文化庁主催 第3回コンテンツ流通促進シンポジウム
日本映画界は、ハリウッド映画並みの大作を作れるのか?−外部資金の活用を考える−

2005年7月13日 国立オリンピック記念青少年総合センター(カルチャー棟大ホール)
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パネルディスカッション

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これは難しい質問ですけれども、悲観的な見方と楽観的な見方があるんですけれども、島国根性的にいいますと、どうもこの作品は日本で回収できそうにないぞというと、海外の分を入れたら何とか利益が出るんじゃなかろうかという話は、仕事の中で聞くことがありますけれども、逆にいえば、『ポケモン』みたいにアメリカで非常にボックスオフィスの中で上位を占めた作品があって、今のアニメブームみたいなものが来ているんですが、やはり僕は、コンテンツそのものを狙って、その対象に対して収益を上げられる構造を、先ほどのウィンドウの話と同じなんですけれども、ローカルにおいても組み立てるべきだという私見を持っています。

ただ一方で、当社がいくつか日本のアニメの劇場作品に投資したケースなんかでいいますと、日本国内ももちろん利益を出したアニメ作品のケースなんですが、フランスのDVDで想定以上の売り上げが上がったり、アメリカなんかでもいくつかのメディアで収益を上げたりしたケースがありまして、特にフランスにおきましてはDVDだけではなくて、トップ10の中に日本のアニメがトップ10入りすることは多いんですね。こういったものを先ほどの経験則だけじゃなくて、ある種のデータとして、日本映画の歴史として蓄積していけば、海外を目安にしたような投資案件というのはもっともっと増えてくると思いますけどね。

今、ですから逆にいうと、マーチャンダイジング期待のアニメが中心だと思うんですが、コンテンツそのものでリターンがあるような投資というのは今後加速していくと思います。

ありがとうございました。

ちょっと今、アニメのお話がありまして、ちょっと実写チームの代表として実写のお話をさせていただきますと、アニメは今、本当にキャラクタービジネスでいわゆるマーチャンダイジング展開を本当に世界まで広がって、日本のアニメはすごいというのが定着しているんですけれども、実写も追いついていきたいなという中で、まず世界3大映画祭というのがありまして、カンヌ、ベネチア、ベルリンという映画祭は非常にバイヤーが集まる、AFM(American Film Market)含めてですね。そういうところにやはり日本のコンテンツである映画実写をアピールしようということで、松竹なんかブースを展開、もう十何年もしているものですから、そこへ行っていち早く企画の段階からセールスしていく。プレゼンする機会を設けるんですね。

それでなぜかというと、コストが本当に10億を超えるようなバジェットの映画が企画されるケースが非常に増えてきた。そうすると宣伝費を含めて、P&A含めて原価がどんどんどんどん高騰していきますと、やはり国内マーケットだけで2次利用を含めてもなかなか難しいビジネス展開にしかならないんじゃないか。逆にいいますと、やはりアジアに対して例えばハリウッドの熱い視線がある。もちろん、リメークもいま相当数増えていますし、逆にいうと『グリーン・デスティニー』『HERO』『LOVERS』、そういった非常にアジア的な、オリエンタル的な映画がアメリカの全国公開ということで成績も、あるいはアカデミー賞の作品賞ノミネートみたいな評価もされているというところで、今そういう意味では日本の実写が世界に出ていくチャンスじゃないかなというふうに思っています。

それで、例えば『阿修羅城の瞳』を例に挙げますと、日本での企画の段階から3大映画祭を含めて、AFM回って、プレゼンして、やはり公開前に30カ国はもう実は公開が決まっていまして、契約ができているというところで日本の公開を待つという、非常にいい傾向が今、日本の映画にもだいぶ視点が向いてきたのかなという感じはあります。

僕がプロデュースしました『CASSERN』という映画も、どうしても全米で公開したいというふうに企画当初から思っていまして、3社、実は手を挙げてくれる全米の配給会社がいたんですけれども、やはりドリームワークスとやりたいなというわがままがありまして、契約を詰めたのがやはりドリームワークスで全米配給が決定と。今、監督の紀里谷さんがロスへ飛んで一生懸命編集をしているというのが、たった1つの条件が2時間を切ってくれと。2時間20分ある映画なんですね。2時間を切ってくれというのがたった1つの条件で、いま監督は喜んで切る作業に入っていますけれども、そんなような状況で、少しずつですけれども、日本の映画がやはりアジアはもとより、ヨーロッパまでは席巻できたんですけれども、とりあえずアメリカ公開、あるいはアメリカでリメーク、いろいろな感じの形でのビジネス展開がいよいよアニメに追いつく感じで実写も賑やかになってきたかなというような、ちょっと甘いいま発表をさせていただいているんですが。

ありがとうございました。ここで、実はこの流通スキームの点でご意見を頂戴したい方がお二方いらっしゃるんです。一人はカルチャー・パブリッシャーズの代表取締役であります吉村毅さん、これはもうまさに流通市場でものをどういうふうに最大限売っていくかというノウハウの点からスキームを見ていただくということになるのかなと思います。それからもうお一方、日本映画製作者協会の新藤次郎さんが来ていらっしゃいまして、こちらは映画制作者の立場で、流通段階で制作者の立場から見た時にどういう問題点があるんだろうか、という視点でご発言をいただければというふうに思います。

