平成14年度「国語に関する世論調査」の結果について

平成15年6月 文化庁

 文化庁では,施策の参考とするため,平成7年度から毎年「国語に関する世論調査」を実施している。平成14年度は,日本人の国語力についての課題,読書の現状などに関する国民の意識のほか,慣用句の認知・理解・使用について調査した。また例年継続調査しているカタカナ語の認知率・理解率の調査も実施した。
 報告書は独立行政法人国立印刷局から市販する。

Ⅰ.調査目的・方法等

調査目的 日本人の国語力についての課題,読書の現状に関する国民の意識,慣用句やカタカナ語の認知率・理解率・使用率を調査し,国語の施策の参考とする。
調査対象 全国の16歳以上の男女3,000人
調査時期 平成14年11月14日~12月2日
調査方法 個別面接調査
回収結果 有効回収数(率)2,200人(73.3%)
調査不能数(率)800人(26.7%)

Ⅱ.調査結果の概要

1.言葉の乱れについての意識

(1)現在使われている言葉は乱れていると思うか <問1>(※3ページ)
―依然として8割が「乱れている」と認識―

※は報告書のページを表す

 ふだんの生活で接している言葉から考えて,現在使われている言葉が乱れていると思うかを尋ねた。平成11年度調査と併せて結果を表にすると以下のとおり。
 平成14年度調査を見ると,「非常に乱れていると思う」「ある程度乱れていると思う」とを合わせた「乱れている(計)」は80.4%で8割を超えている。「余り乱れていないと思う」「全く乱れていないと思う」とを合わせた「乱れていない(計)」は17.0%となっている。平成11年度調査と比べると,「乱れている(計)」は5.4ポイント減少し,「乱れていない(計)」は6.7ポイント増加している。

  乱れている(計) 乱れていない(計) 分からない
非常に乱れていると思う ある程度乱れていると思う 余り乱れていないと思う 全く乱れていないと思う
平成14年度 80.4% 17.0% 2.5%
24.4% 56.0% 15.8% 1.2%
平成11年度 85.8%※ 10.3% 3.8%
32.7% 53.2% 9.6% 0.7%

※小数第2位四捨五入のため,単純合計と一致しない。

 平成14年度調査の結果を性・年齢別に表にすると以下のとおり。若年層ほど「非常に乱れていると思う」の割合が低くなっており,特に男性の16~19歳では3.6%と最も低い割合となっている。
※平成11年度調査との比較は,「参考1」を参照。

  非常に乱れていると思う ある程度乱れていると思う 余り乱れていないと思う 全く乱れていないと思う
男性・16~19歳 3.6% 70.9% 23.6% 0.0%
20~29歳 14.2% 50.4% 32.7% 0.9%
30~39歳 14.3% 64.3% 19.3% 1.4%
40~49歳 24.7% 62.0% 13.3% 0.0%
50~59歳 28.5% 53.3% 13.1% 2.3%
60歳以上 29.6% 46.9% 18.2% 2.2%
女性・16~19歳 17.5% 57.9% 17.5% 1.8%
20~29歳 10.5% 73.7% 14.0% 1.8%
30~39歳 18.7% 68.7% 10.6% 1.0%
40~49歳 25.3% 64.7% 10.0% 0.0%
50~59歳 34.7% 48.0% 13.3% 0.8%
60歳以上 28.3% 48.4% 16.4% 1.2%

2.1か月の読書量等

(1)1か月の読書量 <問3>(10ページ)
―1~10冊が58%,全く読まない人は38%―

1か月に何冊くらい本を読むかを尋ねた。結果は以下のとおり。(「分からない」は省略。)
「1冊~10冊」が約6割で最も多く,続いて「全く読まない」が約4割を占める。

全く読まない ・・・・・・ 37.6%
1冊~10冊 ・・・・・・ 58.1%
11冊~20冊 ・・・・・・ 2.6%
31冊以上 ・・・・・・ 0.4%

(2)読書をすることの良いところ <問5>(13ページ)
―「新しい知識や情報を得られること」が5割以上―

読書をすることの良い点は何かを尋ねた。上位5選択肢は以下のとおり。(複数回答)

