群馬県030

群馬県立館林美術館

  • 2000年竣工
  • 設計/建築:第一工房(高橋靗一)、構造:川口衞構造設計事務所、設備:環境エンジニアリング、ランドスケープ:第一工房 オンサイト計画設計事務所、サイン;矢萩喜従郎
  • 施工/建築:大林組・河本組・りんかい建設共同事業体、空調:天笠工業、衛生:神寛、電気:イズミ・横山共同事業体
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄骨造 地上2階 アスファルト防水外断熱防水の上砂利敷き化粧目地、アルミパネル厚3 
  • 用途/文化施設
  • 所在地/群馬県館林市日向町

群馬県立館林美術館は、1999(平成11)年起工、2000(平成12)年竣工の鉄筋コンクリート造(一部鉄骨造及鉄骨鉄筋コンクリート造)2階建、延床面積6,856.47㎡の「自然と人間の関わり」を活動のテーマとした2館目の県立美術館である。第一工房(高橋靗一)の設計で、施工は大林組・河本組・りんかい建設共同事業体が担当した。設計者は特命で依頼され、敷地選定の段階から計画にかかわり、多々良沼周辺の自然豊かなこの土地がテーマにふさわしい立地として選ばれた。
敷地は、館林市多々良沼公園内に位置し、周囲を北に多々良川、南方に湿地、西方に水田、遠くに山々が望める平坦地。7.5ヘクタールの敷地全体をランドスケープデザインし、修景池と盛土による造形により、「水面に浮かび上がる島」となり、アプローチは「そこへ渡る橋」となる。
建物へのアプローチは駐車場から始まり、敷地の南東の修景池畔にいたる。池越しに緩勾配の芝生広場が大きく広がる。広場の先には手前に赤い土の塊のような展示室1が、その奥に、東西にのびやかに配置されたアルミパネル張りの本館が、空色に溶け込むかのように見える。池の橋を渡ると右手にカスケードがあらわれる。左手の緩やかな傾斜の芝山と、右手の緩やかなカーブを描くカスケードに沿って進むと建物中ほどの入口にたどり着く。建物内は、奥に収蔵庫・事務所等を、手前にエントランス・中庭・3つの展示室を置き、それらに沿って緩やかな弧を描く、前庭を包み込む全面ガラスのギャラリー(回廊)が約200mの長さで設けられ、レストラン、ミュージアムショップ、エントランス/展示室1前、展示室(2・3・4)前、別館出入口へと続く。展示室(2・3・4)前から別館出入口までは、ギャラリー幅が少しずつ狭まり、経路の終点であることを体感的に知らせている。「ギャラリーは各室を結ぶ動線であると同時に多々良沼公園の動線として機能させることにより、外部空間と視覚的、動線的に連続されている。」
「この美術館を特徴づける展示室1と別館は建物本体から離しそれぞれ芝生広場と森の中に置き、渡り廊下でつないだ。」展示室1は、大きなガラス面の開口を持ち、自然の景観を取り込んで、コレクションのフランスの動物彫刻家、フランソワ・ポンポン(1855-1933)など、彫刻を中心に展示するスペースとしている。別館は、フランソワ・ポンポンの資料を展示する「彫刻家のアトリエ」と、造形活動を行う「ワークショップ室」のための建物で、ポンポンにちなんで、生まれ故郷のブルゴーニュ地方の農家をイメージした意匠とし、ヨーロッパの屋根瓦と石灰岩の乱積みの外観をそなえている。
「美術館の空間は、石、アルミ、ガラス、水など素材のスケール、テクスチャーを意識しながら、ディテールをできるだけ単純化し、空間に表出する線を限定した」という設計は、空間に身を置き、たどりながら、「程よい緊張」のなかに「心地よさ」とともに体感できる。敷地の微妙な起伏とアプローチの絡め方、水を含めた処理、視界の変化、建物に近づく感覚、展示室に入っていく感覚を大事にし、緩やかなカーブのギャラリーを軽やかに作ることで、建物の長さや、敷地の広さが感じられ、全体の構成が分かり、どこにいるかが想像できるような設計としたという。<意匠性>
わかりやすい美術館の構成と多々良沼公園管理地と、美術館管理の部分との一体化した公園回遊の動線により、自然や庭、そしてアートに気持ちを向かわせ、気軽に美術に触れられる機会が得られている。(荻野 浩)