文化庁主催 第3回コンテンツ流通促進シンポジウム
日本映画界は、ハリウッド映画並みの大作を作れるのか?−外部資金の活用を考える−

2005年7月13日 国立オリンピック記念青少年総合センター(カルチャー棟大ホール)
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パネルディスカッション

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DVDセルも、これも以前に比べて一本5000円前後したものが今3000円くらいで、場合によっては新作でも3000円ちょっと切るような洋画のメジャータイトルがありますけれども、これもアメリカと比較すると約1.5倍くらいと。ただし、なぜかレンタルだけは、アメリカよりかちょっと安いといいますか、ほとんど変わらない400円くらいと。

圧倒的に違うのが、テレビマーケットなんですね。ここに何か日本の映像マーケット、有料マーケットとしての構造上の問題があるのかもしれないのですけれども、やはり日本は無料で見られる地上波がもう圧倒的に面白いということがありまして、アメリカの場合、ケーブルが普通に浸透していますから、ケーブルにお金を払うということは、それで有料で映像を見ているということなので、この規模がもう5兆円あるわけですね。これが圧倒的な映像資質としての差になっているということでございます。

日本映画の活性化策というほどのことはないかもしれませんけれども、3つの「イ」でいいますと、インフラ、イノベーション、インベストメントということで、今日のテーマはこの一番最後の投資商品としての映画、流通性がある商品としての映画ということなのでしょうが、やはり僕はそれ以前にマーケット性みたいなことをもう少し認識して変えられることは変えていったほうがよいのではないかと思います。映画日常化計画とわかりやすいようにキャッチフレーズにしてみたのですが、映画が日常化していないのですね。

普通に大学生がデートで行こうと思ったら、2人で3600円かかるわけですね。そこへさらに食事したり何なりすると、1万円近くかかっちゃう。そうすると気軽に週末のデートで映画というわけにはいかないわけです。アメリカですと、2人で行ったって1200円ですから、うちでレンタルDVDを見るか、映画館に行くか、さほどイベント性として変わらないし非常に日常化していると思うのですね。ですから、映画を日常化させるということが、映画業界人として一番急務ではないかなと。

ちょっと写真に出ているチラシはわれわれ洋画の団体、邦画の団体、映画の業界団体で映画館に行こうキャンペーンというのをやっていまして、前回シニアの方々に限って割引をやったのですが、いま若い方、中学生、高校生の方があまり映画館に行ったことがないのですね。これも私がいろいろ聞きましたら、私なんか小学校の頃は先生が引率して映画館に行ったりしたものですが、最近は途中で交通事故あったらいかんというのであまりないそうですけれども、3人高校生が集まると1人1000円でいいですよと、「高校生友情プライス1・2・3」という、こういうキャンペーンを今月、7月1日から始まりまして、1年間やりますので、皆さん映画館の前で高校生が束になってくれば、少しは映画日常化計画実現になるのかなという、こういう動きが1つあります。

もう1つは今、レンタルビデオ店は非常に活性化しているし、若者のツールとしてはいいわけなのですけれども、一方で郊外化、大型化しています。これはもうちょっと身近にならないのかということで、コンビニエンスストアを使ったようなDVDレンタルの実験が、まだ小規模ですけれども、都心で始まったり、これは会員制なのですけれども、DVDレンタルをネットで予約して郵便で返すというようなサービス、これもアメリカから始まったサービスなのですけれども、これも非常に何社さんかで始まって好評だと。そのDVD料は月額1500円から3000円くらい、いろいろなコースがあるのですけれども、加入すると、リストの中から選んでいいんですね。それが郵便で送られてきて、見終わって返せば次が借りられるという、こういう方法で家から出なくても新作DVDを見ることができる。これも非常に映画日常化には、いいのではないかと。

あとはさっきもいわれていますような、いつの間にか、ファイバー大国になってしまった日本なのですが、こういった高速回線を使った映画の配信、これも有線ブロードさんはじめ毎日、新聞を賑わせていますけれども、非常な勢いで普及していますので期待できるのではないか。これがインフラ面での施策として、本当はもっと100 アイデアがあるかもしれませんけれども、それは後ほどのパネルディスカッションに譲るとしまして、1つありますね。

2番目がイノベーションということで、これはよくいわれて一番難しいことなのですが、映画コンテンツ制作をするにも同じメンバーばかり、業界全体、そうですね。制作者の方、宮島さんのほうがお詳しいと思いますけれども、そんな数千人も恐らくこの業界人っていないと思うのですよね。ですから、非常に閉じられた世界だと思いますので、やっぱり若手がなかなか育っていない。今、当社でもいろいろな機会でぴあのフィルムフェスティバルにいろいろ協力させてもらっていますけれども、いくつかしかそういう登竜門がない。

