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講演


 
   
第一部 特別講演
   
   
「契約面から見たNHKオンデマンドの現状と課題」
   
   
関本 好則 (NHK放送総局特別主幹)
   
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     これは、実は12月1日に始めてからNHKのNODは「見逃し番組」というのと、「特選ライブラリ」というのがありまして、見逃し番組というのは放送してからその次の日ぐらいから10日間ぐらい、最初は1週間だったのですが、10日間ぐらいで見たものをいいます。それでいいますと、これはアクセス順に並べたのですが、1位、マイケルジャクソンというのがありますが、ほかは大河ドラマ『天地人』と、Nスペでほとんど占められている。異色なものとして海外購入ドキュメントの『ヒトラーの野望』というのが7位に入っていますけれども、ほとんどが大河ドラマとNスペというふうに50位まではなっている。これでは分析にならないので、こういう、大河ドラマはとにかく一番見られた1回だけでまとめてみて、そういうふうにシリーズのものは1本目だけにして並べてみたものがこれで、こういうふうにして見ますと、やっぱり大河ドラマ、Nスペ、海外ドラマですが、やっぱりドラマとか、それから、NHKが得意としている情報番組とかがだいたい並んでくるという状況にあります。
 次がいわゆる「特選ライブラリ」。特選ライブラリというのは、見逃しが終わって、そのまま特選にいくというやつもありますし、30年前、40年前の番組も含めて、NHKの膨大なライブラリから権利処理をして出したもので、黄色の、1位が連続テレビ、『ちゅらさん第1回』となっていますが、これ、8月の時点では28,000だったのが、次、9月見せますと33,000ぐらいいっているのですが、実は黄色で書いているやつは無料です。これは5月から始めたのですが、つまり第1話とか、あるいは、第1シリーズだけは無料で見ていただいて、お客さんになってもらって、続きを有料で見てもらおうというので始めたら、無料だと3万とかくるのですね。白のところは有料です。有料で一番ご覧いただいたのは、4位、9位、11位から15位、全部『ハゲタカ』です。つまり、『ハゲタカ』は映画にもなったということもありますが、話題性があって、「あ、見てみたい」というと、「315円払っても見ようか」という方が毎回1万人以上居る。8月時点で、このような現象になっています。
 これも同じように1本ずつにして並べました。実はこれをご覧いただくと、さきほどから申し上げているように、Nスペとか、大河とか、ドラマとかそれから、海外ものが当たるのですが、過去の番組でいうと大河ドラマって出てこないのですよね。なんで出てこないかって、つまり、NHKの一番の看板は大河ドラマとNスペだということははっきりしているんだけども、特選ライブラリでは大河ドラマは1本も、ここ総集編だけ30位で出ていますが。実は大河ドラマの、特に最近10数年の大河ドラマは必ずどなたか1人、ノーという方がいらっしゃって。それもほとんどはある1社なのですが、出せないのです。古いやつを探していて、そこにはそこが出ていないというので、それを出しているのですが、やっぱり20年ぐらい前になると、なかなかアクセスがそんなには容易でない。さきほどご覧いただいたように40代男性がピークですから、その人たちにとって20何年前の大河ドラマって「聞いたこともないよね」。やっぱり新しいやつじゃないと、なかなかPC系ではきてくれない。その新しいやつが、『篤姫』は出せます。『篤姫』のときからは、「見逃し」でやると思っていましたから、「ネット配信をやろう」と思っていましたから、「ノーの人は出すなよ」って最初からいっていましたから、『篤姫』は出せますが、それ以外についてはそこのところが一番ネックで、つまり、人気商品が出せないというので一番困っています。
 ここから権利処理の話ですが、概略的に表にしてみたました。まず、「見逃し番組」でいうと、これ、「プロ」って書いてありますが、つまり、ドラマとかなんとかについては、団体交渉でほぼ合意済みです。見逃しですから、製作時の段階でお話をしますから、ノーといわれる人は交渉をしなければいいわけですよね、最初から、出演。つまり、テレビの放送にも出てもらわなければ別に問題ないわけですから、この見逃しのところについては、プロといわれている人たちが関わるところはだいたい話がつく。ただ、一部、調達映像、これはむしろ、こっち側にかかるのですが、写真とか、CGとか、そういうものについてはまだ交渉が難航している部分があります。それから、プロの人たちの過去番組、これはもうこれから交渉するわけではないので、「嫌だ」といわれると出せない。1人でも「嫌だ」といわれると、ほかの300人がOKでも出せないという状況が続いていますから、ここは少し苦労をしている。
 それから、本当は、もっと大変なのはこっちなのですよ。Nスペとか、NHKの場合は少しほかの民放さんと違ってNHKスペシャル、昔のNHK特集含めて、ドキュメンタリー系でやっぱり見てもらうのが多いので、これは、なるべく出したいと思っているのですが、これにはこの写真とかなんとかも含めて、膨大な人たちの権利交渉をやらざるを得ない。ここが権利交渉としては非常に大変なところに来ています。少し個別に見ていきますと、まず、権利処理の団体さんで契約を交わした団体、文芸、脚本の団体さん、CPRA さんとか、音事協さん。音事協さんはその管理事業者さんではありませんけれども、もう合意をして、契約を交わして、JASRACさんとかを含めて、こういうところの方々と団体契約が交わせたので、少なくとも今、NHKでは毎週見逃しサービスでは大体1カ月に500番組ずつ平均、10日間で消えていきますから月によって若干変わるのですが、見逃しは月に500本ずつぐらい。それから、過去番組については1,700から1,800本ぐらいがOKいただいて、出せるようになっています。
