





UHV交流送電は、長距離大容量送電、基幹外輪系統など大電力送電に伴う系統安定度・系統短絡電流の増大などの技術課題を解決するとともに、従来の最高送電電圧500kVに比べ、送電容量が3~4倍となり、送電ルート数の削減・送電ロスの低減などを図ることができる。我が国では500kV送電が運転を開始した1973年とほとんど時を同じくしてUHVの実用化に向けた本格的な検討が開始された。UHV送変電設備は従来の500kVに比べると電圧が2倍になり、大型の設備になるため、送変電設備のコンパクト化を図り、UHV送電特有の系統現象に対応する必要がある。1978~1982年に「UHV交流送電特別委員会」にて研究・開発が行われ、UHV送電ルートが計画された。
「送電技術」においては絶縁技術、設計・建設技術などについての検討が行われるとともに、高電圧化・大型化に伴う環境対策をとりまとめ、500kV送電までと同等のコロナ雑音(可聴音・電波ノイズ等)、風騒音、電界影響などを抑制する対策技術の見通しが得られた。
その後、1982~1985年に「UHV交流送電実証試験委員会」が設置され、絶縁距離の縮小化に影響する「開閉インパルス試験」などが行われ、500kVの延長上よりもコンパクトな鉄塔の基本設計等が得られた(鉄塔高さ:143mから120mに縮小)。
その結果、1992年に西群馬幹線、1993年南新潟幹線、1999年に南いわき幹線、東群馬幹線を完成させた。現在、1000kV送電線は500kVで運用中である。
環境対応の一環とし、可聴音対策(電気的コロナ放電音、風騒音等)は、実証試験の結果を受け、送電線導体8本を直径約1mの円周上に配置した複数導体配置(500kVは4導体)を採用し解決を図っている。
1988年から着工した南北ルート(西群馬&南新潟幹線)は山岳地を通過するため、気象条件が過酷であり、地すべり・崩壊等斜面安定に対する予防対策が必要とされた。また、1992年から着工の東西ルート(東群馬&南いわき幹線)では気象条件は緩やかではあるが、丘陵地を通過のため人家近接の箇所も多く、環境面での配慮が必要であった。なお、このルートでは地盤補強型深礎基礎及び遠心吹付土留工法が開発され適用された。UHV(1000kV)送電線は全長488.3kmに亘り、鉄塔高さ平均約120m、基数823基の壮大な送電線路である。
前述したが、500kV送電が運開した1973年よりUHV送電の検討が開始し、この時点では約10年早く開発を始めていた海外技術の調査から開始された。その後、継続的な各段階での国内委員会を通じて技術力を高め、1990年代から進められたUHVの国際標準化活動は、2006年11月には「UHV国際標準化委員会」を設立するに至った。この結果2009年5月には日本が推進する「標準電圧1100kV」がIEC規格に反映されるに至り、UHVの最大の市場である中国もこの規格を採用するとともにシステムにも日本の技術が適用されるに至った。このことは日本のUHV送電技術が国際標準になった訳であり、その技術に基づく設備は世界最高のレベルと評価できる。(山極時生)
1) 電気学会・高電圧絶縁技術の歴史調査専門委員会編:高電圧絶縁技術、オーム社、2019
2) 磯崎正則:100万ボルト送電線の技術開発、電気学会論文誌B、128巻11号、pp.1300-1303、2008
3) 数字で見る東京電力、電力供給設備、100万V設計送電線(UHV)、https://www.tepco.co.jp/corporateinfo/illustrated/electricity-supply/transmission-uhv-j.html
4) 300号記念「50年を振り返って」(東京電力株式会社)、電力土木、No.300、2002
5) 田邉成、佐藤博、上野誠、中谷登:砂質土地盤における地盤補強型深礎基礎の引揚支持力特性に関する実規模載荷実験、地盤工学ジャーナル Vol.2、No.3、pp.183-196、2007
6) 伊藤達男、長野祐司、飯島政義:遠心力吹付工法の開発、H12年建設施工と建設機械シンポジウム、r10、2000