ただ、出てきた方なんかはその後、地上波のトレンディドラマを監督されたり、その後、またメジャーデビューされたりというような道もできつつありますので、そういった制作者の育成に対して、もうちょっと何とかできないのかというのと、一時期アニメがブームになったものですから、どうしてもアニメアニメとなった時期があったと思うのですけれども、やはり韓国の今の勢いを見ますと、当然ナショナリティなんて感動とか、そういうエモーションに関係ないわけなので、自分たちの得意分野、もう日本のドラマでもいいわけなのです。漫画などは『のらくろ』以降、これも80年の歴史がある日本の文化ですよね。こういったものを生かして、もうちょっと映画コンテンツに生かせるようなことというのは活性化ができないだろうかというが、イノベーションとして挙げられるのではないか。

また、商品としての映画というのが、今日の主題と聞いていますけれども、投資環境の整備。この辺りは土井さんが日々いろいろご努力されている部分なので、私はあまり専門家でないのですけれども、今回の調査研究会を通じて自分なりに勉強させてもらったところもありますので、これはやはり制作委員会方式もいいのですけれども、一般の方が、リスク要因みたいなもののディスクロージャーも必要だとは思うのですけれども、普通の商品として映画とか映像エンタテインメントがある状態にすることが大事かなと思っています。

また、こういったことを、「きわもの」の商品ではなくて、リスクの高い商品ではなくて、わかっていただくためには映画のマーケット性、これは博打や趣味のアートの世界じゃないということをわかっていただくような啓蒙活動ですよね。例えば、毎年フランスで、カンヌ映画祭というのは有名でありますけれども、その前にMIPというテレビの流通のマーケットが毎年あるのですが、これは世界中のテレビ制作者が映像を持ってきて、約5日間ですけれども、盛んに各国の人たち同士で売買をするのですね。これは非常に定着したマーケットで、日本のテレビ局から、ディストリビューターからプロダクションからみんな自分たちの作品を世界に売り込む機会があるのですけれども、こういうものの日本版をやってもいいじゃないか。あるいはそういうものをネットでもっと流通させても面白いかもしれませんし、こういった流通商品としての映画を支援するような施策というものを考えていったらどうかなあというのが、私の考えた活性化策でございます。

だいたい以上でございます。ありがとうございます。

どうもありがとうございます。では、引き続きまして土井さんのほうからお願いいたします。

ジャパン・デジタル・コンテンツ信託の土井でございます。よろしくお願いいたします。冒頭にちょっとお断りいたしますと、今日は映画業界の宮島さん、福田さんがネクタイをしていて、私だけノーネクタイでちょっと困っているのですが、いつもと逆なのですね。ただ、これは私、今日、文化庁さんにお聞きしたら、ノーネクタイで結構ですよといわれたので来ましたので、それだけお断りをまず申し上げておきます。

私のほうからのお話は、資金供給者サイドからの視点ということでお話を申し上げますが、資金提供者というよりは私ども資金の仲介者という形になろうかと思います。

現状、資金の提供の状況、それから問題点、こういったものをまず申し上げますと、先ほど福田さんからお話がございましたけれども、日本の映画、それから映画を含めたコンテンツ、これはアメリカと比較しますと、片や55兆、日本は14兆とずいぶんな違いがございます。これでも日本は世界で第2位のコンテンツ大国といわれているわけでございますが、それよりも何よりもGDA比、アメリカは5%、日本は2%しかない。要するに、まだまだ大きく伸びる潜在的な余地が非常にあるというふうに考えたほうがいいのかなと思います。

加えていえば、インターネット、それからインターネット対応型のモバイル、こういったものが日本は非常に普及してきました。こういったものを使った形でいろいろな新しいビジネスモデル、こういったものが出てこようかと思いますが、そういったものに柔軟に対応する。そのための資金供給が本当にできているのかというふうに見た時に、いま画面のほうに映っております表は、y軸のほうが上に行けば行くほどリスクが高い。x軸のほうは左のほうが間接金融、要するに銀行さんの融資、こういったものでございますが、右のほうが株式市場という状況にございます。

コンテンツの制作資金というのは、どういう金額かといいますと、結構これが制作会社さんの規模に比べると大きいケースがあります。これは何かというと、1つこのプロジェクトが潰れると、その会社がなかなか成り立っていかない。もしくは、企業さんが潰れるとプロジェクトが潰れてしまうケースもあり得るということでございまして、そう考えると、この表の一番左端の銀行の融資、それから右のほうの株式における、要するに株式を購入するわけですが、そういうエクイティ投資、こういったものに向いているかといいますと、企業リスクを取るよりは事業リスクを取った。要するに、プロジェクトだけのリスクを取ったほうが、よりこれは受けるサイドも、それから供給するサイドもいいわけですけれども、ところがこの真ん中にある事業リスクの点線で囲った部分、これがなかなかできていないのが現状でございます。もっといいますと、左下の融資の部分もなかなか融資が出ていないというのが現状でございます。

