近代歴史資料の保存に関する調査研究事業

近代歴史資料の保存に関する調査研究事業

本事業は、近代歴史資料の素材の特性がもたらす課題に対応した修理技術の確立と普及をめざし、令和4年度より委託事業として文化庁文化財第一課が企画し実施している。
近代歴史資料は、紙素材のものから機械類まで品質は非常に多様である。員数が多数に及ぶ一括の資料群で保存されていることも多いが、そうした資料群の中でも形状・素材等が一様ではない。また、その素材は前近代のものとは大きく異なり、工業製品等の保存性が低いものが少なからず使用されている。また、近代歴史資料の多くは近年まで現用に供されていたため、簡易補修が施されているものが少なくない。なかでも近代の紙を主な素材とする歴史資料は、多様な合成接着剤や粘着テープを用いて簡易な補修が行われていることが多く、これらが時間の経過とともに変質して、悪影響をもたらしているものがある。
このように、多様かつ多量であること、素材に保存性の低いものが用いられていること、簡易補修が悪影響を与えているものも少なくないことが近代歴史資料の特性といえる。
近代歴史資料の修理においては、その特性を十分にふまえて、資料の価値を最大限保全しながら長期的な保存と活用を目指す必要があるが、文化財としての修理実績は、前近代までの文化財に比して多くはない。また前近代の文化財は百年単位で修理後の経年劣化の観察が行われ、修理技法や材料の選択について長期的評価が行われているが、近代歴史資料については、修理後の長期評価はこれからという段階である。それゆえ、その特性に応じた安全で汎用性の高い修理技術の確立や普及が課題といえる。
本事業ではこうした課題をふまえ、近代歴史資料のうち紙資料(近代行政文書)を対象に複数年度にわたって調査を行い、調査に基づいた保存修理によって技術的検証を実施する。また報告書その他の方法で、成果の普及を図っていく。

(文化庁文化財第一課)

外板の修理前