読書をすることの良いところのグラフ

(3)読書する人の現状 <問6>(15ページ)
―6割が「減っている」と認識―

 読書をする人の数が最近どうなっていると感じているかを尋ねた。結果は以下のとおり。
(「分からない」は省略。)

読書する人の数は減っている ・・・・・・ 60.6%
読書する人の数はそれほど変わっていない ・・・・・・ 14.9%
読書する人の数は増えている ・・・・・・ 4.7%
読書する人と読書しない人とに分かれてきている ・・・・・・ 13.4%

3.日本人の国語力についての課題

(1)日本人の国語力についての課題 <問10,問11>(23ページ,25ページ)
―社会全般・個人ともに1位は「考えをまとめ文章を構成する能力」―

社会全般の課題

 日本人の国語力について,社会全般においてどのような点に課題があるかを尋ねた。
上位5選択肢は以下のとおり。(複数回答)

日本人の国語力についての課題のグラフ〔社会全般〕

個人の課題

 自分自身の国語力について,どのような点で自信を持てないかを尋ねた。上位5選択肢は以下のとおり。(複数回答)
 社会全般では2位に位置する「敬語等の知識」が,個人では4位に下がっている。

日本人の国語力についての課題のグラフ〔個人〕

(2)これからの時代に必要な言葉の知識・能力 <問12>(27ページ)
―上位にはコミュニケーションの能力も―

 これからの時代に,社会生活を送っていく上でどのような言葉にかかわる知識や能力が必要と思うかを尋ねた。上位5選択肢は以下のとおり。

これからの時代に必要な言葉の知識・能力についてのグラフ

 上位5選択肢について,年齢別の数値を以下に示した。16~19歳では「敬語等の知識」,20・40・50代と60歳以上では「説明したり発表したりする能力」,30代では「言葉で人間関係を形成しようとする意欲」の割合が最も高くなっており,今後どのような知識・能力が必要になると思うかについて,年齢による差が見られる。なお40代では「文章を構成する能力」「人間関係を形成しようとする意欲」の割合もほかの年代に比べて高く,60歳以上では「漢字や仮名遣い等の文字や表記の知識」の割合が高い。

これからの時代に必要な言葉の知識・能力についてのグラフ〔年齢別〕

4.言葉の使い方

(1)言葉の使い方 ―気になるかどうか <問13>(29ページ)
―6年前に比べて,いずれも「気になる」が増加―

 三つの言い方を挙げ,気になるかどうかを尋ねた。平成8年度調査と併せて結果を表にすると以下のとおり。(「分からない」は省略。)平成8年度調査と比べて,いずれの言い方とも「気になる」の割合が増加し,「気にならない」の割合が減少している。特に「休まさせていただきます」「お会計のほう」について「気になる」の割合が約2割の増加となっている。

  気になる 気にならない どちらとも言えない
あしたは休まさせていただきます 平成14年度 57.1% 36.7% 5.4%
平成8年度 33.3% 64.6% 1.8%
(店の会計で,店員が)お会計のほう,1万円になります 平成14年度 50.6% 40.7% 7.4%
平成8年度 32.4% 63.7% 3.4%
(千円未満の買い物をしたとき,店の会計で,店員が)千円からお預かりします 平成14年度 45.2% 44.3% 9.5%
平成8年度 38.4% 58.0% 2.7%

 年齢別に割合を示すと,以下のとおり。いずれの言い方も,16~19歳では「気にならない」の割合が高く,「お会計のほう」は6割が,「千円から」も7割が「気にならない」とする。一方,50代以上は,いずれの言い方も「気になる」の割合が5割を超え,「気にならない」は3割台にとどまる。

