文化庁主催 第3回コンテンツ流通促進シンポジウム
日本映画界は、ハリウッド映画並みの大作を作れるのか?−外部資金の活用を考える−

2005年7月13日 国立オリンピック記念青少年総合センター(カルチャー棟大ホール)
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パネルディスカッション

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どうもありがとうございます。では次に、先ほど言いました新藤さん、いらっしゃいますでしょうか。

日本映画製作者協会の新藤次郎です。最初に日本映画製作者協会といっても何だというふうに思われると思うので、うちの団体はいわゆるインディペンデントの映画プロダクションが集まった団体です。現在、57社あります。その立場から話をさせていただきますけれども、これ、松田さん、1の問題もよろしいですか。

ちょっと触れていただいても結構です。

外部からの投資が映画界の中で機能的に働くようにということだという理解だと思うんですけれども、最初の1でありました、いわゆる完成リスクの問題に関して、ハリウッドのように完成、いわばボンド制度があって、それの目利きがいて、きちっとデイリー、ウィークリーで会計監査をする方がいてというようなシステムというのは、当然コストがかかるということでは、大きいバジェット、100 億以上のバジェットでしたら、当然そういったことは必要になってくると思うんですけれども、現状の日本の制作の状況をいいますと、われわれプロダクションは自分が制作委員会に参加していようとしていまいと、それは関わりなく、いわゆる制作委員会から制作委託を受ける形の契約をします。

どういう形の契約かというと、プロダクションが完成保証をするという形の契約書なんです。これは最初にいわゆるシナリオがあって、スタッフ、監督をはじめスタッフがあって、キャスティングがあって、スケジュールがあって、予算書があるという状態で契約書を結べれば一番いいんですけれども、なかなかそういう状況にはないのも事実です。いわゆる、そういうパッケージが確定する以前に契約書を結ぶケースもあるんですけれども、予算がはみ出ようとはみ出まいと、それはプロダクションの責任です、スケジュールがどうであろうと関係ありませんよ。とにかく完成させて納品させなさいと、期日までにと。これがわれわれの今、プロダクションでは大変問題を生みやすい契約書の形態にはなっているのは事実です。

逆にいえば、外部の資金を投下する方にとっては、これは都合のいい契約書だと思うんですよね。プロデューサーあるいはもしくはプロダクションが機能している間は、完成責任を負っている。現実論でいいますと、制作に取りかかって、いわゆるクランクインしたらということでいいますと、90%以上が完成させちゃう状況にはいるんで、制作現場のほうからいうと、完成リスクというのは、先ほど言った基本的なパッケージが契約書に盛り込まれた完成保証契約書があるならば、もう完成しちゃうというふうに思ってもらってほとんど間違いないという現状ですね。

1点、その報告書にもありましたけれども、クオリティを保つならば完成保証契約書があってもいいんですけれども、いわゆる成功報酬型の契約がそこにパッケージでなされていないと、利害が一致しない。要するに、いいものを作った時にプロダクション自体にメリットがあるという共犯関係がないと決して、これはソフトですから、いわゆる強いソフトにはならないなというふうに思っています。このことが報告書に書かれていると思いました。

もう1つ、2番の全体にはディスクローズの話だと思うんですけれども、現状の日本マーケットの中ではウィンドウ論という話が先ほど説明があったように、興行をやって、パッケージを売って、放送するというのが基本的にウィンドウですけれども、ほとんどのソフトの価値を決めるのが最初の興行時の売り上げだと思われますよね。これはほかの産業では製品、パッケージもそうですけれども、製品があって卸があって小売店に行って、どれだけの個数がそこに行って、売り上げがどうだったということは確認できるわけですけれども、映画の場合にはいわゆる消費サービスのために、消費しちゃったらばそれでもう確認ができないという特性がある。そのために興行の客観的な確認ができないんですね、興行売り上げの。これは誰も証明できないんですよね、実は。

興行会社が自分の窓口でこう売りましたよと行ってくれるだけなんですよ。これがよくハリウッド並みの大型投資をという議論のところで議論にならないのが、大変不思議なんですよね。

昔、日本には入場税という制度があって、これの是否論はともかくとして、税務署が裏にハンコを押したチケットでやっていたわけですから、仮に、まがりなりにでもとにかく正しい数字が出ていた。だけれども、いま吉村さんのお話にもあったように、業界内で興行がいくらですよというのとどうも違うということは皆知っている。だけども、それがどれくらいの違いだというふうなことはわからない。こんなものは評価システムという最低限のパイが不確かだという話なんですから、駄目だろうなというふうに私は思っちゃうわけですよね。

ちょっと前、経産省の委員会なんかでも案を出して、それは最終的に案としては残ったんですけれども、最低限コンビニのAOSシステムみたいなものを窓口で管理すべきだと。でないと、いわゆるマーケット動向がどうである、この映画はどの劇場でどの時間帯にどういう年齢の人がどれくらい入っていくかみたいなことが、企画開発に欠かざるを得ないものなんですね。特に大型企画だったらそうだと思うんですよね。

そういう情報を共有できることが、いわゆるハリウッド並みの大型作品を日本でもということになるんじゃないかなと、私は思っています。

ありがとうございます。報告書の中にも少しあるんですけれども、制作に関わるいろいろな方々が成功報酬ベースで合意をきちんとする。こういうことによって、制作に対するインセンティブが高まるのではないかという意見があるわけです。しかし、それを確実にするためには、やはり長い場合にはもう何年も収益の事業が続くわけですけれども、そういうことをきちんと管理し、なおかつそれを検証できるデータを見られる、見ることができる。こういうことの保証がないと、あまり意味がないわけですね。

