群馬県庁舎は県の行政部門を集約した庁舎で、1996(平成8)年3月に着工、1999(平成11)年7月に竣工した。地上33階建て(塔屋1階、地下3階)、最高高さ153.80mで、構造は地下部分にSRC造、地上部分にS造を採用し、建築面積3,227.46㎡、延床面積83,502.73㎡である。設計は㈱佐藤総合計画、施工は建築主体工事が大成・清水・鹿島・佐田・井上・立見特定建設工事共同企業体で、電気、空調及び衛生設備工事もそれぞれの共同企業体が担当した。
1871(明治4)年の廃藩置県で成立した群馬県(現状は1876(明治9)年に確定した第二次群馬県)の当初の県庁所在地は高崎であったが、仮県庁舎は1867(慶応3)年に再建された再築前橋城があてられ、県庁所在地が前橋に移された1881(明治14)年以降、本庁舎となった。その後約60年を経た1928(昭和3)年に近代建築技術を駆使したスクラッチタイル貼の県庁舎(現昭和庁舎)に建て替えられ、更に約70年を経て現在の県庁舎が完成した(1999)。これら庁舎の新築・改築は建築物の老朽化とともに、行政の拡大と県勢の発展によるものであり、限られた敷地のなかで希少な価値のある昭和庁舎を保存したうえで、現県庁舎、議事堂や警察庁舎、駐車場棟、県民広場が整備された。
再築前橋城の本丸跡の敷地は、背後に利根川や県境の山々を配し、古くから前橋市の中枢の位置にあって、都市機能の成熟、歴史・文化環境の蓄積、豊かな自然環境など、潜在的価値に恵まれた地域である。 周辺環境を考慮して、群馬県庁舎は敷地のほぼ中央に配置され、頂部は上昇感のある形態としている。東西面は陰影のある立体的な壁面で、変化のある表情をつくっている。 1階には県民ホール、最上部に展望ホールとレストランを設けて、専用の展望エレベーターを設置している。一般事務室ゾーンは組織変更にも柔軟に対応できるように中高層部にまとめ、特別用途諸室は機能や動線上の特性を考慮した階構成としている。なお、2020(令和1)年に32階展望ホールの一部が群馬県からの情報発信のための動画・放送スタジオ「tsulunosu」や官民共創スペース「NETSUGEN(ネツゲン)」がオープンし、さまざまな人が集まり交流する空間に生まれ変わっている。
群馬県庁舎は、県庁舎としては全国で最も高い超高層建築物であり、展望ホールからは県境の山々や関東平野を一望することができる。県内の各所から眺められる県庁舎の姿は県政の中心として、都市景観のランドマークとなっている。また、単なるオフィスではなく、県民ホールや展望レストランなど地域に開放され、イベントや憩いの場としての公共性を内包しており、これからの県庁舎の一つの方向性を示している。これらの観点から革新性の高い建築物である。
中高層部には、緑化や接地感を演出するため、内包された外部空間としてスカイテラス(ふれあいテラス)が6か所設けられ、それぞれテーマのある庭園となっており、隣接した屋内のふれあい談話室と併せて快適なコミュニケーション空間となっている。このテラスは3層又は4層分の吹き抜けとなって外部に開け放たれ、陰影のある立体的な壁面となっている。また、併設されている県民駐車場は、1階からリフトで地下2階に自動車を下して4層の棚に約650台収納する水平スライド式の先進的な機械式駐車場で、屋上には庭園を設けて立体駐車場のイメージを払拭しており、全体として意匠性の高い建築物である。
東西の妻面には左右に対になったブレース付きフレームの構造コアがあり、それらを4層ごとに1層分のフィーレンディール梁で一体化して、より剛性の高い構造体となっている。また、屋上の緊急離着陸用ヘリポートを重りとして、「振り子型転がり支承」を直行させ2段に重ねることであらゆる方向の揺れに対して制震効果を発揮されるようになっており、優れた構造技術が駆使されている。(宮田賢二)