金井淵市営住宅は1964(昭和39)年から1969(昭和44)年にかけて建設された簡易耐火平屋建て30 棟・2 階建て10 棟(計194 戸)の住宅団地が老朽化したため、1998(平成10)年から2000(平成12)年に建て替えられた共同住宅である。木造3 階建て11 棟(142 住戸)の住宅団地で、設計は㈱市浦都市開発建築コンサルタンツと群馬県建築設計金井淵市営住宅(建替)実施設計特定共同企業体が担当し、施工は棟別に地元の12 の建設会社が請け負った。
団地は高崎市の中心部より北西へ約6 ㎞、JR 信越線「群馬八幡駅」より北へ1.3km の郊外に位置する。
建て替え前の住棟は東西を軸にほぼ平行に配置されていたが、以前から中央に位置する既存の中央公園を中心として、廊下型住棟(6 棟)と階段室型住棟(5 棟)を配置し、向きを少しずつずらして変化のある景観をつくっている。この公園は地域住民の生活動線となっていて、風がとおるシンボルといえる空間である。
各住棟外観として、屋根はガルバリウム鋼板葺き切妻屋根で、各戸にバルコニーや専用庭があり、外壁は杉板張りである。建物内部にも一部杉板張りを採用し、バリアフリー対応として安全性の確保、使いやすさに配慮がなされている。柱間グリッドは3.70mで、続き間としての利用、仕切って2つの個室としての利用など居室の使い方の選択の幅を広げられる四つ間形式の間取りとなっていて、住戸タイプは2DK、3DK である。木材を採用することにより、木の持つ素材のあたたかさや優しさが団地の大きな特徴である。
廊下型住棟からなる中央ゾーンは、3 階建て12 戸(4 戸/階)住棟の北側片廊下をデッキでつないだ3 棟が連続し、公園を取り囲むように南側と北側に配置されている接続デッキ部分にはエレベーターが設置され、高齢者のアクセス対応を図っている。
廊下型住棟の北側及び南側の外周道路沿いの住棟(北ゾーン、南ゾーン)は、周囲の戸建住宅との景観のなじみを考慮し、外階段の両側に住戸を設けるプランの階段室型住棟となる。北側に3 階建て18 戸(6 戸/階)住棟が1 棟、3 階建て12 戸(4 戸/階)住棟が1 棟配置されている。また、南側には3 階建て18 戸住棟が1 棟、3 階建て12 戸住棟が2 棟配置されている。
構造には木材を原材料に2 次加工した木質材料を使用した木質ラーメン構造(RH構法)を採用するなど、最新の技術を採用しており、技術性を追求した建築と評価できる。このRH構法(Reinforced Heavy-Timber Structure System;鉄筋拘束接合による木質ラーメン構造)は、柱・梁部材にLVL(構造用単板積層材)を使用し、柱・梁の接合部に穿孔して異形鉄筋を挿入したうえで接着剤(エポキシ樹脂)を孔の空隙に充填、硬化させることによって接合部を剛接合する木質ラーメン構造である。ラーメン構造の派生形なのでプランに自由度があり、構造計算が容易にできるため耐震性能を明確にすることができ、また床にコンクリートスラブを用いることで上下階の遮音性能を確保できるといった特色がある。
当団地は、1992(平成4)年の建築基準法改正により可能となった木造3 階建てを共同住宅(木三共)に採用した例であり、その後一般化する木材の積極的の採用の先駆け的な例であり、時代の特性を示しているといえる。設計を担当した㈱市浦都市開発建築コンサルタンツは、木質ラーメン構造(RH構法)を積極的に木造3 階建ての共同住宅(木三共)に採用しており、神戸市営押部谷住宅、鹿児島県営江口住宅、秋田県営手形山第一住宅などが類似の例である。
木質外壁で計画された木造3 階建ての住棟はスモールスケールで、周辺環境と調和が図られている。また当団地はシルバーハウジング・プロジェクトのモデル住宅に指定されていて、高齢者の心身特性や生活スタイルに配慮した計画となっており、3階建てであるがエレベーターを設置することにより、1階と3 階にシルバー住戸(30 戸)が配置されている。さらに高齢者生活相談所が設けられている。
その後、金井淵市営住宅の幹線道路を挟んだ東側に位置する金井淵県営住宅が建物の老朽化のため同じ構法により建て替えられた。両団地はこの郊外の戸建て住宅が建ち並んだ自然あふれる地域に調和した景観を形成している。
(野口忠男)