藤さんのお話ですけれども、ご無沙汰しております、お久しぶりです。新藤さんのお話、すごくごもっともなお話で、実は僕も新藤さんと同じようにインティペンデントなプロデューサーを13〜14年やっていたものですから、制作プロダクション、制作会社の痛みというのは非常にわかりまして。

ただ、まずは成功報酬ですね。成功報酬に関しては、僕がインディペンデントなプロデューサーをやっている時からちょうど作品名を出すと、『私をスキーに連れてって』からだったと思うんですけれども、あの時から成功報酬制を取り入れてもらったんですね。制作出資はフジテレビ1社ということもあったんですけれども、制作費がオーバーすることというのは、してはいけないんだけれども、やはりいろいろなアクシデントの連続があるので。

ただ、さっき新藤さんがはっきりおっしゃっていたのは、やっぱりそこを制作費のオーバー、バジェットする部分というのは制作プロダクションが背負わなきゃいけない。ただし、成功報酬制度もきちっとされていないみたいな感じで、僕が制作プロダクションをやっていた時代から、一応協議風にはしてもらっているんですね、契約上は。だから、もちろん天変地異、アクシデント、どこまでアクシデントなのかというのはもちろんあるわけですから、ただそこは制作委員会という委員会制度がだいたい通常映画の場合はあるわけですけれども、制作委員会である中の幹事会社である松竹なら例えば松竹が制作プロダクション、自分のところでもちろん請け負うというケースもありますけれども、あるいは外部の制作プロダクションに制作委託してお願いする場合には、いま間違いなくその痛みがわかっている僕自身としましても、間違いなく協議事項ですね。制作バジェットオーバーに関しては協議の上という項目と、ロイヤリティですね。成功報酬というのは契約上、きちっと明記して、儲かったらみんなで豊かになろうよという体制にしています。

そのことはちょっと申し上げておきたいなというふうに思ったんですけれども、それは当たり前のことなんですね。だから、そこはまず確立されて、その上でどうすれば安心して投資できる、一般の人も含めて投資が映画という商品に対してできるかということを、新たにそういうケースが増えていけば、映画界がもっともっと活性化していくのになあというふうに思います。

それともう1つ、開示の問題がありますよね。宣伝費、さっきカルチャーの吉村さんのお話があって、宣伝費をどれだけかけるかという。それはケース・バイ・ケースなんですけれども、制作費以上にやっぱり宣伝費をかけた方が当たる映画もあれば、通常の宣伝を今回は全部やめて違った方向性、違った宣伝戦略で宣伝しようというケースももちろんあります。ただ、なかなか通常の宣伝という、ある宣伝プランに則った形での宣伝がまだまだメジャー会社の、僕自身含めて多いと思うんですね。だから、宣伝に関しては逆に発想をがらっと変えて、生きた宣伝費をどういうふうに使っていくかという使い道も含めて、投資家の方々がこういう宣伝戦略だったらわかるというところもやはり提示しながら、投資を仰いでいきたいなというふうに思います。簡単ですが、以上です。

ありがとうございます。どうぞ福田さん、お願いします。

私、手短に。もう20年近く前になるんですが、私が映画会社に就職したいというふうに隣近所に言いましたら、「そんな斜陽産業やめなさい」というふうに近所の人から言われたんですね。ところが、20年たったらマルチメディア化がいっぱい進みまして1兆円産業になっていたということですので、その時に思ったんですが、やはり好きなことをやるべきだと。

僕はいつもそういうことを言っていましたら、あなたよりも黒沢明さんがもっとちゃんとそのことを言っておるということで、この間ある映画関係の方に黒沢さんの本をいただきましたら、「若い人へ」ということで、映画が好きな若い人へ、それを好きだと思ったら大切にしなさい、それが大切だと思ったら努力しなさいということをおっしゃっていて、まさに僕はもう子どもの時から映画が好きで、こういう業界に関わって幸せであると同時に、もっと日本映画が、日本の中で洋画も邦画も含めて活性化するような、そういう一助になりたいと思っていますので、皆さんで盛り上げましょう。

ありがとうございました。以上です。

土井さん、お願いします。

資金管理ということでございますが、当然ながら一般の投資家から資金を集める際には、要するにコスト、それから収入、どちらもすべてをガラス張りの形にしていかざるを得ないだろうというふうに思います。ここがしっかりしていないと、投資家に対する忠実義務は負えないということになろうかと思いますので、この辺の情報開示については当然、まず資金を集める時点、それから完成した時点、それから興行、それからその後の収入が入ってきている時点、要するに経過時点、それと最終。こういう各段階に応じての情報開示が非常に必要になってくるであろう。