この点線のところで、具体例で申し上げると、いくつかは非常に先駆的な事例も出てきております。みずほ銀行さんがおやりになっている金銭債権信託を使ったようなアニメファンドであるとか、コナミさんがおやりになったような外国証券投資信託を使った形の資金の調達であるとか、私どもがやっております特定目的会社を使った形での資金の供給、こういったものもございますが、まだまだこの辺が多様化していないというのが日本の現状でございました。

それに対して、先ほどもお話が出ましたけれども、昨年の12月に改正信託業法が施行されました。私ども、先月の6月13日、この信託業務を開始したわけでございますが、これによってツールが少し広がったかなというふうに思っております。

次のページのこの表でございますが、y軸のほうは、これはいろいろな資金を供給する時の仕組みですね。この仕組みを作るための固定コスト、これが高いか低いかを表しております。

y軸のほうは投資家の保護、これの強さ、弱さ、右に行けば行くほど強いという形でございますが、一番左の下のほうにいろいろな組合関連法がございます。これが制作委員会方式とよくいわれる、映画などで資金の調達をする時に使われている方式、これはもう大半の場合が民法上の任意組合でございます。これは業界の中でプロばかりでやるにはいいわけですね。投資家の保護の強さはあまり考えなくていい。コストは安ければいいということで、そういうニーズには非常に合っている。

一番右の上のほう、資産流動化法とか商品ファンド法がございますが、これは投資家保護の規定が非常に強うございます。ただし、コストも非常に高くついてしまう。要するに、投資家のほうに、要するにリクープするラインが上に上がってしまうか、もしくは資金調達するサイドのコストがますますかかってしまうと、そういうことになるわけです。

そういうふうな観点から見ると、知的財産権信託というのは結構バランスのとれたところにあるのかなと。今までこれができなかったわけですが、できなかった時に他の信託を使ってやるよりは相当コストが低くなっている、ということがいえるのではないかと思います。

ただ、こういう資金の供給をやるということになりますと、その裏には当然ながら評価、要するに1つずつの知的財産権を、信託を個人の方に、例えば受益権を販売するというケースでは、その評価が非常に大事になりますが、今日先ほど澤さんが評価研究委員会の報告をされたかと思いますけれども、これは私ども、JDC信託の評価システムのほうを、ちょっとご説明を申し上げます。

私ども、リスクとリターン、この関係での評価をやらせていただいております。制作会社の横に開発リスク、それから商品リスク、販売リスク、こういったものがございます。要するに、本当に完成するのか、途中で作れなくならないかというような開発リスク。それから、その映像作品がちゃんと市場があるのか。今のトレンドに遅れてないかとか、もしくは他の競合する作品に対して差別化できているかとか、それと当然この作品ができ上がった時にはそれをどういうふうに、どういう座組で売っていくのかという販売リスク。こういったものをスコアリング方式によって、われわれは評価をいたしております。

加えてリターンの評価、こちらのほうはマーケットの分析、こういったものを通じていろいろな形でのリターンがどれくらいになるか、評価をやらせていただいて、総合評価につなげている。映画については今日、李さんがお話になってらっしゃいましたが、李さんとか、いろいろな方のお知恵を借りてシネマプロフェッサというリターンの評価システムを作って、いま実験中でございます。

こういう評価を得た上で、いろいろな最適な金融手法をくっつけていく。こういうことが非常に大事になってこようかなと思います。最終的には括弧でちょっと書いてございますけれども、格付け、こういったものももしかすると必要になるかもしれません。

というようなところで、今後どうなるのか。ちょっとあまりいい絵じゃないのですけれども、いろいろな方式があるわけですが、業界の中だけで資金を集めるのなら、これは制作委員会方式、組合方式で十分なわけです。もしくはファンドを使った形でも、これは対応ができます。

ただ、一般の投資家を、要するに冒頭に申し上げたようにアメリカ並みの市場にしていくとなると、これは相当な制作資金が必要になりますし、大手の方々はご自分で調達できるとはいえ、宮島さんがお話になったように、いろいろな違う工夫をするために外部からも資金を集める、もしくは知的財産権のリストラクチャリングをやる。こういうケースでは、一般な投資家を巻き込んでいかざるを得ません。

そう考えてくると、特定の目的会社を作ってそこで吸収する。もしくは今回、信託業法が改正されたおかげで知的財産権が信託できるようになりましたので、こういった方式で集める。ケース・バイ・ケースでいろいろなものを選択していくということが必要になってくるのではないか。一般の投資家のサイドでは、こういう信託、それから特定目的会社、こういったものの出資金、こういったものが増えていくのではないかというふうに思っております。
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