群馬県015

グリーンドーム前橋

  • 1990年竣工
  • 設計/松田平田坂本設計事務所・清水建設 技術指導 斎藤公男
  • 施工/清水建設・佐田建設共同企業体
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造 地上7階、地下1階 銅板葺
  • 用途/文化施設
  • 所在地/群馬県前橋市岩神町一丁目

グリーンドーム前橋は、老朽化した前橋競輪場の後継施設で、日本初の屋内競輪場として、また多目的イベントホールとして使用されている。鉄筋コンクリート造(一部鉄骨鉄筋コンクリート造)の構造体に張弦梁構造の大屋根が載り、地上7階地下1階、延べ床面積60,302㎡、建物高さ41.2mの規模をもつ。
前橋市制100周年記念事業として1988(昭和63)年に設計事務所と建設会社の共同提案型事業として発注された。設計者は松田平田坂本設計事務所と清水建設の共同設計で、前橋市出身の斎藤公男(当時日本大学理工学部助教授)が技術指導をしている。施工は清水建設と前橋市内の佐田建設との共同企業体によるもので、1990(平成2)年5月31日に竣工した。 竣工から約35年が経過し、ステージの装置などが一部使用されていないものの、競輪や音楽、集会、展示会等多目的に利用されている。
建設後に、東側の旧競輪場跡地は臨江閣(国指定重要文化財2018(平成30)年8月17日指定)の敷地と融合した芝生の公園として、また西側の利根川沿いエリアは駐車場や屋外イベント広場として、南に隣接する前橋公園と一体的に整備されており、背後には赤城山や榛名山の山並みを配した自然が豊かな環境となっている。ドームの大屋根を銅板葺きとし、緑青の発色が周囲の自然環境に溶け込む景観がグリーンドームの名称の由来となっている。なお、屋根は2011~13(平成23~25)年度の改修工事で銅板葺きから緑青色のステンレス平葺きに改修されている。
平面構成は、中央に一周333mの自転車競技走路を配し、その内側に5,000㎡の楕円形のメインイベントエリアのアリーナを設けている。2~4階のコンコースは幅6mで一周500mの周回通路となっており、通路に沿って観覧室・投票所・レストラン・会議室などを配置 する。各種スポーツイベントの他、展示会やコンサートにも利用され、デザイン的にも機能的にも優秀で規範となる国際的なスポーツ・レジャー施設に送られるIAKS賞(International Association for Sports and Leisure facilities: 国際余暇スポーツ施設協会)の銀メダルを1995(平成7)年に受賞している。
最大収容人員2万人の自転車競技用走路を有し、アリーナ全体で11,700㎡の大空間でありながら柱を建てずに架構するため、弓の弦の原理を応用した張弦梁を用いて大屋根を支える。この張弦梁架構は斎藤公男の発案によるもので、ビームとケーブルにより構成された自己釣り合い型の架構であり、下部の構造体に加わる力の負担を最小限にする効果をもたらすとともに、低ライズで断面の小さいアーチトラスとなっている。平面的にも断面的にも円をモチーフにして軽快でリズミカルな内部空間を演出するなど、高い意匠性を持った建築と評価できる。また、世界最大の張弦梁架構として122m×167mの無柱空間を実現し、1990年以降多様化する張弦梁構造の起点となるなど、技術性が顕著にあらわれた作品である。なお、日本における建築構造分野の代表的な顕彰であるJSCA賞(日本建築構造技術者協会)を1991(平成3)年(第2回)に受賞し、斎藤公男は、テンション構造による一連の大スパン建築について1993(平成5)年に松井源吾賞を受賞している。 (宮田賢二)