 「レコードの専属解放」というのがありまして、これ、見逃しサービスではレコード業界さんと合意をしてやれたのですが、この専属解放というのは、例えば和田アキ子さんがNHKの番組に出て、しゃべってらっしゃるときはホリプロのタレントさんで音事協さん所属なのですが、歌を歌った瞬間にレコード会社の専属の問題があって、レコード会社の専属解放をしてもらわなきゃいけない。見逃しの場合は、「テレビ出ているのと同じだから、宣伝だから」というので割合簡単だったのですが、過去番組については、「各社全部回ってください」っていわれたので、レコード会社全部回って許諾をとったと。
それから、さきほどいった、団体に所属しない芸能事務所、ここについてはノーといわれるところがあって、そこについては粘り強く交渉をしている。それから、CPRAさんなんかに委任を、ビデオ販売などは委任をしていらっしゃる方でも、ネットについてはケース・バイ・ケース、つまり、委任していないということですよね。そういう方もいらっしゃって、そういう方の場合には、個々に調べなければいけない。こういうややこしいのが、この「ビデオとかなんとかまでは委任しているけれども、ネットについてはケース・バイ・ケースだ」っていわれる方というのがどなたなのかというのを調べて、さきほどの出演交渉じゃないですけど、「あなたはどっちですか」とかっていって、「じゃあ、交渉をやめます」とは、なかなか言いにくいですよね。そういう意味では今度、どこまで進むか分かりませんが、実演家さんの集中管理ができて、「この人はOKしているよ」とかって分かれば、われわれにとっては非常に楽になるかなというふうに期待をしているところです。
 それから、ここに書いてありますが、劇場中継、コンサート中継。これは当然、交渉して契約を結べばいい話で。われわれ、少し書いたのは海外ドラマ、海外ドキュメンタリーというのが費用対効率でいうと実は今、一番いいです。なぜかというと、海外ドラマの場合は、アメリカものとか、いろいろなもので値段が違いますけど、円高のせいもあって放送権でも200~300万、ドキュメンタリーだと、1万ドルいかないぐらいでだいたい買えるのですね。「ネット権付きじゃなきゃ買えませんよ」ってやって、ネット権がだいたい10%以下です。ですから、1,000ドル、海外ドキュメンタリーだと、1,000ドルいかない。つまり、9万円とか、8万円で買える。権利処理も全部終わっているわけですよね。何にもしなくていいわけです。ですから、そういう意味ではここのところが一番費用対効果が高いものになっている。
 更に、部分使用という問題がありまして、ドキュメンタリーやなんかで、さきほどから出ていますが、写真とか、映画の一部を借りて使うとかというものがたくさんあります。これについては、いわゆる管理者団体さんがないので、もう全社、1社、1社、全部交渉しなきゃいけない。このことが大変です。これについてはなんとかしたいということで、今、いろいろな動きをしています。
 少しまとめますと、権利者団体さんについては、見逃しについては放送基準×一定利用率、これ、もう大変安くしていただいているのですが、NHKの放送基準そのものがだいたい安いのですが、それの例えば数%とかですね。それ、ものすごく安いのでOKをしていただいています。それから、特選についてはレベニューシェアでいけるところと、実は実演家さん、レベニューシェアでいきにくいのは、さきほどいった、1話無料とか、1シリーズ無料とかにすると、そのときしか出ていない実演家さんはどうするのだよとかという問題が発生したり。それから、見逃しの場合は、パック料金というのを作っていまして、見逃しで「1,470円払うと、もう見放題です」ってパック料金作っているのですが、「見放題になったとき、これ、どうやって払うのよ」というのがありまして、実演家さんの場合には、そのレベニューシェアは採用しないで合意をしている。団体以外のところについては、先ほどから申しているように、もうコストが大変なので今、権利者団体ではない業界団体と放送局、あるいは、製作会社との間で、なんらかの民民のガイドラインが作れないかというのでやっています。内閣官房の若い、最近、官僚批判が非常に多いですけど、若い官僚さんたちは非常に熱心に働いてくれています。官僚の中にもいろいろいらっしゃるので、少し申し上げておきたいと思いますが、非常なサポートを受けて、例えば、映連さんと映画の部分利用について、「市場形成できるまでは、上の権利者団体さん並みになるべく安い料金にしてよ」というような話とかですね。でも、映連さんには4社しか加盟してなくて、今、映画というのはいろいろな製作委員会の形態があるので、じゃあ、「放送も含めたマルチユース契約も検討してくださいよ」というような話もしています。映画の会社さんは全部ワンチャンスでやっていて、こういうのは最初、「認められない」と、「その部分について、マルチユース契約なんか認められない」っていわれたのですけど、「あんたたちはNHKの映像を持っていくときには、「ワンチャンスじゃなきゃ駄目だ」っていって、持っていっているじゃないか」っていって、いろいろなやり取りをして、こういう話し合いをしております。
   
         
岸原孝昌「携帯向け映像配信ビジネスの現状」 │ 関本好則「契約面から見たNHKオンデマンドの現状と課題」

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