沖縄県010

3番目の自宅(光と影の住宅)

  • 1972年竣工
  • 設計/金城信吉
  • 構造形式/木造、鉄筋コンクリート造 地上2階 鉄筋コンクリートスラブ
  • 用途/住居建築 陶芸工房
  • 所在地/沖縄県南風原町

■概要
南風原町津嘉山の旧集落地区に位置する建築家金城信吉(1934年~1984年)の自邸。金城は、現代建築設計事務所等を経て1973年に門設計研究所を設立し、那覇市民会館や那覇タワー、沖縄国際海洋博覧会記念沖縄館など戦後沖縄の代表的建築を数多く設計した。生涯3件の自邸を設計し、当建物が3番目の自邸である。1971年に設計されたこの自邸は、沖縄の原空間を問い続けた建築家の建築に対する想いやスタンスが色濃く反映された作品である。その遺志を受け継ぎ建築家になった3人の息子達の育った家でもある。

■建物の特徴
当建物は、南北に道路が接する敷地の西側に配置され、東側に庭がある。二層分の高さのRC構造の打放しボックスに、古民家の意匠を取り入れた木造空間を組み込む。当初は吹き抜けだったRCボックスに、子供たちの個室が増築されている。南面する建物正面の玄関を入ると、琉球石灰岩による石積みのヒンプンが緩やかに空間を区切り、土間のリビング・ダイニングの吹抜け空間につながる。リビング・ダイニング奥の西側には台所、洗面室、洗濯室、台所など水回り、東側には仏間、囲炉裏の間などの板の間が配置される。板の間は、南北の敷地の高低差により土間から60センチほど高くなっている。吹抜け空間にトップライトを設けた囲炉裏の間の奥は寝室となっている。囲炉裏の間から階段を上ると、吹抜けを挟んで寝室が配置されている。建物東側の屋上から2階部分を覆い、下階で雨端空間を形成する軒スラブが、快適な中間領域(半屋外空間)をつくっている。

■評価
金城信吉は、那覇タワーや奥武山ドライブインなど近代的デザインの設計もする一方で、沖縄建築とは何かを問い続けたことで知られる。沖縄の島々をめぐり、与那国島で出会った涼風の抜けるガジュマルの木陰空間に地域固有の原空間を見出して導き出した答えの一つが、当建物のテーマである「光と影の建築」である。それは、島めぐりに同行した親泊元高(沖縄工業高校)がその著書の中で提唱する「ガジュマル建築論」の具体化といえる。沖縄を意識しながら郷土色に溺れず、逆梁工法やRCと木のハイブリッド構造など新たな構造的取組みにより、流動する空間を実現した。アマハジ空間を現代建築に再考し、沖縄建築に大きな影響を与えた那覇市民会館(1970年竣工、2025年解体)の設計思想の流れをくむ建築といえる。日本建築士会連合会第1回作品展において優秀賞を受賞している。

■現状
金城信吉没後は、郷土民話研究家の金城信吉夫人が営む郷土料理店として地域の人々の憩いの場となっていた。現在は息女の陶芸工房兼住宅となっている。天井などの一部でコンクリートの爆裂や亀裂が発生している。近年防水、外装の修繕工事がされているため、現状ではコンクリート構造部の劣化の進行はある程度抑えられている。しかし、外部の木造部分のシロアリによる腐食の被害が大きいため、今後補修が必要と思われる。