文化庁主催 第4回コンテンツ流通促進シンポジウム“進化する音楽著作権ビジネス 〜音楽著作権等を活用した資金調達の可能性を探る〜”

第3部:パネルディスカッション

「音楽著作権等を活用した資金調達の展望と課題」

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松田

 向谷さんお願いします。


向谷

 正直このような話は難しいです。純粋な作家としての立場というのは、正直私にもないのです。どの作家の方もいろいろな背後霊を背負っていると思うのです。人間生きている上で割り切れるところと割り切れないところがあります。ただ、ひとつ感じたのは、このようなシンポジウムはカメのようなゆっくりした動きかもしれませんが、きっかけのひとつになるのかなと思えるのです。ここに立場の違う人が4人いて、「朝妻さん、本当にやってくれるの?」と言ったときに、後で、楽屋でもう1回問い詰めたいのですが、明確であるような、明確でないような物事が動いているんだなということが分かりました。

 私はこのような会に出すぎです。もっと有名な作家の人、もっとたくさん稼いでいる人がたくさんいると思うのです。私はせいぜいカシオペアという、もうすぐなくなりそうなインストゥルメンタルのバンドの歌もない、詞も書けないようなしがないミュージシャンなので、それが出すぎだっていうのがイヤなのです。本当にそう思うのです。何が足りないかというと、そのような作家の人たちが同じようなシンポジウムを開いて、松田先生にもいろいろとしてもらって、私たちのいろいろな浅はかなところも追求しつつ、こちらも反撃したい、そういうものをするべきではないかなと思います。今日は自分の力不足と学のなさを痛感しています。私もいろいろ勉強しているのですが、言っている用語も難しいです。

 自分個人のヒントとしては、先ほど言った小さい出版社、個人の原盤会社というのはあってよいことだと思うのです。それを大きな出版社や原盤会社とリレーをするということです。私的なことで恐縮ですが、今、私はプレイステーション3のソフトをハードの発売の1カ月以内に出そうという命がけの仕事をしているのです。ハードが11月11日に出て、私のソフトを12月に出すためには、あらゆる投資と人海戦術とコンテンツでものをつくっているのです。ハードも6万円代で、どれくらい売れるかは分かりません。それをしていて思ったのは、コナミ、ナムコ、タイトー、スクウェアエニックス、ソニーコンピュータエンタテインメントの中に私の会社があるのです。音楽版で言うと、今日の秀間さんの会社、竹内さんの会社、朝妻さんの会社の中に私の会社があるようなものなのです。結果、失敗するかもしれません。自爆するかもしれませんが、12月の結果を見ていてほしいのです。音楽の世界で同じことは当然できると思います。そういったところでつなぎ合い、大きな会社と共同して、小さな会社、小さな作家でもできるようなスキームが、もしかしたらこの資金調達の中に含まれているのではないかというのは個人的な意見です。最後に、もう1回言いますが、他の人を呼んでください。お願いします。以上です。


松田

 大変な貴重なお話をいつも聞かせていただいています。北さんお願いします。実は今日、北さんは少しお熱があるそうで、それにもかかわらず来ていただいてありがとうございました。


 私はコンテンツの話をするときにいつも申し上げるのですが、アメリカハリウッドの映画業界というのは絶対に沈滞しない産業であります。アメリカ人の感性、アメリカ人の考える正義というものを映画を通じて世界に対して発信しているという意味で国策産業だからです。したがってそれなりの国家による保護を受けている。
日本という国は、こうしたことにあまり意を用いないけれども、日本人の感性や文化というものは、欧米に比べ特殊なものであり、我々からこれを世界に向かって理解してもらおうと努力しなければ、向こうから理解しようとしてくれることなど決してないと断言できます。お互いの理解が平和につながるのです。
日本の音楽の国境はアジアまでだというお話が先ほどありましたが、日本の音楽はもっと世界に向けて発信してもらいたいと希望します。

