群馬県相生第一県営住宅は群馬県東部の桐生市に1992(平成4)年着工して1995(平成7)年に竣工した公営住宅である。なお、1991(平成3)年に、前面県道をおよそ400m東に行った敷地にA棟とB棟が建てられているが別事業であるので、対象はC棟~I棟をとした。構造は、C・D・F・G棟は壁式鉄筋コンクリート造5階建、E棟は鉄骨鉄筋コンクリート造10階建(塔屋1階)、H・I棟は壁式鉄筋コンクリート造4階建である。住宅棟の延床面積は16212.36㎡で、総戸数は197戸となっている。設計は、基本設計を栗生明+栗生総合計画事務所、実施設計は同事務所を監修として群馬県建築設計センターが担当している。1996年4月号の『新建築』に、同時期に設計した「富山県新湊市本江市営住宅」ととも本建築が掲載されたが、その中で栗生明は、「集住の情景」として「今回、はじめて集合住宅を設計するにあたり、住居ユニットの革新性を模索することよりも、住居ユニットの間の空間化、共有領域の質の向上を目指した。共有領域の中に多くの居心地のよい居場所を設定し、・・・集まって住むことの安心感や楽しさを引き出すことを意図としている。」と記述するなど、栗生の住居観がよくあらわれた作品である(作家性)。
全体は、中央を市道が分断している不整形な敷地に、四角形の中庭を持つC~G棟と三角形の中庭を持つH・I棟の二つのブロックを配置した構成で、車を侵入させない中庭を中心に立体回遊性を持った中高層の集合体となっている。回遊路はC~G棟では3階屋上部分、H・I棟では2階屋上部分に設けられ、すべての住棟を繋ぎ、中庭、ピロティ、階段室、ブリッジなどとも立体的に連続し、あたかも都市の街路のように選択性の高い動線を提供するなど、機能的な工夫が意匠的な特徴ともなっている。また、受水槽、ポンプ室、電気室は、砂場、滑り台などと組み合わされて、遊具とされており、ゴミ置き場はシンボリツリーの植栽桝に、円形の自転車置き場は中庭の夜間照明とするなど、集合住宅の裏方と考えられる施設を敢えて目立つ位置に配置し、環境装置や遊具をも重要視している(意匠性)。外部の色彩は、肌色(クリーム色)と青色を大胆に配し、鮮やかに演出している。これは「富山県新湊市本江市営住宅」と同様の構成である。なお、本建築においては劣化に伴い順次修繕工事を行っているが、その際に外壁等は景観条例を考慮し、トーンをおさえたものにされたが、そのデザインは長く継承されている(継続性)。
住居ユニットは メゾネットタイプとフラットタイプを採用している。メゾネットタイプになっているのは、C・D・F・G棟の4・5階部分とH・I棟の3・4階部分の46戸で、内階段を設け、玄関は屋上回遊路に面している。それ以外(高層棟であるE棟を含む)はフラットタイプである。メゾネットタイプは設計者が好んで採用したもので、「富山県新湊市本江市営住宅」では全戸で採用されている。(板川 多惠子)