






鳴子発電所は、江合川上流にある国土交通省の鳴子ダムに溜められた水を利用して発電する水力発電所であり、1957(昭和32)年4月29日に完成した宮城県内で最大の水力発電所である。取水している鳴子ダムは日本人が初めて設計し施工した日本最初のアーチ式コンクリートダムであり、2016(平成28)年9月に鳴子ダムと附帯する鳴子発電所が土木学会の選奨土木遺産に認定された。
鳴子発電所は構造上の分類ではダム水路式発電所であるが、鳴子ダムは洪水調整、農業用水、発電を目的とする多目的ダムである。鳴子発電所で使用する水は、貯水池に設置した取水口から圧力トンネル、水圧鉄管を経て発電所に運ばれ発電に供される。
鳴子ダム貯水池左岸には取水口があり、ここから取り入れた水が、圧力トンネルで発電所に導かれる。発電に使った水は、放水路を経て河川に放流され、下流域のかんがい用水として利用されることから、農作物への影響を考慮し、取水口の設備にはダム湖の比較的暖かい表面水を取水するため「角落し」が整備され、かんがい期間(5月~9月)にはこの設備が使われる。18枚の鋼製の角落し板は建設当初のものであり、据え付けには大型のガントリークレーンが現在も現役で使用されている。
導水路は取水口から取り入れた最高落差106.12mの水を発電水車に導く水路である。導水路は地中部の圧力トンネル(延長939.1m)と圧力トンネルが地表に出るところから水車までの水圧鉄管(長さ112.1m、内径2.2~2.9m)からなっている。
圧力トンネルと水圧鉄管の連結部には調圧水槽が設けられている。鳴子発電所の調圧水槽は、全鋼板製の横型調圧水槽(長さ84.8m、内径6.0m)であり、発電所上部の山腹斜面に露出している。調圧水槽の最上部はサージングによる水位の駆け上がりに対して管路長を抑えつつ溢水を防ぐため上へと折れ曲がった独特の形状をしている。横型調圧水槽は日本初の形式である。
横型調圧水槽はわが国初の形式であり、世界的にも稀な形式である。発電所上部の山腹斜面に沿って設置され発電所と同時に眺められる景観は稀有な眺めである。また、角落しを利用した取水口設備は現在も現役であり、戦後初期の当時の技術を伺わせるものとなっている。(岡田一天)
1) 鳴子発電所、東北電力・宮城発電技術センター
2) 第15回温泉郷に佇む鳴子発電所、会誌「電力土木」、一般社団法人電力土木技術協会、2017.01
3) 鳴子発電所、水力発電所ギャラリー