「あしたは休まさせていただきます」〔年齢別〕

グラフ

※ 平成8年度調査との比較は,「参考2」を参照。

「お会計のほう,1万円になります」〔年齢別〕

グラフ

※ 平成8年度調査との比較は,「参考3」を参照。

「千円からお預かりします」〔年齢別〕

グラフ

※ 平成8年度調査との比較は,「参考4」を参照。

5.慣用句等の認知・使用と理解

(1)慣用句等の認知と使用 <問14>(34ページ)
―「流れに棹さす」「閑話休題」は1割以下の使用率―

 八つの語句について見たり聞いたりしたことがあるかを尋ねた。
また見たり聞いたりしたことがあると答えた人には,自分でも使うかを尋ねた。結果は以下のとおり。

(数字は%)

グラフ

(2)慣用句等の意味の理解 <問15>(44ページ)
―「役不足」「確信犯」「流れに棹さす」は約6割が意味を誤って理解―

※本来の意味は,「参考5」を参照

 八つの語句についてその意味を尋ねた。そのうち,「奇特」「役不足」「確信犯」「流れに棹さす」「気が置けない」について,全体の数値を示した。また(ア),(イ),「分からない」の割合を年齢別に示した。

※下線を引いたものが本来の意味

(1)奇特  例文:彼は奇特な人だ。

〔全体〕

(ア) 優れて他と違って感心なこと ・・・・・・ 49.9%
(イ) 奇妙で珍しいこと ・・・・・・ 25.2%
(ウ) (ア)(イ)両方 ・・・・・・ 4.1%
(エ) (ア)(イ)とは全く別の意味 ・・・・・・ 4.1%
(オ) 分からない ・・・・・・ 16.7%

〔年齢別〕

グラフ〔年齢別〕

(2)役不足  例文:彼には役不足の仕事だ。

〔全体〕

(ア) 本人の力量に対して役目が重すぎること ・・・・・・ 62.8%
(イ) 本人の力量に対して役目が軽すぎること ・・・・・・ 27.6%
(ウ) (ア)(イ)両方 ・・・・・・ 2.8%
(エ) (ア)(イ)とは全く別の意味 ・・・・・・ 1.8%
(オ) 分からない ・・・・・・ 5.0%

〔年齢別〕

グラフ〔年齢別〕

(3)確信犯  例文:そんなことをするなんて確信犯だ。

〔全体〕

(ア) 政治的・宗教的等の信念に基づいて正しいと信じてなされる行為・犯罪又はその行為を行う人 ・・・・・・ 16.4%
(イ) 悪いことであると分かっていながらなされる行為・犯罪又はその行為を行う人 ・・・・・・ 57.6%
(ウ) (ア)(イ)両方 ・・・・・・ 3.9%
(エ) (ア)(イ)とは全く別の意味 ・・・・・・ 3.3%
(オ) 分からない ・・・・・・ 18.8%

〔年齢別〕

グラフ〔年齢別〕

(4)流れに棹さす  例文:その発言は流れに棹さすものだ。

〔全体〕

(ア) 傾向に逆らって,ある事柄の勢いを失わせるような行為をすること ・・・・・・ 63.6%
(イ) 傾向に乗って,ある事柄の勢いを増すような行為をすること ・・・・・・ 12.4%
(ウ) (ア)(イ)両方 ・・・・・・ 1.1%
(エ) (ア)(イ)とは全く別の意味 ・・・・・・ 1.5%
(オ) 分からない ・・・・・・ 21.4%

〔年齢別〕

グラフ〔年齢別〕

(5)気が置けない  例文:その人は気が置けない人ですね。

〔全体〕

(ア) 相手に対して気配りや遠慮をしなくてよいこと ・・・・・・ 44.6%
(イ) 相手に対して気配りや遠慮をしなくてはならないこと ・・・・・・ 40.1%
(ウ) (ア)(イ)両方 ・・・・・・ 2.2%
(エ) (ア)(イ)とは全く別の意味 ・・・・・・ 6.3%
(オ) 分からない ・・・・・・ 6.9%