もう1点、情報開示について申し上げると、リスクファクターですね。これをどういうふうにちゃんと出していくのか。現在日本においては、皆さんからお話がございましたように、データがなかなかございません。この辺はぜひ今後データをどんどん蓄積していかないといけないわけですが、現状においては、新藤監督であるとか、佐々木史郎さんもいらっしゃいますが、その辺りの方々にその辺のリスクについて、頭の中にある知識をどんどん出していただくということは非常に必要になってこようかと思います。

そうすることによって一般の方から資金が調達できるということになれば、これはインディペンデントの制作会社の皆さんも、ご自分ですべてのビジネスモデルを構築できるかもしれない。これをぜひ信託勘定という、これもガラス張りの仕組みを使ってやっていただくと非常にありがたいと、自分の宣伝をして終わらせていただきます。

ありがとうございます。最後に私のほうからお話をしますが、会場のほうから実は沢山の意見が出ておりまして、紹介させていただくのをいくつかしたいと思います。

今日のテーマと直接関係ないようなところもあるんですが、映画を作るについてはクオリティをどう拡大するか、大作映画を作る必要はないのではないか、日本の文化に合った映画を作っていってその市場性を考えればいいという意見があります。それを作り上げるのは結局人材なんだと。

それから学生さんの意見の中では、やはりプロデューサーとしての養成プログラムを確立すべきではないかという趣旨の質問、意見もあります。

それから、こういう映画をどういうふうに評価するかというような問題に女性の委員がいないのはいかがなものかと、こういう発言もありまして、まさにそれはそのとおりだろうというふうに思います。

それから、知財の組み立てについてはいろいろな段階でのご意見があるようでありますが、これは省略させていただきたいと思います。

それから、こういう評価の手法を少しずつ確立していくということは他の分野でも、特にゲーム会社さんだろうと思うんですが、ゲーム会社のこれはやはり開発投資という点では映画とひけを取らないくらい大きな資本がかかるようになっておりますので、こういう手法を確立して信託に結びつけるようなビジネスを構築するステップにしてほしいという趣旨の発言などがあります。

それから、やはり情報をきちんと開示するということが求められているんだということを指摘されているのが複数件ございまして、やはりこれは競争だと私は思うんです。どんな情報をどういう方法で投資家に開示するかということは、次の段階における投資家、投資家は実は信託会社、例えば信託会社から見ればお客様でありますから、お客様に対してどういう情報を提供して投資をしていただくかということは、これは競争しなきゃ本来はいけないのだろうと思います。

信託契約の中にどういう形で情報を提示しますよ、供給しますよということはもちろん盛り込めるわけでありますが、それはもうもちろん投資家に対する1つのサービスでありますから、そうなりますと、やはりこの分野でファンドを作る事業をする。1つは信託会社というのが新しい受け皿としてあるわけですから、そういうものが沢山、沢山といいますか、複数会社が生まれてもらって、それでその会社間で競争をして、情報の開示についても競争していただく。こういうことがやはりできないと、螺旋階段を上がるようにみんなが利用するというものにならないと思うんですね。

ぜひ、そういう形でここに来てくださっている方々の中には、次の投資というよりは、信託会社を設立しようという会社もあるかもしれませんので、ぜひぜひ今、私どもは、私は今、発表がありましたように、1つにチャンスであることは間違いないと思います。そろそろ実写映画のチャンスではないかなというふうに思います。というのは、私ども個別的な案件で相談を受けていると、そっちの方向に進んでいるなと。アニメよりも実写のほうに契約関係が進んでいるなというのがだんだんわかるものですね。

そういう点からいいますと、知的財産、著作権信託、ファンドの形成、日本の映画産業を拡大し、日本の文化を外に出していく。こういうチャンスが近いところあるのではないかというふうに思いますので、ぜひ業界の方々頑張っていただきたいと思っております。一視聴者として沢山沢山楽しい映画、映像を楽しませていただけるようにお願いしたいと思います。

また、文化庁のほうでは次の研究も重ねてやるようになっておりますが、今回の資料で発表できなかった中では、この報告書(※)である程度まとめたものがございますので、全部発表しきれませんが、これを参考にしていただきましてビジネスのお役に立てばと思っています。

今日は拙い司会、コーディネートで申し訳ございませんでした。お役に立てば幸いです。どうもありがとうございました。



※コンテンツ評価・ビジネスモデルに関する調査研究報告書
https://www.bunka.go.jp/1tyosaku/pdf/16_contents_report.pdf
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