 証券化市場は、まず売買市場ができて次に証券化市場ができるというのが順番です。どんどんいい作品を作っていただき、カタログ売買をどんどん進めていただくことこそが、やがて来る音楽著作権証券化市場の第一歩になるのではないかと思います。
ということで、音楽業界に心からのにエールを送りまして最後の言葉にさせていただきます。ありがとうございました。


松田

全体写真

 ありがとうございました。最後のほうに出てきたのは、会場からも質問がありましたように評価機関、これは具体的に描けないということがあると思うのです。ご発言の中には、これができると事が進む可能性はあったように思います。これについて私は少し実務的に努力してみたいと思っています。というのは、何か具体的なスキームが生まれたときに、それはもう大体話はまとまっています。その評価についてはどこにしてもらうか、どのような趣向でするのかというのを公表して、行います。そして、その売買の後の結果も、フォローしてもらえるようにしないと事が進みません。そういうことが必要なのではないかと思います。今日のこのシンポジウムでの感想というのはそういうところです。

 最後に私が総括をしようと思いますが、今の評価機関の点は、もう北さんや朝妻さんのほうでしていただいたということになるかと思います。音楽コンテンツをもっとビジネスとして活性化するということは、著作権を少し研究する立場にいる者としては大変興味があるわけです。日本の市場でゲームのコンテンツはいささか広がってきましたが、それ以外のコンテンツはどうも日本の市場の中だけで原価計算しているのではないかと思います。これはもちろん安全であるし、長い間そういうことで培ってきたもののノウハウが全部集約されているからそうなのだろうと思いますが、それを打破するためには、何らかの大きな投資、次に循環していくというものをつくっていかないと、日本だけの市場を越えられないのではないかと常々感じています。私はその中のビジネスを扱っているわけではありませんので、現実に実業家としているでもないし、実務家としているわけではありません。しかし、映画にしても音楽にしてもその他のコンテンツにしても、日本のコンテンツは有用なのだ、役に立つのだと、高く売れるのだというのは、韓国やアメリカの弁護士さんとも話をするのですが、なかなかそれがうまくいかないのです。これはひとつにはそのビジネスのやり方というのがあるのでしょうが、この音楽をつくるのにいくらの予算がかかる、日本の市場はおそらくこれくらいだろう、だから原価計算としてはこれくらいだろうというものが、ある程度のビジネスのやり方として固まっているからだと思います。

 しかし、このコンテンツビジネス流通促進というのはそれをひとつ打破することの役割があるのではないかと思います。もちろん、そういうことを打破する過程の中にはいろいろな危険性があるのだろうと思います。その危険性をできるだけ少なくしつつ、世界市場に日本のコンテンツが有用に使われるためのきっかけが、私はこの流通促進だろうと思いますし、コンテンツのファイナンス化だと思っています。そういう点で、少しでもこの研究報告が役に立つこと、それからこれからの著作権法のいろいろな実務がそういう方向に向かうことです。また、政府の知財促進の方向性はそちらを向きましょうとは言っておりますが、具体的には文化庁や著作権実務家がやらざるを得ないわけですから、さらに研究して、一歩進んでいくことを期待したいと思っています。そのために今日のシンポジウムやこの結果がまた少し皆さんのお役に立つことになれば、参加者として幸いです。

 最後取りまとめとしては、しっかりした提言等をまとめるというわけにはいきませんで、それはひとえに私の能力のなさにあります。第1、第2のテーマについて十分に議論ができなかったのも私の責任だろうと思っています。今日は日本を代表するコンテンツ流通の4人の専門家の方々から貴重なお話を聞き、会場からも貴重なお話を聞きました。これで今日の促進シンポジウムを終わります。どうもありがとうございました。4人の先生方どうもありがとうございました。


川瀬

 長時間にわたりまして、パネリストの皆様、コーディネーターの松田様、ありがとうございました。皆様、今一度拍手をお願いいたします。以上をもって、文化庁主催第4回コンテンツ流通促進シンポジウムを終了させていただきます。本日はご来場いただきまして、誠にありがとうございました。なお、出口でアンケートを回収していますので、ご協力よろしくお願いいたします。


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