それでは吉村さんから、お話しいただけますか。

はい。私、ちょっと立ち上がると緊張しちゃうかもしれませんので、座ったまま失礼いたします。私は、今ご紹介にあずかりましたカルチャー・パブリッシャーズの吉村と申します。CCCの子会社で映像企画部門をやっておりますが、ちょうど川上と川下の中間くらいな曖昧なところにいる非常に特殊な会社ですので、そういう非常に曖昧な立場にいるからこそわかるような、ポジショニングからお話をさせていただきたいと思います。

まず2つあるんですけれども、両方に共通した話としては、プロモーションということで、特に映画の場合にはP&Aといわれていますけれども、宣伝費が制作費と同じくらい重要な原価的な意味を持ちますので、このコストをどう効率化するかというのが大きなテーマだなというふうに感じております。それは映画の時だけに生かすのではなくて、ビデオグラムの発売時もそれをいかに生かしていくかというのが1つの大きなテーマになると考えています。

1つ目ですけれども、まずは、いつこのP&Aというのが一番大きく使われるかというと、劇場の公開の瞬間に使われるわけなので、この公開の瞬間に映画以外に何かほかにできることないのかというと、DVDの販売というのは、普通ウィンドウで5カ月、6カ月後に発売されますけれども、特定映像だけを抜き出して、それをパッケージにして、映画のP&Aが最大限に投下されているタイミングで売るみたいなこともようやく始まっておりますし、そのような特定映像的なもの、NGとか細切れになったハイライトシーンであるとか、インタビューというような映像をモバイルですとか、場合によってはミュージックビデオだけブロードバンドで流すとか、もしくはサブストーリーだけ作ってテレビで放映するとか、いろいろな、言い方はちょっとレベル低いですけれども、儲け方があるんじゃないかと。

シナジーで劇場の、儲け口ということだけじゃなくて、さらに劇場の収入のほうにもプラスになってくるようなシナジー効果を生める新しいウィンドウが誕生する可能性があるんじゃないか。ということで考えると、プロモーションコストで、つまりP&Aを一番投下されているタイミングに何ができるかというのを考えていくというのが、1つ新しい儲け口を探す方法だなと思っていますというのが1つと、もう1つは今回のリポートの中でも78ページ、79ページくらいに書いてあります情報開示が大事ですというところで、興行収入の情報が非常に不正確で、公称数字と実績が違うので、ビデオ収入の予測に少々疑問が残るというような記述がありまして、なるほどなあと思った次第ですけれども、実際ビデオグラムの押し入れというのは、小売りの場合には興行収入に比例して仕入れていくというのが1つの原則的なルールになっています、それだけではありませんが。

私としては、この興行収入というものに加えて、もう1つビデオグラムの発注において必要な情報があると思っていまして、それがまさに今の宣伝費ですね。P&Aといわれる映画の宣伝費の情報だと思っています。

簡単にお話ししますと、5億円の映画の宣伝費をかけて興行収入が2億円の場合もあれば、逆に5分の1の1億円の宣伝費をかけて興行収入が2億円の場合もあります。同じ2億円なので、普通の発想でいきますと、興行収入2億円に対応したビデオの発注本数しか来ないという話になりますけれども、5億円のP&Aをかけて2億円の場合、一般的には失敗といわれますが、ビデオの市場だけから考えると、5億円分、5倍宣伝している分だけすでに視聴者数が見込めるわけですね。見込み消費者数がいるわけです。

実際の消費者の立場から考えると、宣伝していたから知っているんだけれども、映画じゃなくてもいいや、DVDで見ようと思っている人がいるというのか現実的なところだと思うんですね。そこのところの数字というのが、実際の小売りのサイドには情報がまったくありませんので、1億円のP&Aの時と同じだけの本数しか仕入れられていないというところもあると思っています。情報がないことによるロスであるとともに、見方によればリスクヘッジできるところが情報を伝えられないことでリスクヘッジできてない。

じゃあ、逆にP&Aを使わなくて当たった時はどうなのというと、それはP&Aを使わなくても口コミで広がっていくなり、パブリシティが出るなり、効率がいい宣伝ができたわけなので、それは5億円と同じだけの仕入れを主張するべきだし、店は、仕入れると思いますので、むしろP&Aを公表するということはプラスの部分が映画会社にとって多いはずです。

小売りから考えましても、興行収入、そしてP&Aといわれる宣伝費、それとビデオの発注本数というところを、3つ絡めてマーケティングしたいというふうに考えますし、投資家の部分、あるいは収支を予測する部分でも、この3つの要素を輻輳させて市場予測をできるような仕組みというものを作りたいと思いますので、それについての情報開示のルールとか仕組みがあれば非常にベターだなというふうに思っています。

今の段階では、ジャンル別でだいたい分析ができているということはないんですか。

だいたいわかることはわかるんです。わかることはわかるんですが、それは弊社の場合にはわかるわけで、わからない会社の方はまったくわからないで発注されていますから、業界としては、やはりスタンダードの情報があったほうが、ベターではないかなというふうに思います。
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