群馬県006

群馬県民会館

  • 1971年竣工
  • 設計/岡田新一設計事務所
  • 施工/鹿島建設株式会社
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造 鉄骨鉄筋コンクリート造 地上5階(PH1階)、地下1階 アスファルト露出防水砂利敷き仕上
  • 用途/文化施設
  • 所在地/群馬県前橋市日吉町一丁目

群馬県民会館は、群馬県の明治100年記念事業の一環として群馬大学教育学部の移転跡地に建築された。地下1階、地上5階、塔屋1階、延べ床面積13,330㎡、高さ21.6m。構造は、鉄骨鉄筋コンクリート造、一部鉄筋コンクリート造である。設計は岡田新一(1928-2014)、施工は鹿島建設株式会社、竣工は1971(昭和46)年9月である。主な改修工事は(昭和53)年にスプリンクラー工事。1999(平成11)年から2年間で大規模改修工事(身障者トイレ設置、女子トイレ増築、地下リハーサル室改修、舞台・給排水・機械・電気設備の改修)。2010(平成22)年にバリアフリー工事などである。
前橋市は上毛三山の赤城山の麓に位置し、中心市街地の北東部、4車線道路の突き当たりの巨大な石壁が群馬県民会館の正面である。県民会館の内部計画は、1階大ホール、1階展示室と2階小ホールをそれぞれ厚い石壁で包んで配置し、小ホール上の4、5階に会議室スペースを載せる。残りの空間を公園や庭に対し開放性のある休憩スペースとして計画された。正面西北の道路面に同設計者で「群馬県立図書館」(1978年3月竣工)を建設した。図書館は、県民会館の石壁を際立たせるため、道路側にタイルの壁に包まれた数個のボックスを並置し、建物のスケールを落とした設計である。
この建物の特徴として、雄大なスケールで重厚な石壁の正面は、都市を受けとめるファサードとしての顔と、公園を媒介し静穏な住居地に連る背面は、段状のテラスとして建物スケールを落とし、会館や公園を訪れる市民に親しまれる顔がある。そして、4車線道路から続く正面入口より入った、左の大ホールを内包した石壁の塊と、右の小ホールを内包した石壁の塊の狭間が“道”となっており、玄関ホールからロビーそして公園につづく“道”は、賑わいと交歓との母体となっている。
外部正面のマッシブな稲田石の壁から続く、内部の“道”を挟む稲田石の壁、“道”の床の万成石など、この設計は石のもつ温和な、端正な、そして毅然とした一面を引き出した建物である。また、1階のロビーと食堂のダイアゴナル(斜め)な柱配置は、主空間である石壁の塊と狭間の“道”とは異質な空間であり、システムとして空間として明確に人々を誘い込む手法がみられる。そして正面と背面の異なる建物表現の対比も意匠性の高い表現である。
また作家性として、「公器としての空間も、社会や文化の形態や形式が変わっても、常に対応しうる恒常的な空間が存在しうると思う。群馬県民会館や最高裁判所の設計に向かったぼくの基本的な姿勢は“堅い空間”をつくることであった」。と設計者は述べており、岡田新一の一時代の公共建築に対する不変な精神を体現した建物といえる。(伊藤美保子)