群馬県023

群馬県立前橋高等特別支援学校

  • 1997年竣工
  • 設計/内井昭蔵建築設計事務所
  • 施工/佐田建設株式会社 池下工業株式会社 立見建設株式会社 鵜川興業株式会社 不二建設株式会社
  • 構造形式/木造、鉄筋コンクリート造、鉄骨造 地上1階及び地上2階 銅板葺、S形瓦葺、一部ガラス瓦
  • 用途/学校建築
  • 所在地/群馬県前橋市青梨子町

群馬県立前橋高等特別支援学校は、群馬県の森林の回復、林業の活性化及び木造建設職人の育成などを目的とし、県産材の唐松をさまざまな用途に利用した木造の学校として建設された。体育館、教室、コテージは平屋建、事務管理棟、実習棟は2階建で、延床面積5620.41㎡、最高高さ12.60mである。体育館は大断面木材を用いた木造とされ、教室棟、コテージ、事務管理棟、実習棟には在来軸組工法が用いられ、渡り廊下や防火壁は鉄骨造、ボイラー室は鉄筋コンクリート造となっている。設計は内井昭蔵建築設計事務所で、施工は前橋市の佐田建設株式会社(体育館棟)、池下工業株式会社(事務管理棟)、立見建設株式会社(実習棟)、鵜川興業株式会社(教室棟)、不二建設株式会社(ワークスペース棟)が担当した。1996(平成8)年5月に着工し、1997(平成9)年3月に竣工している。
生活する人をおおらかに包み込んでくれる木の存在感が意識され、心地よい自然との連続性を活かし、明るく開放的で快適な空間づくりが目指された。教室棟、実習棟、事務管理棟などのプライベートゾーンを西側に、体育館とグランドからなるオープンゾーンを東側に設置し、二つのゾーンの間には、南正門から体育館の西側を通り東側市道へと抜けるニュートラルゾーンを設置している。ニュートラルゾーンにある学校の核となる中庭は、自然に囲まれ四季の移ろいが感じられ、広場として利用できる重要な役割を持っている。教室棟は、静かで陽当たりがよく、東南向きL字型に配置し、上州のからっ風を防ぐなど考慮している。それぞれの棟は独立していながらも、中庭及び回廊によってゆるやかに結ばれている。
唐松は長期間陽に当たったり雨風にさらされたりすると赤褐色になる。赤褐色は、時間が経過しても全体の統一が図られるように考えられた色である。塗料は、人体に無害で安全なものが選ばれ、木材の自然の風合いを保つことも考慮された。地域に溶け込む色調の校舎、自然素材の持つ色彩、緑との対比の美しさ、際立ち、そして調和、建物群全体を設計している。建具、内部仕上げ材、照明器具、机や椅子等にも木が使われ、体育館の梁は大断面集成材、天井は唐松の目透かし張りであり、意匠性に優れている。
木造建築の意義とは、内井の「木造建築を増やすことは結果において、建築を生かし、森を生かし、水を浄化し、魚を育て、酸素を増大させ、炭素を固定することとなる、この循環を可能にするものは、意匠である。意匠とは木のもつ霊気を引き出し、新しい生命を与えることでもある。」という考えに基づいている。
内井は、ヒューマンスケールを超えた建築が多く、人間を拒否していることなどに危機感を感じ、体質を回復する手立てとして①何事も拙速を慎むこと②無駄を省き質素であること③自然との脈路を明らかにすること④ヒューマンスケールを追求することを揚げている。ヒューマンスケールとは、「人間性に基づく」もので、空間のスケールを表す寸法であり、ヒューマンスケールの追求とは、建築の健康さを回復する糸口であるとしている。本建築は内井が目指す「健康な建築」を実現した作品であり、具現化された内井の作家性を表している。
建築材としては使用しにくかった唐松を「高温乾燥」方式の導入によりねじれを最小限に抑え、また、体育館には大断面木材を用い、3.6m間隔に11の山形フレームを構成し、大断面集成材の梁を2本の斜め梁と垂直柱で支えた3ヒンジ構造としるなど技術性にも優れている。(西村良子)