文化庁主催 第3回コンテンツ流通促進シンポジウム
日本映画界は、ハリウッド映画並みの大作を作れるのか?−外部資金の活用を考える−

2005年7月13日 国立オリンピック記念青少年総合センター(カルチャー棟大ホール)
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パネルディスカッション

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どうもありがとうございます。今、ご指摘のあったところにもなりますが、映画を作る場合に原作と映画の関係、ないしは旧作と映画の関係、それからキャラクターと映画の関係、それから次にどういう利用ができるかという発展形態まで含めて、権利関係がもちろん一元化されていて、それも内外一括して窓口が設定されていて、最大限の利益が図れるようなサービサー的な活動もきちんと保証される。

こういう状況が生まれていればいいのですが、しかしまったく新作から、まったくプロデューサーがすべてを統括してやるという新作バージョンであれば、これはそれも可能なのかもしれませんが、その場合でありましても、人格権的な処理が一元化されているか、もうこれは契約上で一元化するというわけには実はいかないわけなのですが、制作過程の中でそれが保証されるかどうかというような点も含めますと、これは確かにかなりのチェックポイントをチェックした後、そしてその後に次は会計的な、ないしは管理的な、そして作品の市場的な価値、こういうものに移っていくわけでありますので、ベースにはかなり評価に入る前の、具体的な評価に入る前の権利の一元化というようなことが求められる。そして、そのことがトラブルになって、現実に訴訟になる場合もある。日本の場合は件数としては少ないと私は思っていますが。

そういう視点で会場からのご発言があれば、参考になるようなご発言があれば挙手をお願いしたいと思うのですが、いかがでしょうか。

よろしいですか。よろしいでしょうか。それでは、次にビジネスモデル、評価とも関わってくることがあると思いますが、ビジネスモデルの構築というところで、テーマの2番に移っていきたいと思います。いくつかのビジネスモデルの紹介は言葉だけですけれども、いくつかいま挙がってまいりました。

ビジネスモデルの最も日本で普及しているというパターンは、まさに制作、民法上の任意組合である制作委員会方式で資金調達をする、こういうことだろうと思います。先ほどの土井さんが紹介してくださった例も、制作段階ではこの手法を使っている。でき上がった映画について、著作権信託に切り換えて流動化している。こういう、ある意味では2段階的なスキームで開発と流動化というものを行なっているということになります。

こういう形での拡大は、今度の信託業法で十分に適用されるのではないかと私も考えています。その場合に知財、それから著作権、そういうものが確実であるかという点が非常に重要だろうと思います。

会場からのご発言もできればいただきたいと思いますが、1つ指摘させていただきますと、先ほどの考えましたネタと構想、これは著作権としてなかなか難しいだろうと思いますが、確かに企画書だとか、特に脚本だとか、ましてや原作などがある場合においては、これは明確に著作権で保護され、信託にも載るわけでありますから、この段階のものを将来の映画になった場合にはどうなるだろうかということを想定して、そして初期の段階の著作権を信託していく。また、それが映画になった場合には、さらにその映画は信託の対象になって流動化になる。こういう2段階論もあるかもしれません。

そういうスキームで開発するということになるのですが、1つは資金をプールしてしまって、一般投資家から資金をプールしてしまって、そのプールされた資金の中から運用していって知財を作っていく、著作権を作っていく。こういうスキームでは、もっと大きなビジネスが可能なのではないかと私どもなんか考えますが、こういうスキームの方向というのはいかがなのでしょうか。可能なのでしょうか。土井さん、信託会社のほうのお立場で、そのスキームの可否についてご検討願えないでしょうか。

理論的にはもうまったく可能です。私どもも東京マルチメディアファンド1、2、3と3号やらせていただいておりまして、これは資金を最初にプールして、コンテンツの制作に投資をするというものでございます。

ただ、信託でもこれは金銭信託という形でお金を集めておいて、それの運用を著作物でやるという形でやれば、これもファンドに近い形ということになりますのでできます。ただ、問題は今、日本の投資家の層から見ると、個別銘柄に対してはこれだったら投資してみたいという感じはお持ちになるのですけれども、漠然とJDC信託に預けるかというと、いや、それはちょっといやだなというよりは、作品見てからにしたいなという方のほうが結構多いのかもしれません。そういうちょっと情緒的な問題はあろうかなという感じはします。

スキームの点では、信託業法の12月の改正以降の新制度でなくとも、実は信託銀行が従前から映画ファンドを作ろうとして、金銭信託でやろうと思えばできないわけではなかった。だけど、土井さんのところはその点が専門ですから、そういう金銭信託にして作品を作っていくということも、事業会社が信託会社になるということで道が開けたというふうに、こういうふうに考えていいのではないかなというふうに思います。

その他、一般投資家がリスクを負うためにはどうしても、リスクをできるだけ軽減するためには完成保証のリスク、この点についてもうすでに指摘されているようでありますし、先ほどの肝付さんのお話でも、もうこれが出ていたと思います。完成保証の点につきまして、現在日本の状況はどうなっているのか、ないしはアメリカの完成保証会社にそれを委託することが可能なのかどうか。こういう点について宮島さんでしょうかね。お話をいただければと思いますが。完成保証がかなり重要だというふうにスキームを、一般投資家から投資を集めるためのスキームとしては、完成保証が重要だと思いますが、その点についての今の状況をご説明願えればと思うんですが。

先ほどちょっとお話ししたように、日本ではなかなか難しい状況があると思うのですね。それで、現状は安心してやはり投資していただくと、その作品、特に企画の段階ですね。再三、例えば企画書なりシノプシスなりストーリーなり、あるいは原作があるのだというところで組めないかという場合、余計難しいのは、やはり中心になって動かしていくという。やはり誰がどのチームが動かしていくのだという、そこに人材が必要だと思うんですね。

