いせさき聖苑は、都市と建築の視点に立った新たな都市環境施設として建設された。鉄筋コンクリート造一部鉄骨造2階建で、延床面積4051㎡、最高高さ12.30mである。設計は株式会社山下設計・梓設計株式会社共同企業体、施工は鹿島建設株式会社・柏井建設株式会社・佐藤建設株式会社共同企業体が担当し、1988(昭和63)年3月に竣工した。古墳群が点在するなだらかな丘陵に、赤城山を望む赤城見台公園とともに都市公園的環境を形成するように建設された。南正門から入る車路はゆるやかに配置され、玄関で直に車の気配が感じられることもなくキャノピーや駐車場に寄せられる。周りの緑地帯は,少し高い丘になっている。暮らしの延長に死者の声が聞こえる場所があり、そこでは自然の畏敬を感じながら故人を見送ることができ、自然の偉大さと人間の尊厳が共存している環境である。なお、竣工後に大規模な増改築はなされていないが、経年劣化や時代の要望に合わせて2015(平成27)年に待合室を和室から洋室に変更、2023(令和5)年から2024(令和6)年に屋根防水工事と照明のLED化工事、2024(令和6)年にエントランスの建具工事を行っている。
建物は、八角形の反射ガラスの塔を中心に地形に呼応してのびやかに広がる構成となっている。塔は陽光に輝いて、会葬者に暖かく光を投げかける道標となるよう意図されている。煙突が見えないなど葬儀に列席する人々の心理を細かく読んだ設計である。この頃から高性能の火葬炉が設置されるようになっており、この施設は先駆的といえる。一般に火葬場は周辺環境に不調和な迷惑施設と考えられている。従来の斎場の陰鬱な雰囲気を払拭した明るく機能的な施設であり革新的である。
伊勢崎市と他の地域からの受け入れもあり、1日に10件程の儀式が行われている。葬儀が重なった日でも遺族同士が交錯しないようにと人の心理や動きに合わせた動線計画であり、告別、火葬、火葬待ち、拾骨、退出の葬礼の場にふさわしい各々の雰囲気が設定されている。エントランスホールは、窮天をイメージとする三次曲面天井が、たおやかな上昇感を現しており、告別室は、無限に連なる雲海の下で野辺の送りを想起させる情景であり、炉前ホールには、空へ至る階段が表現されている。待合、式場は木質や布系の柔らかい質感で、傷心の遺族に包容力のある空間であり、「花」や「雲」は美術品、絨毯、椅子地、扉、透かし彫り等に用いられ、彩を加えている。動線に沿って変化する中庭の表情や水面の現れ方、進むほど光量が増すような開口部の形状など、会葬の流れの中で一つのストーリーの語り掛けがある。装飾の持つやわらかさが、大切な気持ちの拠り所となり、人の気持ちに寄り添うデザインとなっているなど意匠性にも優れている。(西村良子)