〔年齢別〕

グラフ〔年齢別〕

6.カタカナ語の認知・理解と使用

(1)カタカナ語の使用についての意識 <問17>(57ページ)
―「好ましい」「好ましくない」共に増加―

 日常生活の中で,外来語や外国語などのカタカナ語を交えて話したり書いたりすることについて,好ましいと感じるか,好ましくないと感じるかを尋ねた。平成11年度調査と併せて結果を表にすると以下のとおり。(「分からない」は省略。)「好ましいと感じる」「好ましくないと感じる」共に増加し,「何も感じない」が減少している。

  どちらかと言うと好ましいと感じる どちらかと言うと好ましくないと感じる 別に何も感じない
平成14年度 16.2% 36.6% 45.1%
平成11年度 13.3% 35.5% 48.8%

(2)カタカナ語の使用について好ましいと感じる理由 <問17付問1>(57ページ)
―「カタカナ語でなければ表せない物事があるから」が約7割で最高―

 カタカナ語の使用を「好ましいと感じる」と答えた人に,そのように感じる理由を尋ねた。平成11年度調査と併せて結果を表にすると以下のとおり。(「何となく」「その他」「分からない」は省略。複数回答。回答者数=357。)

  カタカナ語でなければ表せない物事があるから カタカナ語の方が分かりやすいから 日本語や日本文化が豊かになるから 日本語は昔から外国語を取り入れてきたから カタカナ語はしゃれているから
平成14年度 72.5% 42.3% 18.8% 18.5% 8.1%
平成11年度 68.3% 39.6% 18.8% 13.7% 11.9%

(3)カタカナ語の使用について好ましくないと感じる理由 <問17付問2>(57ページ)
―「日本語の本来の良さが失われるから」が約5割―

 カタカナ語の使用を「好ましくないと感じる」と答えた人に,そのように感じる理由を尋ねた。平成11年度調査と併せて結果を表にすると以下のとおり。(「何となく」「その他」「分からない」は省略。複数回答。回答者数=806。)平成11年度調査で2位の「日本語の本来の良さが失われるから」が1位となり,平成11年度調査で1位だった「カタカナ語は分かりにくいから」が2位となっている。

  日本語の本来の良さが失われるから カタカナ語の方が分かりやすいから 体裁の良さだけを追っているようだから 言葉が乱れて日本文化が退廃してしまうから カタカナ語は嫌いだから
平成14年度 53.5% 49.4% 34.1% 32.6% 8.2%
平成11年度 49.9% 64.2% 28.6% 30.2% 7.6%

 全対象者を属性に偏りが生じないように一定の手続を経て四つのグループに分け,それぞれのグループごとに30語のカタカナ語を挙げて,見たり聞いたりしたことがあるか(認知),その言葉の意味が分かるか(理解),またその言葉を使ったことがあるか(使用)を尋ねた。結果は次ページ以下の表のとおりで,認知率では「ストレス」が97.4%で最も高く,以下「ボランティア」が97.2%,「リサイクル」が97.1%で上位3位までを占めた。理解率も「ストレス」が92.6%で最も高く,以下「リサイクル」「ボランティア」が90%以上の理解率であった。使用率についても「ストレス」「リサイクル」「ボランティア」が上位3位を占めるが,使用率が90%を越えるのは「ストレス」のみであった。  なお認知率が5割を超えたのは120語中77語で(約64%),理解率が5割を超えたのは120語中51語(約43%),使用率が5割を超えたのは120語中28語(約23%)であった

<参考1> 言葉の乱れについての意識(性・年齢別,平成11年度調査との比較)

<参考2> 言葉の使い方―気になるかどうか「あしたは休まさせていただきます」(性・年齢別,平成8年度調査との比較)

<参考3> 言葉の使い方―気になるかどうか「お会計のほう,1万円になります」(性・年齢別,平成8年度調査との比較)

<参考4> 言葉の使い方―気になるかどうか「千円からお預かりします」(性・年齢別,平成8年度調査との比較)

<参考5> 慣用句等の認知・使用と理解(本来の意味)
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