ですから、それも動かしていく中で完成保証ということが、本来制作委員会という組織ができていれば、その中で今の日本映画の現状は委員会のメンバーがそれぞれのテリトリーの中で、ある完成保証に近いような形ですね。もちろんさっき申し上げましたように、制作管理、制作経理というところ、これをガラス張りに置きますので、毎日のコスト、例えばお弁当代に今日いくら使ったとか、美術費はあといくら残っているみたいなことが出ていくような形で、出資して集まってくださる方々には、今これは紙の上ですけれども、数字の上ですけれども、どれだけどのセクションでもってお金が利用されていて、どれだけ残っているのかみたいなことが一目瞭然になるような決算をとっているのですけれども、なかなか完成保証という形での完成保証会社が日本では確立されていないということ含めて、現状では難しいという状況はあると思います。

はい、ありがとうございます。完成保証の点につきまして、投資家の点からもう1度ご発言をいただければと思いますが、肝付さん、いかがですか。2度目で恐縮ですが。

完成保証というのは幅広い投資家から幅広くお金を集めるためには、多分重要というか、非常に重要だと思います。結局、事業自体が悪意で失敗しないとしても、例えば途中でプロデューサーが病気になられて参画できなくなっちゃったとか、あるいは俳優さんが途中で怪我をされて参画できなくなっちゃった。でも、そうはいっても資金さえ続けばなんとか代替策がとれていくとか、そういった意味でのバックアップが一般化するまではやっぱり必要なような気がします。

誰でもがインターネットを通じてそういう映画制作に投資ができるような世の中になってからであれば、そういったものも情報開示の充実とともにいらなくなるのかもしれませんけれども、市場の発展を後押しするためには、ぜひわが国でも完成保証の制度を、誰が担うかはいろいろな担い手はいると思うんですよ。保険会社さんなのか、あるいは公的な枠組みなのかもしれません。そういったところはぜひ必要ではないかと思っております。

資金調達スキーム開発段階でのスキーム、これについて何かご意見が会場からあれば挙手を願いたいと思いますが、なければ次に移りたいと思います。よろしいでしょうか。質問でも結構ですが。

次に流通スキーム、流通の段階のことを考えてみたいと思いますが、制作された映画がふさわしい最大収益を上げるというビジネスモデル、完成後ですが、この構築をするための重要なポイント、これは何であるかについて、概要でございますが、宮島さん、福田さんのほうからご発言をいただきたいと思います。福田さん、お願いしたいと思います。

先ほどの私のプレゼンテーションでもありましたけれども、映画そのものの投資に対するリターンのあり方というのが、もう非常に長く続いたスキームがあるわけでなくて、ごく数年で急激に変化したリターンの構造が今できちゃっているわけですね。先ほどのマーケット性でいっても、劇場からもらえるお金の倍がホーム・エンタテインメントから来ている。そう考えますと、映画会社だかDVD販売会社かわからないという話になるわけなのですけれども、本来新しいメディアに対しては新しい作品なり、その傾向のものを開発していくというのはクリエイターなり、映画会社の責務だと思うのですけれども、そういった中でもっと若くて新しい考え方がいっぱい出ていると思うのですが、劇場はもうショーウィンドウだ、そこで儲からなくても、そこで話題づくりになれば、それは1つもう広告宣伝の場であって、パッケージメディアで投資資金を回収するというような話が、やはりアニメ中心に非常にこの数年定着してきたと思いますので、やはりいくつかの先ほどのウィンドウ設定をしっかりすることによってリスクヘッジをして、投資に対するリターンの組立を行なっていくというのも、映画そのものを作るプロデューサー以外での大きな役割になっていると思うんですね。

また、ちょっと流通だけじゃなくて、先ほどの一番のテーマにも関わるかもしれませんけれども、そこでやはり作られる映画そのものの信用力の話に戻ってしまうと思うのですが、映画の作られる、先ほどの保険会社が、例えば完成保証したとしますと、そこから見ると、バラック小屋を建てるよりも50億のビルを建てるほうが仕事として成り立つわけですよね。そうしますと、そういう案件がどうしても今の日本のマーケット上だと起き得ないと思いますので、そこまでの保証がなかったとしても、先ほど公的なバックアップの話もありましたけれども、やはりプロデューサーの役割が増えている以上、プロジェクトファイナンスの管理を第三者の公認会計士なり何なりに任せて、透明性のある状態で複数の作品を出していくことによって、そういったウィンドウ設定だとか、ポートフォリオの安定みたいなものを図っていけば、流通に対してもうちょっと一般商品のような見方がされるのではないかなというふうに思っています。

ありがとうございます。会場から、流通スキーム段階における国際的な展開ということでご質問がありまして、従前、わが国の日本映画は日本市場だけを考え、比較的考えていたんじゃないか。むしろ積極的に国際市場、あらかじめ作品を作る段階では、日本の中の配給だとか日本の中のDVD化ではなくて、最初から国際的市場に打って出られるような作品を作る、その点、作る段階からもう国際的市場を考えるべきだという意見がありました。

多分、これは制作委員会方式で日本市場でそれぞれの利用ないしは二次的利用に参画する方々の企業の集まりが開発、映画開発をしていく。こういうことと関連はしているんだろうと思いますが、新しいスキームを考える上で、国際的展開で増収を図るためのスキームという意見ですが、この点については土井さんですかね。むしろ国際的な展開だと福田さんかもしれません。いかがでしょうか。
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