そういう意味で公認会計士さんの報告とか、さらにはオーディットのグループの確認とか、そういったものの制度を作っていくということ、ないしはそういうものを自ら保証して、こういう形でやります、会計事務所はここでやりますというような形で制作段階からどんどん出していく。そのことによって、2つの効果が表われる。それは外部投資と成功報酬ベースでの契約の参加、制作の参加、こういうことができるのではないかというふうに考えたところも、報告書の中ではもちろんあるわけであります。

それについて関連して、ご発言等があれば聞いておきたいと思いますが、よろしいでしょうか。いいですか。

それでは制作者の立場ではなくてもう一方、日本シナリオ作家協会の金さん、来られておりまして、映画制作の場合にはシナリオはクラシカルオーサーとして権利が保障されているという立場もありますが、映画制作全体としてスキームないしは評価の方法等について、ご意見があればお聞きしておきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

日本シナリオ作家協会の事務局の金と申します。私もちょっと緊張するタイプなので、座ったまま失礼させていただきます。

まず、1つ問題としてよく制作側の、映画会社さんのほうから、著作権管理というのは面倒な部分も多いので、映画会社のほうに権利を1つ一元化してやる方法はどうかという話なども聞くんですけれども、これについてちょっとお話ししたいと思います。

まず当初の契約で著作権管理を映画会社に委ねるということは、確かに使う側の映画会社の方からすれば大変便利な方法であるとは思いますけれども、もしそういうような時代が来るとすれば、私ども原権利者のほうも1つにまとまる必要があるのかなというようなことを考えています。

現在は小説の原作のほうで文芸家協会さん、また同じ脚本の管理で日本脚本家連盟さん、私どものシナリオ作協というのが文芸の分野ではございますが、もし映画会社のほうで一元管理ということになるのであれば、私どもはやはり少なくとも3つは一緒になってクローズドユニオンとか、そういったこと方向性があるのであれば、そういうこともなくはないのかなというような感じを持っております。

が、現在の状況において、その一元管理を映画会社にお願いするということに関しては、私どもは反対の意見を持っておりまして、といいますのは、やはり当初の契約において一個人である脚本家と、発注元の企業である映画会社というのはやはり力関係が明らかでありまして、真にフェアな契約というのがなかなか実現する状況にはございません。現在でも当初の契約の原因でトラブルになるケースというのは結構ございまして、事務局のほうにもよく相談というのがあります。

昨年の4月には改正下請法が施行されまして、脚本家も情報成果物の下請け業者の1つというような位置づけにはなったんですけれども、気持ちの中では下請けといわれることに抵抗のある脚本家というのがあるとは思うんですが、実際現場上の立場では、一部の方を除きまして、明らかに下請け的な状況にあるということは1つ事実としてあると思いますし、現在のところではこの下請法以外に映画会社と、当初の契約の時ですけれども、脚本家の立場を援護射撃してくれるようなものというのはなかなかないような状況にあります。

長いお付き合いさせていただいております日本メジャーの集合体である映連さんでさえ、拘束力の強い団体協約の締結ということは、ちょっとまだいまだ実現しておりませんし、ある意味、米国のようにクローズドユニオンでもない、私ども団体の立場も微妙でございますので、対等な立場で交渉してフェアな契約を実現するということが非常に難しい日本の今の環境においては、最初の契約ですべて映画会社に一任するということは著しく著作者には不利になってしまうのかなというような危惧を持っております。

はい、よろしいでしょうか。

それから、今回流通について阻害しているかどうかという話もあると思うんですが、私ども著作権の管理事業者としては、新しい利用について代表的な利用者の皆様方ときちんと協議をさせていただいてから料率を決めるということをこれまでも行なっておりますし、応諾義務のほうも負っておりますので、許諾拒否をして流通を阻害するといった心配もまったくないと思いますので、現在の仕組みの中でやっていく方法というのがやはり一番現実的なのかなというふうな考えを、今のところは持っております。

先ほどの問題ともちょっとリンクするんですが、完成後に流通におかれて、そして開発段階ですべての決済をするのではなくて、その部分はむしろ小さくしておいて、そして成功報酬ベースで成功した場合の成功報酬ベースで支払いをするという組み立て方式、これは制作しやすく、なおかつインセンティブを付与するという点でメリットはあると思うわけですが、しかしそれは特に海外に出る時にすべてつながった、契約関係がきちんと処理されているというふうに繋がって、はい、だからいま一元的にある会社がある部分が外に出せますよ、ライセンス出せますよというようなことがはっきりできなきゃいけないわけですし、そうすると何か権利が残っていて、何が権利が残っているということで、それが曖昧なものが残っているとなかなか高く売れない。むしろ、それがマイナス要因で安く買われてしまう。こういう現実も、実は私はあるように思います。

したがいまして、やはり成功報酬ベースとか、それから権利を残しておいて後で処理をすることも決して悪くはないわけでありますけれども、そこのところをはっきり残す。はっきり権利処理がどういう条件でできるのかということを示しておいて、そして障害にならないような方法をやはり考えていかなきゃならないんだろうというふうに、私は思っているところであります。

時間は少し押していますけれども、会場からご発言をいただくところで、そろそろしめていかなきゃならないんですけれども、結局最後の段階は資金の透明性とか管理とか、情報開示とか、こういうことを含めて確立していかなければならない。そういう点で大変制作者側にも重たい責任を負っているわけであります。

この点なども含めまして、最後、お三方のほうから総括的な意見を頂戴できればといううふうに思います。順次、宮島さんのほうからご発言願えませんでしょうか。3分程度でよろしくお願いいたします。
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