『藤岡の家』は建築家、尾関勝之の自邸である。尾関が独立前、大林組東京本社設計部所属時に設計した。コンクリートブロック(以下、CBと略称)造、平屋建て、延べ面積148㎡、最高高さ4.9mである。構造設計は奥野豊、施工は藤岡市の塚越土建である。工期は1989(平成元)年4月から同年12月である。増築や改修工事はない。
敷地は角地で、道路を挟んで北側に神社、東側に寺の緑地があり、南側と西側は住宅地が広がる。既存樹木を極力残して配置計画がされた。建物は敷地の北側と西側にL形に配置され、鉄骨造の切妻屋根の居室3棟と、それらをRCスラブの陸屋根部分(台所や浴室等)で繋ぐ構成である。北東の角から敷地に入り、北側から玄関に入る。玄関ホールの東側に和室、西側に居間を配した1棟がある。居間西側の中庭を挟んで寝室と納戸の1棟があり、その南側に廊下・浴室等を介して寝室2部屋の1棟が続く。中庭北側に台所を配する。各居室はそれぞれ庭に面している。設計コンセプトは「内外一体の家」であり、室内の外部化を試みている。3間四方の居間は北側に中庭と神社の借景があり、南側はテラスと庭が広がり、南面、北面、西側妻面は全面ガラス張りである。壁面はRC造の布基礎とCB積みとRC造の臥梁から成る。
本建物はGLから臥梁上部までの高さを2.75mと低く抑え、CBとRCによる立面構成が調和するように設計されている。CBとRCの質感の微妙な差は壁面の陰影の幅を広げている。3棟の切妻と陸屋根は空間に変化を与え、臥梁は水平ラインとして強調されることで外観に統一感を与える。壁や屋根や開口部をシンプルに納め、屋根面、壁面、ガラス面が、場所により多様な構成を生み出す。植栽は建物の構成に連続し、内外を横断する空間は高い質を備えている。コンペの受賞歴もあり、多くの建築雑誌や書籍に掲載され、週刊誌等でも意匠性に優れた住宅として紹介された。『建築設計資料集成-住居』では、「中間領域の重視:中庭、コートハウス」の項目に取り上げられた。
また、群馬県では戦後まもなく、補強CB造の県営住宅建設を契機に、県の依頼と指導によってCB製造業が育成され、CBは復興期の建築生産を支える重要な材料として普及した。その後もCB造は継続して建設されたが、主に経済性や施工性を重視した用途にとどまり、意匠的に扱われることは少なかった。本建物は、素地のCB積みを主体とした構成によって素材の表情を積極的に引き出し、従来のCB造とは異なる価値を提示した点で、CB建築の歴史的展開の中に明確な位置を占める作品である。また、群馬県は全国有数のCB生産県となっている。この地域的な産業基盤は、尾関がCBを採用する重要な背景となった。尾関は、CBの主産地でありながら素地仕上げの建築がほとんど存在しない状況を踏まえ、素材本来の美しさを地域に示す意図をもってCBを選択した。本建物は、地域で生産される建材の価値を引き出し、地域性を明確に体現する建築である。(島﨑重德)