「L'AUTRE MAISON( ロートルメゾン)西の洞」は館林城惣郭内侍屋敷の名残を遺す大手町(旧鷹匠町)に1985(昭和60)年に竣工した。鉄筋コンクリート造・木造3階建,延床面積282.03㎡の、コンサートホール+レストラン+住宅の建造物である。設計はTeam Zoo アトリエ・モビルの丸山欣也、施工は地元の小林工務店、音響指導は小川有子が担当した。
建築は旧家屋の古瓦を乗せた切妻屋根、グラスファイバー外断熱の押縁下見板張りの外壁で、周囲の街並みに溶け込んでいる。敷地の奥に、間口22.5mで、左側がコンサートホール・レストラン、奥行8.7mの2階建て、右側が住宅で奥行4.2mの3階建てである。コンサートホール・レストランの南面は西から楽屋(下屋)、デッキ、風除室(下屋)が並んでいる。
ホールには風除室を入った踏込から左方へ階段5段を上がると、客席フロアに至る。男子便所・女子便所、パントリー、厨房が設けられている。客席フロアの両端部の階段から5段下がると、ピアノのあるステージで、階段14段を上がると、2階客席があり、吹抜からステージ・客席を見下ろし、木造トラス材の屋根架構を間近に見ることができる。 ホール内は西側壁面に大谷石・芦野石のパターン貼と一部にステンドグラスが嵌め込まれ、南北側の壁面は型枠ベニヤ表し、東面と北面の上部の壁面は針葉樹合板と穴あき吸音板によって仕上げられ、天井面は梁を露出させたままの小屋組となっている。これらが一体となって、音響効果を高めている。設計の打合せ時に、裏の石蔵(既存)で、コンパクトディスクで聴いた音楽の響きの良さから、蔵の仕様の、大谷石と木材、それに梁の出た天井という構成が建物のイメージとなったという。また屋根に乗せた天窓は広い室内空間の明かりを確保するのはもとより、夏の暑くなった室内空間の換気に有効で、館林特有の環境の中でもさほど気にならないという。音楽会が開かれない時、ホールはすべてレストランの客席となり、100年も前の大きなディスク型オルゴールが名曲を奏でてくれる。客席には旧家屋の材料が再利用され、2階客席を支える柱や階段の床材に、また、丸山欣也と方圓館 坂本和正 両氏の共同製作により、造付け家具(机・椅子・ベンチ等)としていかされた。客席周りのテーブルでは音楽記号がデザインされたスタンドが手元をてらし、ベニヤ型枠表しの壁には五線譜、客席フロアとステージ間の弧を描く手摺は、4本の手摺桟に四角いドットがついて、古い形式の4本線の楽譜をなぞるというように音楽がモチーフとなったデザインが施されている。ホール内の柱や内壁は歴代の出演したアーティストのサインでいっぱいとなっている。(意匠性)
建築主等(幼馴染の8人の集まり)の願いは「生演奏を通して人びととの出会いと、有名でなくてもよい音楽を拡め、人の輪を拡げること」だった。設計者は館林で見聞きし、感じた様々なイメージを組み合わせることで、音と光を温かく包み込み、気取らない爽やかな、130席の小さなコンサートホールを作った。(荻野 浩 下山 彰)